ノイズ対策ガイド

ノイズ対策の基礎【第12回】LC複合タイプEMIフィルタの使い方

今回はLC複合タイプのEMIフィルタを効果的に使用するための知識を紹介します。

LC複合タイプEMIフィルタは以前はアナログ映像ラインのノイズ対策に使われることが多かったのですが、最近は携帯電話のメイン基板からLCDパネルに接続するフラットケーブルなど、シングルエンドのデジタルバスラインに使われることが多くなっています。このため、LC複合タイプEMIフィルタの多くは4回路が1チップに収められたアレイタイプとなっていることが多いです。

 
図1 4素子アレイタイプLC複合フィルタの例:NFA18SLシリーズ

1.π型かT型か

LC複合タイプのフィルタには、C-L-C構成のπ型やL-C-L構成のT型、C-LやL-C構成のL型など、いろんな構成があります。このうちのどれを選ぶかですが、フィルタを接続する前後の回路のインピーダンスがヒントになります。LCフィルタの中のコンデンサは(例外はありますが)高周波を低インピーダンスのコンデンサでバイパスしてグランドに落としてノイズ除去をする働きがありますので、このコンデンサと隣り合った部分のインピーダンスが高いほうが効果が高くなります。

一方、インダクタは高周波を高インピーダンスでいわば跳ね返すような働きをしますので、高インピーダンスのところと隣り合って接続されてもその効果は低く、逆に低インピーダンスの回路と隣り合うと効果が高くなります。これをまとめたのが図2です。入力側のインピーダンスと出力側のインピーダンスの高低と、その条件でノイズ除去効果が高くなるフィルタ構成を示しています。この表を見ればわかるように、L型フィルタのような非対称の構成となっているフィルタは入出力が逆転すると効果が変わってきます。使用する際は注意してください。

 
図2 入出力インピーダンスと効果の高いフィルタ構成の組み合わせ ※図2は公開後、12月19日に修正されました。

2.複数の共振周波数を持つフィルタ

冒頭で、最近は携帯電話のノイズ対策にLC複合型のフィルタが使われることが多いと述べましたが、携帯電話のノイズ対策で特徴的なのは、単にセットの外に漏れるノイズを除去するだけでなく、セット内でのノイズ干渉対策が必要だということです。携帯電話は多くのデジタル処理を行っていますが、ここで発生したノイズが携帯電話の受信電波に干渉すると、受信感度が落ちたりして問題になります。外部に漏れるノイズの対策ではノイズの影響を受ける機器が比較的離れていますが、携帯電話内でのノイズ干渉の場合はお互いの距離が近いためよりしっかりしたノイズ対策が必要になります。

通常、このノイズ干渉で対策をする必要がある周波数は携帯電話のキャリア周波数である700MHz-2GHz周辺ですが、TVチューナーを搭載していたりすると、500MHzくらいの周波数も対策する必要があります。通常のLC型フィルタは明確に現れる自己共振周波数は1つですが、こういうタイプのフィルタでは、ノイズを減衰させる帯域が狭くなって、上記のように広い範囲に対応する必要がある場合には性能が不十分となります。

このため、複数の共振周波数を持つLC複合型フィルタも用意されています。図3の例では、2GHz付近に加えて500MHz付近にも自己共振周波数を持つように設計されており、TVの周波数帯と携帯電話キャリアの周波数の両方に効果があります。このように、ノイズ対策に必要な周波数帯を考慮して、挿入損失特性データを見ながらフィルタを選択すると、効率的にノイズを落とせる場合がありますのでお試しください。

図3 自己共振周波数が2種類あるLC複合型フィルタの例

担当:村田製作所 コンポーネント事業本部 販売推進部 三屋 康宏

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