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人材育成×muRata

成長を支え合う組織風土を根づかせるために

ムラタが実施した新たな人材育成プログラム「Make2030―革新の担い手となれ―」は、有識者の助言をいただきながらプロジェクトを推進しました。今回は、プログラムの骨子の作成をはじめ、対談やワークショップなどの企画・ファシリテーションの支援を行った株式会社アルファドライブ/株式会社NewsPicks for Business執行役員の鳥海裕乃氏に、プログラムの振り返りと共に、人材育成や組織風土のポイントについてお伺いしました。

1. 社員一人ひとりの可能性を引き出し、自律的に挑戦する機会を生み出す

これまでに数々の企業の組織改革を支援してきた鳥海裕乃氏は、「組織改革や人材開発に対する考え方は、近年、大きく変化している」と言います。

鳥海氏「多くの企業が変化対応型の経営に転換していく中で、組織改革・人材開発のメガトレンドとして、自律性や創造性、個別性などが重視されるようになりました。ただし、従来の組織のありようと相反する要素を多く含むため、変革は一朝一夕では成し遂げられません。いかにして組織全体および事業の意義・ビジョン・戦略を最適化し、人材・組織のあり方を再構築するか、人・風土を起点として変革を生み出すかが大きな課題となっています」

長期構想である「Vision2030」の実現を目指すムラタもまた、組織改革や人材開発に積極的に取り組んでいます。その一環として、将来的に経営に関わることが期待される中堅層の育成を重視しています。そこで、次世代リーダーを育成するための研修として構想されたのが、人材育成プログラム「Make2030」です。

鳥海氏「2021年4月から南出取締役、早田人材開発部長(当時)、須知経営戦略部長(当時)および事務局の皆様と意見交換を始め、『Make2030』が目指す方向性、ありたい人材像、それを実現する施策についてディスカッションを重ねました。役員の皆様は次世代リーダー育成に対して強い想いをお持ちでしたので、『Make2030』の骨子を共に具体化し、対談やワークショップの企画・運営・動画制作などを支援させていただきました」

ディスカッションの中で生まれたプログラムの名称「Make2030―革新の担い手となれ―」には、こんな想いが込められていると言います。

鳥海氏「村田製作所の組織が拡大していく中で、社員一人ひとりの可能性を引き出し、視座を高め、自律的に挑戦する機会が生まれる場を作りたい。そうした皆様の熱い想いを受け止め、『イノベーションを生み出し、未来を創る=Makeする革新の担い手』というキーメッセージを策定しました」

2. 世代間のバトンをつないでいくという使命感

鳥海氏、早田、南出、須知の画像
左から鳥海氏、早田、南出、須知 人材開発センター(京都)にて撮影

2022年5月に「Make2030」がスタートした際、キックオフ動画として上映した南出、早田、須知のインタビューでは、鳥海氏がファシリテーターを担当。「お三方が村田製作所の未来に明確なビジョンを持ち、強い信念を持って『Vision2030』の実現に取り組んでいることがひしひしと伝わってくるセッションでした」と振り返ります。

鳥海氏「社会価値と経済価値の好循環という、難易度の高い課題と向き合うチャレンジスピリット、受講者と同じ目線に立って語りかける様子に、オープンでフラットな社風を感じました。お三方が話した『プログラムを通してそれぞれのやりたいことに挑み、楽しんでほしい』というメッセージも印象的で、社員一人ひとりの可能性を信じる姿勢、世代間のバトンをつないでいくという使命感が伝わってきました」

プログラムのSTEP1における経営変革セッションでの有識者と役員の講演、STEP3における受講者と役員の座談会でもファシリテーターを務めるなど、ムラタの役員と関わる機会が多かった鳥海氏。「役員の皆様が常に新しい可能性や村田製作所の未来を模索し、情報や思考をアップデートし続けていることが印象的だった」と言います。

鳥海氏「受講者との座談会では、役員の皆様がご自身の言葉とビジョンに基づいて返答され、それぞれの意見には豊かな個性や多様性がありながら、思考のベクトルは驚くほど一枚岩でした。ご自身の担当領域外のことを聞かれてもしっかりと返答し、組織としてまったくサイロ化(分断)に陥っていない。これは日常から役員間で対話・意思疎通していることの表れだと感じました」

3. 未来と真摯に向き合い、実直に思考するムラタらしさの深化

受講者についても、「皆さんが当事者意識を持って参加している印象を持った」と言います。

鳥海氏「講演内容を自分の言葉に落とし込んで理解を深め、『アクションを起こすためには何が必要か』を真剣に考えていました。村田製作所の未来と真摯に向き合い、実直に思考する姿勢は、ムラタらしさの1つではないでしょうか」

