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KUMIHIMOとアフリカの宙(そら)に描いたイノベーション-2

前編では、SORA Technology社(以降「ソラテクノロジー」または「当社」と表記)でドローンのハード・ソフトの開発を担当されている福島さま、それらの技術の取りまとめを担当されている加藤さま、マーケティングおよび広報を担当されている小島さまに、KUMIHIMOに応募されたきっかけやムラタとのコミュニケーションを通じて得られたこと、さらに今後KUMIHIMOに期待されることについて、お伺いしました。

今回は、ソラテクノロジーにおけるドローンの取り組みについて、技術面を中心にインタビューしました。

加藤さま、福島さま、小島さまのイメージ
左から加藤さま、福島さま、小島さま

6. ソラテクノロジーがドローンの開発を始めたきっかけ

――ソラテクノロジーには、もともとドローンに関する技術があったのでしょうか。

加藤さまのイメージ

以前から、アフリカでワクチンや医療品などの運送ビジネスを模索していました。しかし、その時点ではドローンのハードウェアやソフトウェアに関する知見はありませんでした。そのような状況のなか、現地ではマラリアの撲滅に直接効果のあるボウフラの駆除の要望が強いことを知りました。そして、どうにかしてマラリアを撲滅したいという気持ちから事業化を進めることになりました。

広大な大地の調査にはドローンの使用が有効です。とはいえ当時、ドローンの知見は現地での実証レベルであり、自動飛行の技術に関する知見は多くありませんでした。そこで飛行機研究所でドローンを研究していた加藤と福島が当社に加わり、より本格的にドローンの開発が始まりました。

7. ドローンの開発について

――法的な規制や気象条件は、日本とは異なると思います。また、メンテナンスも十分に行える環境ではない地域があると思います。さらに導入しやすい機体価格であることも重要です。これらの課題をクリアするために取り組まれたことについてお聞かせください。

福島さまのイメージ

ドローンの飛行に関する法的な規制は、日本よりは厳しくはありません。加えて、飛行地域が森や草原であるため、制限されることが少ないといえます。気象条件も乾季と雨季があるものの、年間を通じて28℃前後と安定しており、湿気対策や防塵性について考慮しておけばドローンの運用にとって大きな問題になりません。

ただしメンテナンスについて現地の状況は厳しいです。これに対応するため、機体には修理が容易な素材を使用し、電装部品にはなるべく入手しやすく交換が容易なものを使用しています。たとえば、機体については高価で修復に専用の材料や装置が必要なカーボンなどではなく、安価で修理も容易なEPP(発泡ポリプロピレン)を使用しています。電装部品も、たとえばフライトコントローラは入手と供給が容易な汎用品を使用しています。さらに自動操縦を取り入れることで、ヒューマンエラーによる機体破損の可能性を低減しています。

これらの取り組みにより、当のドローンは他社に比べて1/2-1/3程度の価格で導入可能です。そしてこの価格については、さらなる低価格化を目指しています。

8. ドローンの機能について

――ドローンを飛ばす目的はボウフラがいる沼や水たまりを発見するためとお伺いしましたが、そのために特に留意されたドローンの機能はありますか。

小島さまのイメージ

まず欠かせない機能は長大な飛行距離です。高高度で飛行すると、撮影範囲が広くなるため飛行距離は短くて済みますが、高い解像度の画像を得ることができません。逆に低高度で飛行すると高い解像度の画像で撮影することができますが、飛行距離は長くなります。現在は、カメラの解像度によっても異なりますが、約100kmの飛行を実現しています。

地上を撮影した画像のイメージ

そして地上を撮影するカメラですが、ボウフラの生息する水は、透明度だけでは判断できません。そこで水深や水温などは赤外線カメラなどのセンサで測定および解析し、通常のカメラの撮影画像データと統合することでボウフラが生息する水たまりを検出しています。検出したデータをさらにAIで解析することで、最終的にボウフラが存在し殺虫剤を散布するべき水たまりを特定することを可能としています。

9. ドローンに搭載するセンサについて

――バッテリや各種カメラの機能が重要であることはわかりました。ドローンの飛行には、ほかにもさまざまな電子装備が必要だと思います。これら装備に求める機能について、お聞かせください。

加藤さまのイメージ

ドローンには多くのセンサが搭載されています。たとえばドローンの飛行速度を測るセンサや高度を測るセンサ、方位を検出するセンサ、そしてGPSです。これらのセンサには、さまざまな方式がありますが、最終的にセンサからのデータはフライトコントローラに集められて機体姿勢や速度制御に利用されます。このことから、センサとしての精度だけでなくフライトコントローラとの親和性といった総合的な機能と信頼性が重要であると考えます。

10. 今後の機体開発とビジネス展開について

――すでにアフリカにおけるボウフラ対策事業のビジネス化が目前である今、ソラテクノロジーの、さらなるビジネスの展開に向けたドローン開発についてお聞かせください。

小島さま、福島さま、加藤さまのイメージ

新しいドローンとしては、ソーラープレーンを開発中です。当社が開発するソーラープレーンとは、主翼上面にソーラーパネルを設け、主翼前縁部にリチウムイオン電池を搭載したドローンです。このソーラープレーンは、日中はソーラーパネルで発電して飛行し、余った電力はリチウムイオン電池に充電します。そして夜は充電した電力で飛び続けます。なので、バッテリの劣化が少なく充電量が十分であるとしたら、24時間飛び続けることが可能です。

このシステムを搭載したドローンの可能性は無限大で、物品の運搬や長時間・長距離の観測に活用することが可能でビジネスの可能性を大きく拡大することができます。

また当社ではマラリアだけでなくジカ熱やデング熱、コレラといった疫病対策についてもビジネス化を検討しています。さらに疫病対策だけでなく森の木々を空から観測し、吸収するCO2の量を測定してカーボンクレジットを算出するといったプランにも取り組んでいます。そのようなビジネス展開を図るには、ドローンの高性能化は欠かすことのできない要素です。

11. ムラタにとって「KUMIHIMO」とは-編集後記

ドローンというハードウェアと疫病対策というソフトウェア。一見すると、まったく接点が見いだせない二つの技術が出会ったソラテクノロジー。この出会いは、ドローン開発という技術と疫病対策というビジネスの協業であると感じました。そして、そこから生み出される新しいドローンは、異業種協業による新しいビジネスモデルの成果なのです。

今後、ドローンは機能性や環境性、安全性などで多様化する社会のニーズに応えていかなければなりません。それには、単一の企業の力だけでは困難です。これらの課題の解決には、さまざまな分野の知識や経験を高いレベルでまとめあげる能力が必要であり、ソラテクノロジーはそれを実現しつつあります。

ムラタでは、大気圧値や高さの変化を検出する気圧センサや角速度センサと加速度センサを搭載した6DoF慣性力センサなども開発しており、これらムラタの電子部品が搭載されているフライトコントローラもあります。これらのことから、KUMIHIMO Tech Camp with Murataは電子部品というハードウェア開発の知見や供給を通じて、スタートアップとムラタを結びつけ、共に未来を創造する希望にあふれた新しい形のテクノロジーであると感じました。

飛行中のドローンのイメージ

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