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音響センサとの共創で予防医療に挑戦する

株式会社Xenoma(以降「Xenoma社」と表記)は、2023年度、ムラタのハードウェアを使用したアイデアを広く募集し、村田製作所(以降「ムラタ」と表記)と共にカタチにしていく共創プロジェクト“KUMIHIMO Tech Camp with Murata(以降「KUMIHIMO」と表記)”にて、最優秀賞に採択されました。
Xenoma社がエントリーしたテーマは「着衣型心音心電計」というスマートアパレル。その着想のきっかけやムラタとの出会い、そしてKUMIHIMOへの応募に至った経緯とムラタとの協業などについて、Xenoma社のCo-Founder & 代表取締役CEOである網盛氏にお伺いしました。

1. Xenoma社とは

――Xenoma社設立の経緯や社内の体制、これまでに開発・販売された製品についてお聞かせください。

設立の経緯と事業内容

2015年11月、東京大学・JST ERATO染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクトからのスピンオフとして設立しました。
同プロジェクトの伸縮性エレクトロニクス技術を基に、着心地が良く患者自身で着脱でき心電図の取得が可能なスマートアパレル「e-skin ECG」、高精度なモーションキャプチャを簡単に実現する「e-skin MEVA」、筋電気刺激でフィットネスを効率化するEMSトレーニングウェア「e-skin EMStyle」などを開発し商品化しています。このうちe-skin ECGは、Xenoma社から患者宅へ郵送し検査後にXenoma社へ返送することで、在宅での24時間による心電図検査を実現しています。

e-skin ECGのイメージ画像
e-skin ECG

Xenoma社の体制

従業員には、ハードウェアの電子回路エンジニア、スマートフォンアプリの作成やサーバを構築するソフトウェアエンジニア、筐体を作るプロダクトデザイナー、機構設計を担当するメカニカルデザイナーがいます。さらに臨床検査技師などメディカル分野の専門家がスタッフとして参加しています。

2. KUMIHIMO最優秀賞ご受賞の感想

――KUMIHIMO最優秀賞のご受賞、おめでとうございます。
KUMIHIMOへの応募の動機や最優秀賞に選ばれたご感想と理由について、Xenoma社としてのご意見をお聞かせください。

応募の動機と受賞の感想

着衣型心音心電計はKUMIHIMOのために企画したのではなく、元々自分たちの中にあった企画でした。KUMIHIMOで提示されていたセンサが我々の企画に欠かせないと感じ、応募させていただきました。
そのような経緯であるにもかかわらず、最優秀賞をいただくことができ大変光栄です。受賞賞金は、着衣型心音心電計の開発を進めるための機材購入に充てる予定です。またこれを機に、さらにいろいろご縁も広がる兆しを感じます。

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受賞理由について

かねてより思い描いていた企画だったので、開発する商品の仕様や商品化するプロセスのイメージは完成していました。つまり応募のための企画ではなく、自らが開発し商品化することについて十分に検討を積み重ねていた企画であったこと。それが受賞できた理由かと思っております。

3. 着衣型心音心電計の開発

――着衣型心音心電計の開発に取り組んだきっかけやムラタの音響センサを選んだ経緯と理由、さらにムラタとの協業の現状についてお聞かせください。

着衣型心音心電計とは

着衣型心音心電計は、心電計と心音計を組み込んだ衣服です。着るだけで心電と心音の両方のデータを取ることができ、受診後は自宅で心電図と心音図を検査することができます。在宅で検査ができるため検査頻度を高めることが可能で、循環器疾患の予防には最適な検査ツールであると考えています。

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着衣型心音心電計に取り組んだきっかけ

循環器疾患には「不整脈」と「虚血」の二つの主要なカテゴリがあります。一般に、不整脈はホルター心電図検査、虚血は心エコー検査で別々に診断を行います。しかし実は、この二種類の検査は同時に行う方が疾病の検出率が高まります。そこで、すでに商品化されている心電図検査用のe-skin ECGに心音を検出できるセンサを搭載することで、不整脈と虚血の両方を一度に診ることができるのではないかと思いました。

