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人材育成×muRata

未来の経営リーダーをどのように育てるか?

ムラタが実施した新たな人材育成プログラム「Make2030―革新の担い手となれ―」は、有識者の目にはどのように映ったのでしょうか?今回は、外部メンターとして「Make2030」にご協力いただいた株式会社Maple and Partnersの松ヶ野裕司氏に、人材育成やリーダーシップの一般論を交えながら、受講者の印象やムラタの強みなどについてお伺いしました。

1. 自ら思考し、議論し、新しいことを創造する

経営コンサルタントとして数々の企業と接している松ヶ野氏は、「私の知る限りでは、近年、経営人財の育成に力を入れる企業が増えている」と言います。

松ヶ野氏「昨今は株主価値向上を重視した経営を行う必要性が増していることから、経営者は短期の業績の責任と同時に、長期的に企業を成長させる責任が重くなりました。これらを実現するためにはイノベーションや従業員の自発性が欠かせません。また、企業と従業員の関係にも変化が見られ、かつてのように、社員旅行や飲み会で一体感を形成しておけば仕事はある程度上手くいくといった時代は廃れました。昨今の強い企業や急成長している企業は、どの企業も個の力に秀でた社員が数多くいます。どれだけ良い人財を採用するかが経営課題となり、どうやって育てるかをさらに重要な経営課題として位置づけ、積極的に取り組んでいる企業が増えてきた印象があります」

多くの企業がさまざまな人材育成の研修やeラーニングを行う中で、従業員自らがプログラムを立案し、ワークショップやディスカッションの場を豊富に設けた「Make2030」を高く評価します。

松ヶ野氏「村田製作所は、グローバルでビジネスを展開し、またバリューチェーン全体で付加価値を創造することで模倣し難い競争力を持っている企業であるため、人材育成は自社のあるべき姿や戦略と適応した育成手法が必要になるはずです。知識を学ぶことに偏重した育成ではきっとこと足りず、不確かな未来を自ら思考し、議論し、新しいことを創造する行動を起こし、未知を切り開く自信を持つことを手助けできるような育成が必要だと思います。その意味で、『Make2030』は戦略的で理に適ったプログラムだと思います」

2. 多様なバックグラウンドを持った経営リーダー候補者を揃える

未来の経営リーダーを育成することを目的に、2022年5月から約130名の従業員を対象に実施した「Make2030」。松ヶ野氏は、「リーダーシップを発揮する人材をどれだけ増やせるかが、組織の成長の限界値を決めると言っても過言ではない」と言います。

松ヶ野氏「時代の流れ、会社が抱えている課題に応じて新しいリーダーが現れることは重要です。リーダーの流動性があることによって、従業員の主体性や参画意識を引き出すことにつながり、何かが変わるかもしれないという会社への希望を抱くことができます」

ただし、「ただ単にリーダーがころころ変われば良いというものではない」と強調します。

松ヶ野氏「新しいリーダーが古い価値観や因習を解体していく役割を担い、自社を時流に適合させられるかがポイントです。だからこそ、世代、国籍、性別、特性といった多様なバックグラウンドを意識し、過去と現在、未来を広い視野で見渡せる経営リーダー候補者を揃えておくことが重要になると考えています」

また、「Make2030」が30~40代の中堅層を対象とし、早期にムラタの将来像と向き合い、自分ごととして考える機会を設けたこともポイントだと続けます。

松ヶ野氏「村田製作所のようなグローバル企業においては、若いうちからトップマネジメントを見据えた経験を積むことは有効です。中堅層に経営意識を芽生えさせるという点で、『Make2030』は非常に効果的だと思います」

3. 妄想という仮説思考によって社会の変化に対応する

松ヶ野氏が直接的に関わったSTEP2の「チーム活動」は、27チームに分かれた受講者が、情報収集と議論を繰り返しながら未来妄想ストーリーを構築(言語化・可視化)するプログラムです。こうした未来を妄想する仮説思考も重要だと松ヶ野氏は言います。

