コンデンサガイド

テクニカルレポート_技術編(全2回-1)

進化するコンデンサ~積層セラミックコンデンサ~ Part2 技術編 ~前編~

積層セラミックコンデンサを用いた回路設計 勘所を踏まえて適用範囲を拡大

積層セラミックコンデンサの普及の歴史を語る上で重要なキーワードは「小型化」と「大容量化」の二つです。小型化と大容量化を推し進めることで、新しい市場を切り開いてきました。しかし、電子機器設計者にとって重要な仕様はこの二つだけではありません。
積層セラミックコンデンサには長所がある一方で、短所もあるからです。短所となる仕様を十分に把握し、実際の電子回路設計に生かします。こうした取り組みが、電子機器設計のコスト低減や、開発期間短縮につながります。

積層セラミックコンデンサが誕生してから50年弱。
この間、積層セラミックコンデンサは、誘電体層の薄型化と新しい誘電体材料の開発を進めることで、小型化と大容量化を着実に達成してきました。
この結果、先行して普及していたアルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサ、フィルムコンデンサなどから徐々に市場を奪いながら勢力範囲を広げていきました(図1)

図1 適用範囲を広げる積層セラミックコンデンサ

縦軸に定格電圧、横軸に静電容量をとり、各コンデンサが製品化されている範囲を示した。積層セラミックコンデンサは大容量化が急ピッチに進んでおり、その範囲を徐々に広げている。一方、アルミ電解コンデンサとタルタル電解コンデンサも、高耐圧化と大容量化を図ることで、積層セラミックコンデンサの追い上げをかわしている。

例えば、10μ~100μFの静電容量範囲の品種については、2002年の積層セラミックコンデンサの構成比はほぼゼロでしたが、小型化と大容量化の進展によって製品投入が可能になった2005年には構成比を約1/3に、2007年には約2/3にまで高めています(図2)。

図2 大容量品の構成比

コンデンサの総需要を静電容量別に集計し、積層セラミックコンデンサとアルミ電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサの構成比を示したグラフである。積層セラミックコンデンサの大容量品における構成比が年々高まっている様子がわかる。

現在、積層セラミックコンデンサと、アルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサとの市場における境目は、定格電圧が10V程度の品種では100μF、数十Vの品種で数十μFとなっています。
今後、この境目はさらに大きな静電容量側へと移動していくことは間違いありません。

ESRが低く、異常電圧に強い

積層セラミックコンデンサが勢力範囲を広げる推進役となったのは小型化と大容量化です。

しかし、電子機器に搭載するコンデンサを選択する際に考慮すべき特性は、外形寸法や静電容量だけではありません。積層セラミックコンデンサは決して万能ではありません。長所(メリット)がある一方で、短所(デメリット)も存在するため、さまざまな特性に注意を払う必要があります。

積層セラミックコンデンサとアルミ電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサを比較した結果を表1に示します。
積層セラミックコンデンサのメリットは二つあります。

表1 各コンデンサの特性比較

一つは、等価直列抵抗(ESR:equivalent series resistance)が小さいため周波数特性に優れていることです。

ESRとは、コンデンサの内部電極などの抵抗成分のことです。これが大きいと、ノイズ吸収特性の善し悪しを判断する材料となるインピーダンスの周波数特性が悪化するだけでなく、抵抗成分による発熱が無視できなくなります。従って、マイクロプロセッサやDSP、マイコンなどの半導体チップの周囲に実装し、ノイズを吸収するデカップリング用途で使う場合は、ESRが低いことが不可欠になります。

もう一つは異常電圧に対して強いことです。
例えば、定格電圧が16Vで静電容量が10μFの品種で比較した場合、アルミ電解コンデンサの直流破壊電圧は30V、タンタル電解コンデンサは30~60Vしかありません。しかし、積層セラミックコンデンサは約200Vと極めて高く、搭載した電子機器において何らかの理由でサージ電圧やパルス電圧が発生しても、積層セラミックコンデンサであれば絶縁破壊による故障の可能性を低く抑えられます。

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後編では、温度特性と直流電圧特性の注意点についてお届けします。お楽しみに。

※会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
※当記事は日経BP社ウェブサイト「Tech On! 」2010年2月~3月に掲載された内容を再構成したものです。
※当社積層セラミックコンデンサについて詳しくは以下をご覧ください。
コンデンサWEBサイト

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