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SDGs×Murata

Scope3カテゴリ4削減対策―環境価値向上とコスト削減の両立に物流と梱包で挑む。

村田製作所(以降「ムラタ」と表記)では、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて、2030年までにScope3における温室効果ガス(以降「GHG」と表記)の排出量を、2019年度比で27.5%削減することを目標にしています。国内外で月間13,000tの物流量を扱うムラタにとって、自社製品や原材料の輸送・配送時におけるGHG排出量である「Scope3 カテゴリ4」の削減は、重要な課題です。
そこでムラタでは、電子部品業界初の試みとなったEVトラックでの共同輸送をはじめ、カテゴリ4の削減に向けたさまざまな施策に取り組んでいます。どのような課題に対し、どういった対策をとっているのか。施策における工夫点や今後の展望まで、製品の輸送管理に携わるSCM戦略部の5名に、お聞きしました。

コスト減も実現。物流と梱包で取り組む削減対策

古勝の画像
SCM戦略部のシニアマネージャーを務める古勝

――Scope3のカテゴリ4削減について、社会的な問題意識も大きいですがムラタではどのような問題意識で取り組まれていますか。

古勝:Scope3のカテゴリ4が占める排出量の割合は、Scope1,2,3を合計したムラタ全体のGHG排出量に対して約5%です。相対的に見れば大きくはありませんが、Scope3排出量削減において重要な取り組みであると考え、2030年までにScope3排出量を27.5%削減するという全社方針に則って削減を推進しています。

物流は、実際の輸送手段にしても梱包資材にしても、お客様との距離が近く、意外と目に留めていただく機会が多いです。ステークホルダーの皆さんに、私たちの取り組みを直接見ていただけるという意味でも、とても大事な役割だと捉えています。

そのうえで、対策において意識していることは、削減効果とコストのバランスです。いくらGHG削減に資するとしても、コスト高になるのでは持続性を担保することができません。環境負荷の削減と経済効果を両立できるよう、社内外の連携はもちろん、あらゆる選択肢を考慮しています。現在は、物流関連における削減対策と、梱包や輸送資材における削減対策の大きく2つのアプローチに注力しています。

鉄道や船舶を活用。モーダルシフトの肝は、地域ごとの最適解を探ること

本多と藤村の写真
大阪と東京のロジスティクスセンターを起点にしたモーダルシフトについて語る、SCM戦略部の本多(左)と藤村(右)

――輸送手段を最適化してGHG排出量を削減する「モーダルシフト」に取り組まれていると聞きました。

藤村:モーダルシフトは積極的に取り組んでいる施策の1つです。現在、ムラタは物流拠点として大阪と東京にロジスティクスセンターを構えており、2022年に新設された東京ロジスティクスセンターでは、設立時から順次、環境に配慮した輸送手段への切り替えに取り組んでいます。

また、国内の物流におけるGHG排出源量は圧倒的にトラック輸送が占めていることから、まずはトラック輸送の一部を鉄道輸送へ切り替える試みを行いました。実施したのは、福井県、長野県、そして宮城県にある3つのグループ会社の工場と、東京ロジスティクスセンター間での運送です。それぞれの工場からロジスティクスセンターへの製品輸送には従来通りトラックを使い、製品を降ろして空になった輸送容器(バケット)を各工場へ戻す際に鉄道輸送(JR貨物で運ぶ)を活用します。また、空になったバケットを折りたたむことで1/3程度に小さくなり、JR貨物のコンテナ積載効率を最大化することができています。

いきなり製品すべての輸送手段を変更するのではなく、まずは製品の輸送品質に影響のない、空になったバケットの返送を対象にしたことにより、スピード感をもってモーダルシフトの実績をつくることができました。

それぞれの工場にとっては、たたまれた状態のバケットが返送されるため、それを再度組み立てる作業に新たな工数の負担がかかります。しかし、各工場でも環境取り組みへの貢献としての物流CO2排出量削減、カテゴリ4削減の問題意識があったことから、またムラタ全体(トータル)でのコストダウンにつながることの理解を得られました。その結果、コストダウンとなり、年間480tのGHG排出量の削減を実現しました。