松ヶ野氏「言うまでもなく、事業の新旧を問わず、あらゆる市場に企業間の競争が存在します。今日まで好調だった事業が、明日、不調に陥りかねない。そういったリスクに備えるためにも、常に一歩先を読み、未来を妄想し、新たな事業機会を掴み取る必要があります。妄想という仮説思考によって社会の変化に対応していくという考え方です。漠然とでも、自分たちの会社が『こんなふうになりたい』というイメージを持っておくことは重要だと思います」

受講者は未来妄想ストーリーを構築した後、ムラタの経営課題に即した未来へのアクションプランを考案し、経営陣への提案を行いました。

松ヶ野氏「受講者にとっては当事者意識を高め、経営課題への認識を深める場に、経営陣にとっては従業員にメッセージを伝えられる貴重な場になったと推察します。大企業の経営陣が、従業員の声に耳を傾ける機会はあまりないと思いますので、経営陣、従業員の双方にとって学びのある、非常に丁寧に作られたプログラムだと感じました」

松ヶ野氏の写真1

4. 議論を行ったり来たりすることが思考の訓練につながる

STEP2において、松ヶ野氏は外部メンターとして受講者のアクションプランにアドバイスをする役割を担いました。松ヶ野氏は「受講者の視座・視点を拡張するという役割に徹した」と振り返ります。

松ヶ野氏「助言をする際には、『皆さんの理想は何か?』『2030年にどういう会社になりたいか?』『どのような分野・テーマで、どのような手段で理想を手に入れるか?』『経営陣へ一番伝えたいことは何か?』といった点を意識しました。『Make2030』によってどのような気づきを得られるかという点に注力してご支援させていただいたので、壁打ちの時間で少しでも気づきがあったらうれしいですね」

壁打ちを重ねる中で、受講者のチームにはさまざまな変化が見られたと言います。

松ヶ野氏「時間の進行とともに自分たちの企画をブラッシュアップして、迫力が出てきたチームがある一方で、議論とリサーチを重ね、本質に近づいたがゆえに悩みが深まり、いい意味で思考が散らかったチームもありました。思考が散らかるという経験は非常に重要で、議論を行ったり来たりすることが思考の訓練につながります。いずれにしても、どのチームも試行錯誤の痕跡がはっきりと見えました」

5. 「Make2030」によって組織が多様化・活性化していく

約130名の受講者と向き合い、アドバイスをする中で、松ヶ野氏は受講者の印象をこう語ります。

松ヶ野氏「主体性と活力があり、人間味にもあふれている方がこんなにもたくさんいるのかと驚かされました。着眼点も鋭く、チームワークも非常に良い。これだけ優秀な人材が結集していることは、個としても、集団としても非常に有利だと思います。村田製作所でどんなことを実現できるか、どんな存在になりたいかを、こんなにも楽しそうに考えている姿が強く印象に残りました」

経営の実務家という立場から、村田製作所の企業としてのポテンシャルにも松ヶ野氏は期待を寄せます。

松ヶ野氏「村田製作所は世界的に有名な企業です。高い技術力を保持し、長期的な成長を持続させることはなかなか成し遂げられることではありません。時代の変化に対応するけれど安易に流行に左右されず、揺るがないアイデンティティを大事にしている。確固たる企業文化が根づいているという印象を抱きました」

そして、「『Make2030』も新たな企業文化として定着させてほしい」と締めくくります。

松ヶ野氏「こうした人材育成プログラムを継続していくことで、いつしか企業文化として定着する未来が予測できます。同期入社や組織といったコミュニティとは別に、『Make2030』の何期生という新たな軸が生まれ、組織が多様化・活性化していく。『Make2030』の受講者の中から新たなリーダーが現れ、革新の担い手となることを期待しています」

松ヶ野氏の写真2

松ヶ野裕司 氏
株式会社Maple and Partners 代表取締役

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