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“○○テック”の進化を支える電子技術

テクノロジーで新しい製品付加価値や顧客体験を与える、ファッションテックとは

ファッションテックとは ―業界を進化させる多様な技術・手法―

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テクノロジーで新しい商品付加価値や顧客体験を提供

ファッションテックとは、ファッションとテクノロジーを掛け合わせた言葉で、たとえばビッグデータやAI(人工知能)、AR/VR(拡張現実/仮想現実)、ITを活用した顧客サービス、機能性素材やウェアラブルデバイスを採り入れた製品の開発、製造・加工・流通工程におけるエレクトロニクス技術やデジタル技術の活用を指します。

ファッションテックは、技術の発展と新しい製品やサービスの提供により、今後の消費活動や製品そして業界と市場を活性化する手段としてさらに注目度を高めていくことでしょう。冒頭で述べたようにファッションテックは広義ですが、性質により2つに分類することができます。ひとつはサービスや顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)の進化、もうひとつは製品自体が持つ機能や製造工程などにおける進化です。以下では、これら2つの側面からファッションテックについて解説します。

顧客体験(CX)を進化させるファッションテック

ARを活用したバーチャルフィッティングのイメージ
ARを活用したバーチャルフィッティングのイメージ

現在、ファッションテックにおいて活性化している分野が、ITやDX(デジタル・トランスフォーメーション)の活用です。店舗やECサイトでの販売においてCX向上を実現するための課題が多くありましたが、それらをITやDXを起点に解決する事例が多くみられるようになりました。

たとえば、ECサイトでの衣料や靴、ジュエリー、時計、眼鏡、バッグなどの販売において、個々の消費者が実物を身に着けたときのイメージが湧きにくく、購入意思決定のハードルが高いことが長年の課題でした。しかし、近年ではスマートフォンやタブレット端末などのカメラで気軽に利用できる、AR(拡張現実)を用いた商品のバーチャルフィッティングが広く採り入れられるようになりました。商品の3Dデータがなくとも、商品画像の2D画像を複数用意すればAI(人工知能)を用いARで立体的な表現を可能とする技術などがサービス導入の敷居を下げているといえます。
また、バーチャルフィッティングと並行して、AIが個々の消費者の顔の特徴と眼鏡やアクセサリーなどのアイテムの形状やサイズから、似合い度を判定するサービスなども展開されています。こうした技術の進歩が、ファッションテック導入によるCX向上を後押ししています。

RFIDやAIを活用してCX向上に繋げるのイメージ画像
RFIDやAIを活用してCX向上に繋げる

さらに、RFID(RFIDタグやRFIDリーダー)の普及も進んでおり、その活用法はいまや在庫管理の合理化だけに留まりません。RFIDはセルフレジの簡易化によるレジの行列と決済の手間の解消や、正規品の真贋証明に代表されるブランドプロテクションなどに利用されています。
またRFIDで収集したデータを活用し、リアル店舗とECサイトでの顧客動向や消費動向をAIが分析。適切な在庫調整により、顧客ニーズへの迅速な対応を実現するなど、さまざまな手法が用いられています。詳しくは下記の関連記事にて解説しています。

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テクノロジーで製品の付加価値や製造工程を進化させるファッションテック

先述したDX・CXを軸とするファッションテックはさらに発展していくと考えられます。それに加えて今後は素材、ウェアラブルデバイス、エンジニアリング、製造工程などの進歩により、素材や製品の新しい特性や機能で消費者に新しい付加価値を提供するファッションテックがより注目されていくことになるでしょう。
ここでは、今後のファッションテック発展の鍵となるといわれている、デジタルファブリケーションやスマートテキスタイル、スマートファブリック、ウェアラブルといった技術を紹介します。

デジタルファブリケーション

デジタルデータや3Dプリンターの活用イメージ
デジタルデータや3Dプリンターの活用イメージ

デジタルファブリケーションとは、デジタルデータをもとに製品を作ったり加工したりする技術の総称です。ファッション製品の製造においては、3Dスキャナや3D CADを用い、製品のアイデアやパターンをデジタルデータ化し、それを3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械で読み込んで造形または加工することを指します。

近年は、ニーズの多様化とデジタル技術の発展を背景に、デジタルファブリケーションが注目を集めるようになりました。デザインや製造の工程を効率化することにより、多品種少量生産やパーソナライズされた製品の製造にも対応できるようになりました。また、従来にはなかった構造や機能、特性を持つ素材の製造や加工など、製品に新たな付加価値を提供するための技術として注目が高まっています。

スマートファブリック(スマートテキスタイル)

素材自体に機能を付与して新しい付加価値を提供のイメージ画像
素材自体に機能を付与して新しい付加価値を提供

ファッション製品の素材自体に機能を持たせて新たな付加価値を生む、スマートファブリックまたはスマートテキスタイル(以下、スマートファブリック)と呼ばれる技術に期待が高まっています。先に述べたデジタルファブリケーションもこれらを実現する手段のひとつといえます。

スマートファブリックとは一般に、繊維にエレクトロニクス技術を融合させることによって機能を付与することを指します。その機能は多岐にわたり、たとえば、衣類そのものが着用者の健康状態をモニタリングするためのセンサの役割を担ったり、電気を使って除菌したり、温度を保ったりといった多様な機能とそれを実現するための研究開発や商品化も進んでいます。
現在その多くは健康・医療、スポーツ・フィットネス、安全性向上など幅広い目的で注目されている技術ですが、こうした技術が日常の衣類などに導入されることにより、高度な機能性を持ったファッション製品で新しい付加価値を提供することが画策されています。

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ウェアラブル/フレキシブルエレクトロニクス

衣類自体がウェアラブルデバイスとなるイメージ
衣類自体がウェアラブルデバイスとなるイメージ

スマートファブリックとも大きく関連する技術として、ファッションアイテムへのウェアラブルデバイスの実装や、ファッションアイテムそのもののIoT化も期待されています。たとえば、スマートファブリックでセンシングしたデータをもとにウェアラブルデバイスでデータ処理したり通信したり、ディスプレイ表示したり、操作・制御したりすることで、製品に多様な機能と性能を付与することができるでしょう。
スマートウォッチなど多くのウェアラブルデバイスは硬質な実装基板や筐体で構成されており、腕時計などであれば問題ありません。一方で、衣類など身にまとう物に実装すると身体の動きを妨げたり、デバイスが破損してしまったりといった課題があります。
その解決策のひとつとして期待される技術が、フレキシブルエレクトロニクスです。フレキシブルエレクトロニクスとは、曲げることができる柔軟性を持った電子回路や電子部品などの総称で、スマートファブリックやウェアラブル分野との親和性が高く、今後のファッションテックへの応用とそれによる機能の高度化に期待が高まります。

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ファッションの流行は、一定のサイクルでリバイバルを繰り返しています。突然SF映画に登場するような未来的なデザインが大多数の消費者に浸透することは想像できません。それは以前からあるデザインが、多くの人にとって合理的であり、感性にフィットするからであると考えられます。一方、アイテムの外見は従来の延長線上にあっても、その購入体験や製品の機能性、付加価値に関しては、ファッションテックによって発展し続けていくことでしょう。

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