RORO船の写真
RORO船へのモーダルシフトにより、トラックによるGHG排出量の削減に貢献

本多:こうした東京の事例に続き、大阪ロジスティクスセンターでもJR貨物の鉄道を利用したモーダルシフトを検討しました。しかし、貨物駅の場所やコンテナの制限、そしてそれらにおけるコスト増を鑑みると、大阪ロジスティクスセンターでは鉄道輸送への切り替えは難しいということになりました。そこで、船舶へのモーダルシフトを検討し、2025年8月から運用を始めました。

取り入れたのは、トレーラーが荷台と共に船に乗り込んだ後、運転部分を切り離して、荷台だけが海上輸送される手法です。大阪ロジスティクスセンターを出たトレーラーが、堺泉北港(さかいせんぼくこう)で運転部分を切り離し、荷台は岡山県の宇野港へ輸送されます。そして、宇野港到着後に運転部分を取り付け、島根県及び岡山県の工場へと輸送されます。船舶とトレーラーの併用によって1回あたりの輸送量が拡大し、年間143tのGHG削減とコストダウンにつながる予定です。

社会課題の解決にも貢献。業界初となるEVトラックの共同輸送

EVトラックの写真
共同輸送プロジェクトで利用しているEVトラック

――EVトラックの共同輸送についても教えてください。

藤村:カテゴリ4におけるGHG排出量の削減について検討し始めた段階で、運送会社に良い方法がないか相談した結果、日本通運株式会社からEVの2トントラックをご提案いただきました。しかし、市場ではまだ新しいこともあり、ディーゼルトラックに比べて車両価格が高く、輸送コストが大幅に増加してしまうため、導入に躊躇していました。そこで、共同輸送について検討したのです。我々と同じく京都に本社を置く電子部品メーカー、ローム株式会社(以降「ローム」と表記)にお声がけしたところ、賛同いただき実現に至りました。

ロームは、TCFDへの賛同やRE100の加盟、SBT認証の取得など、環境対策における問題意識と取り組み状況がムラタと共通しています。また同じ電子部品を扱うため、輸送の品質保持や安全意識も高く、京都からの輸送ルートにも共通性が高いことなど、共同輸送における最適なパートナーでした。

共同輸送のルートのイラスト
ロームと村田製作所の輸送ルート

高橋:EVトラックによる共同輸送は現在、1日1往復。ムラタの輸送貨物は、梱包用資材及び輸出貨物で、運送ルートの策定には2ヶ月ほどを費やしました。まず、EVトラックの車庫からロームの拠点で荷役し、続いてムラタの京都物流拠点と大阪ロジスティクスセンターで荷役し、1度充電ステーションで充電時間を取ってから、関西空港へ向かいます。そして、復路でもう1度充電してから京都の車庫に戻り、約210kmにわたるEVトラックとしては最長クラスの走行距離ルートを毎日の定期便として運送しています。

この共同輸送によって、輸送コストの増加を抑えながら、年間約30tのGHG排出量を削減できる予定です。まだ小さな削減量ではありますが、今後の取り組み拡大に向けて重要なきっかけをつくることができたと考えています。

同時に「物流の2024年問題」と呼ばれるドライバー不足の課題についても、定期運送としたことで一定の輸送便やドライバーの負担抑制を実現しています。また、EVトラックはディーゼルトラックに比べて騒音や振動が少なく排気ガスもないので、ドライバーの方々の労働環境としても改善されていると考えています。

古勝:加えて、EVに限らずFCV(水素)トラックや新技術などにも関心を寄せており、導入による削減効果にも期待をもっています。一方で、こうした共同輸送と積載率の向上が実現できるのであれば、ディーゼルトラックでも削減効果につながる可能性があるのではないかと考えています。また、現在はモーダルシフトを中心に片道使用が増えているので、復路を活かした新たなパートナー企業との共同輸送も選択肢にあります。まだまだいろいろな可能性が考えられますので、積極的に社外の協力者を探していきたいですね。

