ノイズ対策ガイド

ノイズ対策の基礎 【第7回】 LC複合タイプEMIフィルタ

商品PickUpが間に入ったため、この連載はしばらくお休みしていましたが、今回のLC複合タイプEMIフィルタから再開します。

<CとLを組み合わせると、急峻な挿入損失カーブになる>

以前、コンデンサやインダクタの単体よりも組み合わせた方が挿入損失が急峻になるということをご紹介しました。図1はそのおさらいです。

図1 フィルタの素子数と周波数特性

このように、フィルタの素子数が多くなるほどフィルタの挿入損失特性の傾きが急峻になります。

<フィルタの挿入損失特性の傾きが急峻になると、信号とノイズの選択性が向上する>

フィルタの挿入損失特性の傾きが急峻になると、信号とノイズの周波数が接近しているときに信号に悪影響を与えにくくなります。図2は信号周波数が比較的高く、ノイズ周波数に接近しているときの例です。両者の周波数が接近している場合、挿入損失の緩やかなフィルタを使用すると、ノイズが十分に落ちるような定数を選択すると、周波数の近い信号の高調波成分も減衰させてしまいます。その結果、図3のように、信号波形がなまってしまうことになります。信号周波数に影響がないような定数を選択すると、今度はノイズを十分に落すことができなくなります。
一方、挿入損失特性が急峻なフィルタを使用すると、信号とノイズを選択的に分離することができるため、信号への影響をおさえることができます。このため、LC複合フィルタは、高速な信号が流れるラインで信号波形への影響をできる限り抑えてノイズ対策を行いたいときに使用されます。

図2 フィルタの特性による、信号への影響の違い
図3 波形なまりの例

<フィルタの回路タイプの選び方>

コンデンサとインダクタを組み合わせたLC複合フィルタには、その組み合わせ方によっていろいろなものがあります。これまで紹介したように、フィルタの素子数が多いほうが信号とノイズとを分離する効果が高いのですが、同じ素子数でも、T型やπ型などの違った組み合わせが考えられます。

これらの使い分けですが、フィルタを挿入する回路の入出力インピーダンスがポイントとなります。LC複合フィルタを構成する素子のうち、コンデンサはグランドとの間のインピーダンスを低くすることによってノイズをグランド側に逃がす働きを持ちますので、インピーダンスの高い部分と隣り合う方が効果が高くなります。

逆に、インダクタはインピーダンスを高くすることによってノイズが通過するのを阻止するので、インピーダンスの低い部分と隣り合う方が効果が高くなります。以上のように、LC複合フィルタを選択する際は、フィルタ前後のインピーダンスが高いか低いかがポイントになります。これをまとめたのが図4です。

図4 LC複合フィルタの回路タイプの選び方

<LC複合フィルタの製品例>

LC複合フィルタは前記のように挿入損失特性を急峻にできるのが特徴なので、信号周波数が比較的高くてノイズ周波数に接近している場合に使われることが多くなります。

以前はコンピュータのアナログRGBインターフェイスなどに使われることが多かったですが、最近では、携帯電話の内部の液晶モジュールやカメラモジュールのインターフェイスラインにおいて、携帯電話キャリア電波やTV放送波帯のノイズを除去するのに使われるケースが増えています。携帯電話では小型化が非常に重要になってくるため、ここで使われるLC複合フィルタは多層技術を用いたものになっています。また、この部分は多数の信号線が並行しているため、4回路を一つのパッケージに納めたアレイタイプが多く使われます。

図5 多層型LC複合フィルタの構造例

また、携帯電話で使用される場合は、800MHz帯や2GHz帯といった複数の周波数帯域に重点を置いてノイズ対策ができるように、複数の自己共振周波数をもったフィルタなども用意されています。

図6 複数の自己共振周波数を持つ特性例

担当:村田製作所 コンポーネント事業本部 販売推進企画部 三屋 康宏

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