コンデンサガイド

テクニカルレポート_トレンド編(全2回-2)

進化するコンデンサ~積層セラミックコンデンサ~ Part1 トレンド編 ~後編~

当コラムは"進化するコンデンサ~積層セラミックコンデンサ~Part1 トレンド編 ~前編~の続編です。
まずは前編をお読みください。

-デカップリング用途が市場の7割を占める

積層セラミックコンデンサは前述の通り、マイクロプロセッサやDSP、マイコン、FPGAなどの半導体デバイスの周囲に配置し、その半導体デバイスが正常に動作するようにサポートする用途に使われています。搭載されている個数(員数)は非常に大きいです。2010年の調査では、例えば、ノートパソコンでは約730個、携帯電話機では230個、デジタルテレビやカーナビゲーション装置ではいずれも約1000個も使われています(表1)。

表1 電子機器に搭載されている積層セラミックコンデンサの個数

電子機器 積層セラミックコンデンサの搭載数
ノートパソコン 730
携帯電話機 230
デジタルビデオ・カメラ 400
デジタルテレビ 1000
カーナビゲーション装置 1000

 

こうした積層セラミックコンデンサの役割は大きく分けて二つあります。一つは、半導体デバイスへの電力供給のサポートです。一般に半導体デバイスは動作状況によって、必要とする電流が大きく変動します。多くの電力を急に必要とする場合もあります。こうした負荷急変時に、比較的遠く離れた場所に実装してある電源回路(DC-DCコンバータなど)ではすぐに対応できません。そこで、半導体デバイスの周囲に実装したコンデンサに電力を蓄えておき、そこから電力を供給するのです(図2)。

図2 半導体デバイスの動作をサポートするデカップリング・コンデンサ

半導体デバイスの周囲には、数多くのデカップリング・コンデンサが実装されている。役割は二つある。一つは、半導体デバイスに電力を供給する役割。もう一つは、ノイズ成分を電源/グラウンド層に迂回させる役割である。なお、デカップリング・コンデンサには大きくわけると三種類のコンデンサが使われている。タンタル電解コンデンサと、大容量の積層セラミックコンデンサ、ESL(等価直列インダクタンス)が特に低い積層セラミックコンデンサである。

もう一つの役割は、EMI(electro-magnetic interference)の原因となるノイズ成分を除去することです。いわゆるフィルタの役割です。コンデンサの高周波インピーダンスが低いことを利用して、周波数の高いノイズ成分だけを電源/グラウンド層に迂回させます。

一般に、前者の役割をデカップリング・コンデンサ、後者の役割をバイパス・コンデンサと呼びます。大容量の積層セラミックコンデンサが登場したことで、両方の役割を担うことが可能になりました。

デカップリングやバイパスの次に多い用途は、DC-DCコンバータの出力部に置く平滑フィルタです。従来、この用途にはアルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサが使われていました。しかし、電子機器の小型化/薄型化を目的に、1990年代後半から積層セラミックコンデンサが使われ始めています。

この用途で積層セラミックコンデンサが使えるようになったのは、電源用半導体メーカーの努力によるところが大きいです。平滑フィルタのコンデンサは、DC-DCコンバータのフィードバック制御ループの一部を構成しています。このため、ESRが小さすぎると制御ループの位相余裕が小さくなり、DC-DCコンバータが安定して動作しなくなる(最悪の場合発振する)という問題が発生してしまいます。

しかし一方で、DC-DCコンバータを小型/薄型化したいという電子機器メーカーの要望は強いです。そこで電源用半導体メーカーがDC-DCコンバータICの制御回路に工夫を施すことで、積層セラミックコンデンサの使用を可能にしました。2000年ころから電源用半導体メーカーは、積層セラミックコンデンサが使えることをセールス・トークとして、そのDC-DCコンバータICを電子機器メーカーに売り込んでいました。

現在、デカップリングと平滑フィルタの用途だけで、積層セラミックコンデンサ市場の約7割を占めています。このほかに使用される数量が多い用途としては、高周波フィルタ用やインピーダンス整合用、温度補償用などが挙げられます。

当社でも電解コンデンサを積層セラミックコンデンサに置換えるための手法を問題解決事例として取り上げており、デモやセミナー形式で分かり易く解説しています。
さらに、積層セラミックコンデンサを平滑用途として使用する場合に、DC-DCコンバータを安定動作させるための設計サポートも行っておりますので、お気軽に当社営業までお声をおかけください。

詳しくは以下をご覧ください。
コンデンサWEBサイト>問題解決事例

※会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
※当記事は日経BP社ウェブサイト「Tech On! 」2010年2月~3月に掲載された内容を再構成したものです。
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