GHG削減量の可視化に自社技術の可能性

高橋と太田の写真
気候変動や2024年問題などの物流に関する課題にも常に新しい方法や物差しで挑戦し続けるSCM戦略部の高橋(左)と太田(右)

――排出量の精緻化を行うにあたり、何か難しさや課題に感じていることはありますか。

太田:1つはGHG排出量の算出方法です。現在は、運んだ重量と距離で算出する「トンキロ法」が主流です。運送手段別に排出量係数が定められていますので、運送会社や輸送委託先から重量と距離のデータを提供いただき、「輸送重量×輸送距離×輸送手段係数」の掛け算で算出します。

しかし、この計算方法では、例えば「100kgの貨物を、5km離れた先へ1回運ぶ」ことと、「50kgの貨物を、同じ場所へ2回運ぶ」ことが、同じ数字になってしまいます。厳密には2回運んだことでGHG排出量は異なるはずですし、輸送頻度を下げる、積載率を上げるといった取り組みの効果は数字として反映しきれないため、トンキロ法の限界を感じることがあります。

我々としては、燃費を考慮した「燃費法」の採用や、消費燃料を考慮した「燃料法」の採用など、重量要素に寄与しない要素にもスポットを当てることが望ましいと考えています。特に、容積や内容物を考慮した貨物の積載率に関して、例えば自社技術などを使い「見える化」できれば、より具体的に削減効果が把握できます。そうしたソリューションがまだないことを考えると、もしムラタがいち早く製品化できれば、物流の困りごとを自社で解決し、他社も使えるソリューションビジネスにつなげることができると思っています。

協働から生まれるシナジーが社会価値を高める

――今後は、どのような取り組みを考えていますか。

古勝:大きく4つのことを考えています。まず1つは、今後も積極的にモーダルシフトを推進することです。鉄道、船舶、EVに続き、昨年は新幹線での輸送もトライアルで実施しました。生産部門からMLCC(積層セラミックコンデンサ)の生産設備用の部材に関して、振動に弱いためトラック輸送では懸念がある、と相談を受けたことがきっかけです。新幹線は非常にコストがかかるためまだ導入には至っていませんが、個別の国内配送や災害など有事の際のBCP(事業継続計画)として有効だと考えています。

2つ目は、共同輸送の推進です。EVトラックに限らず、ディーゼルトラックをうまく活用することや積載効率の向上など、削減に向けた幅広い可能性を考慮していきたいと思います。ロームと共にEVトラックでの共同輸送にチャレンジしたことで、物流における課題解決は競争ではなく、協調・協働することが重要だと実感しました。社会価値も経済価値も、お互いにとって良い協働が実現するよう、荷主同士のつながりや仲間づくりに積極的でありたいです。

3つ目は、積載効率の向上です。現場で地道に取り組むことに加えて、積載量の可視化が自社技術の応用で実現するとしたら、非常に素晴らしいと思っています。

そして4つ目は、最新技術の動向をタイムリーに把握し、あらゆる可能性に前向きでいることです。例えば、今回のEVトラックは2t車でしたが、将来的に大型トラックの導入も必要ですので、自動車メーカーを含め、積極的に情報収集をしていこうと思っています。

EVトラックの共同輸送をリリースした際、想像以上に多くの反響をいただき、改めてGHG排出量の削減に社会的な関心が高まっていることを実感しました。最初にお伝えしたように、物流に加えて、梱包や輸送資材における削減対策にも取り組んでいます。例えば、日々大量に使われるラベルの台紙やインクリボンのリサイクルなどは実施している取り組みの1つです。仕入先様各社にご協力いただき、建材や固形燃料にリサイクルすることで、年間1.2tのGHG削減につながっています。

また、輸送用のパレットや、先ほど話にあがった輸送容器のバケットも、破損してしまった場合は回収し、再びパレットとして使えるよう水平リサイクルしています。この資源循環によるGHG削減量は、年間15tに及びます。また、輸送用パレットは低背、軽量化を進め、輸送重量の削減を実現した結果、GHG削減は年間707tと非常に大きな効果を出しています。

これからも引き続き、グローバルな見地も含めて物流領域における最先端の取り組みの推進・普及に努めてまいります。

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