4. ムラタの音響センサとの出会い

――着衣型心音心電計に音響センサを活用するという着想を得られたきっかけと、これからの展望についてお聞かせください。

CEATECでの提案

ムラタとは、以前から電子部品の分野での情報交流がありました。着衣型心音心電計についても、当初は高感度で押圧検知が可能な薄型のセンサの採用を検討していました。
しかし2023年10月に開催されたCEATEC(シーテック)において、ムラタの方と会話する機会があり、音響センサの方が適している可能性とKUMIHIMOの募集テーマになっていることをご紹介いただきました。それがきっかけでKUMIHIMOへのエントリーにつながりました。

※エレクトロニクスおよびIT関連の団体や企業が参加し、最先端の製品や技術を発表する展示会。

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これからの展望

授賞以来、すでに音響センサの提供を受け、無線もしくは有線で心音図をPCに取り込めるところまで実現しています。音響センサは皮膚を通過して伝わる音のデータ(心音データ)を収集するため、今後は誰が使っても正しく心音データが収集できるようにする必要があります。一年をめどに、まずは健常者を対象に正確な心音データが取れるようになることを目標としています。

5. ムラタとの協業について

――これまでには、分野も文化も規模も異なる多くの企業との協業や協業プロジェクトでのプレゼンテーションを経験されていると思います。それらの企業とムラタやKUMIHIMOとの違いについてお聞かせください。

コミュニケーション上での安心感

ムラタとの関わりは、もう4-5年になります。その間、情報の交換は続いています。特に当社が手を出せないセンサの使用法や機能面でのアドバイスは非常に助かっています。実はこのような企業は少なく、これはムラタがXenoma社を尊重してくれているからであると感じています。さらに、お付き合いを始めた当初からのご担当者が今でも関わってくれている点などは、コミュニケーション上で大きな安心感となっています。

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オープンな企業風土

今回初めて知ったのですが、ムラタの多岐に亘る技術アセットについてオープンに活用できる風土を感じ、非常に興味深かったです。
たとえば、提供されるセンサとXenoma社のシステムを接続し信号を取り出す場合、センサ回路の情報が必要です。ほかの企業では、詳しいセンサ回路の仕様を教えてくれないケースが多くあります。この場合、インターフェイス部もXenoma社が作ることになります。しかし、これでは最適な機能の実現が困難です。その点、ムラタは積極的に試作品や技術情報を提供してくれます。結果、我々としてはセンサ回路の詳細を知ることで、より高機能で利便性の高い商品を開発することができます。これは協業する上でとても魅力的だと思っております。

ムラタ/KUMIHIMOへの期待

村田製作所の技術力に不安はありませんし、これまでもていねいにコミュニケーションいただいていたので、大企業にありがちな丸投げのような不安もありません。開発が伴うので性能面で改良のお願いをすることがあると思いますが、現実的に可能な範囲で構いませんので、一緒に進めさせていただけるものと感じております。

6. まとめ―編集後記

Xenoma社のビジネスは、心電図や心音図といった医療の専門分野から、モーションキャプチャやEMSトレーニングといった、骨格や筋肉の働きに関することにまでおよびます。そのXenoma社がムラタの音響センサと出会い、KUMIHIMOの最優秀賞に採択されました。
このことは、Xenoma社がスマートアパレルを手掛け、ムラタがハードウェアという技術を提供する「医工連携」を象徴しています。医工連携にとどまらず、それぞれの分野でお互いの知識や技術という力を合わせること。これがKUMIHIMOの魅力であり、Xenoma社がKUMIHIMOの最優秀賞に選ばれた理由であると感じました。

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網盛一郎 氏
Xenoma社の代表職およびe-skin事業部統括

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