STEP3の役員との座談会では、受講者の変化を実感したと続けます。

鳥海氏「STEP1のときと比較して、受講者の皆さんの思考の幅が格段に広まり、村田製作所の未来を担う当事者としての視座・思考力・表現力が養われていることに驚きました。村田製作所の未来を創るために、何から取り組むべきかという観点に立ち、全社視点と未来妄想に基づいて“問いを立てる力”のレベルの高さには感銘を受けました」

プログラムにおいては、学びとつながりのプラットフォーム「NewsPicks Enterprise」を活用し、受講者が活発にコメントを書き込んでいたと言います。

鳥海氏「ニュースに関するコメントや返信で日常的なアウトプットを身につけることをはじめ、メンターや役員との対話後の振り返りコメントの共有、情報収集などに活用していただきました。物事に対して問いを立て続けることは、思考の筋トレにつながります。1年半という長期にわたる研修期間も、問いを立て続けることの習慣化に効果的だったと思います」

鳥海氏の画像1

4. 人の熱量は伝播し、行動する原動力になる

「Make2030」は、事業や機能の垣根を超えて活動する、組織横断型の研修であることが特徴の1つです。鳥海氏はその効果をこう分析します。

鳥海氏「中島社長は、組織のサイロ化を避け、横のつながりを通してイノベーションを生み出す重要性を意識されており、多様性を持って組織力を高めるという点でも組織横断型の研修は効果的です。また、イノベーションは人と人、情報とアイデアが新結合してこそ生まれるので、社員同士がバイネームでつながることは意義深いアプローチだと思います」

「Make2030」に参加した受講者が、自身が所属する部門の社員に与える影響もポイントだと続けます。

鳥海氏「人が人から受ける刺激は、想像以上に大きなものです。誰かが挑戦する姿を見て新たなことに興味を持ったり、誰かの賛同を得ることでアクションを起こしたり、人の熱量は伝播し、行動する原動力になります。『Make2030』の受講者が『Vision2030』のアンバサダーとなり、事業部における伝道師になることを期待しています」

5. 人材育成への強い想いがバトンリレーされ、組織風土が生まれる

さまざまなアプローチから人材育成に取り組むムラタには、“寄ってたかって人材を育てる”という考えがあります。こうした組織風土を「独自性があり、通常では成し得ないレベルの高さ」だと鳥海氏は評します。

鳥海氏「人材育成は時間も手間もかかり、労力を割いたとしても人は急には変われません。そうしたネガティブな要素がある一方で、村田製作所には人材育成に対してポジティブな組織風土が存在します。これは、『この人に成長してほしい』という強い想いがなければ成し得ないことです。そして、成長の機会を与えられた側は、その感謝の想いをほかの人にギブしていく。そうしたバトンリレーがあったからこそ、組織風土が生まれ、根づいているのだと思います」

ただし、「組織風土を醸成することは容易ではない」と鳥海氏は強調します。

鳥海氏「多くの企業が人・風土を起点として変革を生み出す必要性を感じている中で、人材育成のサービスやプラットフォームを導入するだけで完結している企業は少なくありません。けれど、村田製作所は風土醸成の重要性を認識したうえで、時間と手間、お金をかけて本気で取り組んでいます。その意志・覚悟こそが必要不可欠であり、組織風土というOSがあったからこそ、『Make2030』というアプリケーションが奏功したのだと思います」

最後に、鳥海氏は「Make2030」の受講者の未来にこんな期待を寄せます。

鳥海氏「受講者の皆さんがご自身の言葉で村田製作所の未来のありたい姿について語る姿は、まさに“変革の担い手”そのものだったと思います。私自身、1人のムラタファンとして、2030年の村田製作所が新たな価値創造ストーリーを紡いでいることを心から楽しみにしています。そして、その背景には、皆さん一人ひとりの存在があることを感じ続けていたいと思います」

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鳥海裕乃 氏
株式会社アルファドライブ執行役員 コーポレート・トランスフォーメーション事業担当
株式会社NewsPicks for Business執行役員 NewsPicks Enterprise担当

広告プランナーとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートメディアコミュニケーションズ、広告代理店・制作会社等にて、クライアント企業のインターナルブランディング支援、採用戦略立案、学校法人のブランディング支援や広報戦略立案に従事。2020年6月、株式会社アルファドライブに入社。インターナルブランディングの知見を生かし、企業文化・組織風土変革を支援している。

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