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ムラタが推し進める気候変動対策―金津村田製作所、再エネ100%工場への道(前編)―

INDEX

1. “自律分散型の精神”から“全社横断”へと発展したプロジェクト

2. 初めてづくしのプロジェクトとゴールに向けて生まれた一体感

多くの企業にとって気候変動対策が最重要課題となった今、こと製造業においては、工場を含めた全社横断的な意思統一の難しさ、工場ごとに異なる事情を踏まえたプロジェクトの推進・連携といったさまざまなハードルが浮き彫りになっています。

ムラタが推し進める気候変動対策―グループ全体の取り組み―」では、ムラタグループ全体の気候変動対策について紹介しましたが、今回はグループ初の“再エネ100%工場”を実現した金津村田製作所の取り組みにフォーカスし、プロジェクトに携わった金津村田製作所の清水、酒井、新規事業推進部の向井から、プロジェクトを成功に導いた要因や成功のポイントを紹介します。

1. “自律分散型の精神”から“全社横断”へと発展したプロジェクト

ムラタが推し進める気候変動対策―グループ全体の取り組み―」において、ファシリティ部の勝間と藤原がポイントとして挙げた“自律分散型の精神”と“全社横断”。この2つのキーワードから、金津村田製作所の具体的な取り組みをひもといていきましょう。

酒井「福井県あわら市にある金津村田製作所は、高周波同軸コネクトやDCモジュール、高圧抵抗器、蓄電池システムなどの製造を手がけています。基盤への実装を強みとし、1mm程の極小部品から100kg程の大型製品まで、さまざまなものづくりを行っています」

金津村田製作所・酒井のイメージ画像
金津村田製作所・酒井

清水「これまで携わってきた製品は33種類と、ムラタの工場の中でも群を抜いて多い数です。幅広い製品を作る対応力、柔軟性も金津村田製作所の強みのひとつだと言えます。また、工場内の緑化活動を推進するなど、かねてから環境に対する意識も強く、金津村田製作所の生産製品であるAll-in-One蓄電池システムを活用し、なんらかの気候変動対策をできないか、やるべきことがあるのではないか。そうした考えの下、再生可能エネルギー利用率を高めていく計画を工場方針としたことが再エネ100%工場に至るまでの出発点です」

2. 初めてづくしのプロジェクトとゴールに向けて生まれた一体感

金津村田製作所・清水のイメージ画像
金津村田製作所・清水

2018年末に最初の取り組みがスタート。再エネ100%工場という目標の実現に向けて、スモールスタートを切ったことがポイントだと振り返ります。

清水「まずは金津村田製作所でできることから始めよう、スモールスタートを切ろうと、工場の屋根に230kWの太陽光パネルを、棟内に46kWhのAll-in-One蓄電池システムを設置しました。同時に、プロジェクトを通して金津村田製作所が一丸となって目指すべき方向を工場内に浸透させるため、金津村田製作所のグランドデザインで掲げている『標準にこだわったモノづくりを未来へ』『安全と健康を第一に』『品質優先、続ける改善』『地域とくっつくトコロ、仕事を楽しむココロ。』『お客様が満足することを』『ムラタでつながる、学ぶ→貢献する』という6つの方針と結び付けた活動としました」

酒井「気候変動対策に取り組むことはお客様の満足に結び付き、自家発電・自家消費することで地域の環境負荷の低減にもつながる。こうした方針をベースにプロジェクトが進んでいきました」

ムラタの一工場である金津村田製作所の、まさに“自律分散型の精神”からスタートした取り組みは、2019年末、“全社横断”へと拡大。新規事業推進部が参加することでプロジェクトがスケールアップし、スピード感が増していきます。

向井「私が所属する新規事業推進部は新しいビジネスを推進する部署で、主にエネルギー領域を担当しています。金津村田製作所の皆さんとは以前、家庭用蓄電池のプロジェクトに一緒に携わったご縁がありました。そして、新規事業推進部で産業用蓄電池の新規ビジネスを模索している2019年当時、金津村田製作所が進めている気候変動対策の取り組みを知りました」

新規事業推進部・向井のイメージ画像
新規事業推進部・向井

清水「我々としても次の展開をどうしようかと考えていたところ、向井のほうから『金津村田製作所の取り組みのデータを活用し、蓄電池を使った再生可能エネルギーの大きな流れを生み出しましょう』と話を持ちかけられました。新規事業推進部と連携することで設備のスケールを大きくすることもできますし、“全社横断”で取り組むことでプロジェクトとして加速する。まさにタイミングと目指す方向性が合致したのです」

カーポート型太陽光パネルを設置した金津村田製作所の駐車場のイメージ画像
カーポート型太陽光パネルを設置した金津村田製作所の駐車場

全社横断的なプロジェクトでは、太陽光パネルを製造棟の屋根に255kW分、さらに従業員用の駐車場にカーポートを設置し、その屋根に383kW分を設置。さらに、屋外に自社製品であるオリビン型リン酸鉄リチウムイオン二次電池を使用した913kWhの蓄電池システム(FORTELION)を設置する計画が動き出します。

酒井「カーポート型太陽光発電設備としては北陸地方最大規模ということもあり、しっかりしたものを作ろうと決心してプロジェクトに臨みました。同時に、福井県は豪雪地帯でもあるので、建設基準で定められている1.75mの積雪に耐えられる構造にしました。駐車場は従業員が使うスペースなので、乗り降りの際にドアが当たらないように中間柱やブレース(建物の補強材)を取り除き、雨や雪、つららなどが落ちてこないよう利便性と安全性を考慮しました」

清水「一方で、設置工事の進捗は思うように進まず、稼働に向けたスケジュールも決まっていたので焦燥感はありましたね。初めての経験ばかりだったので、何度も議論を重ねました」

酒井「豪雪地帯でカーポート型太陽光パネルを作ることは難易度が高いものでした。ムラタにとっても、太陽光パネルの設置業者にとっても初めての取り組みだったこともあり、ああすればいい、こうすればいいと何度も話し合いました。結果的に、カーポート型太陽光パネルは構想から設置まで1年を要しました」

向井「プロジェクト発足当初は必ずしも順調ではありませんでしたが、稼働開始までのスケジュールから逆算してタスクに追われる中で、ゴールに向かって徐々に一体感が生まれていったと思います」

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