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技術を生み出す創造力の融合―オープンイノベーションとは

異業種間の交流や提携によってイノベーションを生み出す「オープンイノベーション」は、企業にとって魅力的な活動です。しかし実現に向けチームを立ち上げて、プロジェクトを推進しビジネスの成功に結び付けるには、オープンイノベーションについて正しく理解しておく必要があります。
本稿では、オープンイノベーションの基礎知識からメリットやデメリットを解説。さらに製造業を例に、オープンイノベーションの現状や進める際の注意点などについても解説します。

1. 「オープンイノベーション」とは

「オープンイノベーション」とは、企業間の交流や提携によってイノベーションを生み出す活動のことです。交流や提携する相手は異業種であるケースが多く、大学や研究機関、スタートアップなども含まれます。オープンイノベーションによる交流や連携を通じてハードウェアやソフトウェアの技術、知識や経験を融合することで、ひとつの企業内でのイノベーションでは困難であった課題の解決や新たな価値の創造の実現が可能になります。

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2. 「イノベーション」と「オープンイノベーション」の違い

従来、イノベーションは単独の企業やグループ内で行われてきました。たとえば既存の自社製品の精度を自社内での技術・アイデアによって、より高品質な製品を生み出すといった活動は「クローズドイノベーション」といわれます。しかし国際的な企業間の競争が激化するなか、クローズドイノベーションでは新規事業の立ち上げや新たな市場開拓などが困難になってきました。そこで重要視されるようになった活動が「オープンイノベーション」です。

「イノベーション」と「オープンイノベーション」の違いのイメージ画像
図1 「イノベーション」と「オープンイノベーション」の違い

3. オープンイノベーションのメリットとデメリット

オープンイノベーションには、提携した組織同士が技術や知識を提供し合うことで新しい価値を創造できるというメリットがあります。一方で、企業にとって重要な情報を提供し合うことによるデメリットもあります。これらメリットとデメリットを事前に把握しておくことで、オープンイノベーションをスムーズに進めることができます。

オープンイノベーションのメリット

オープンイノベーションのメリットには、主に以下の3点が挙げられます。

  • 新規技術やノウハウなどの獲得
    自社にない、新たな知識や技術を得ることができます。自社の技術と異業種の知識や技術が補完し合うことにより、自社のみでは困難であった課題の解決や新たなイノベーションの創造が可能になります。
  • 幅広い戦略展開が可能
    他社の技術やノウハウを活用することで、自社の分野を超えた事業戦略の展開が可能になります。これにより、変化の激しい市場のニーズに対して、柔軟な対応が可能になります。
  • 研究・開発時間の短縮
    プロダクトライフサイクルが短期化している昨今、新製品の開発期間の短縮は重要です。自社にない技術を他社の技術で補うことで、新規技術の研究・開発に要する時間を短縮することができます。

これらの他にも、同業他社にはない能力を得ることによる市場での存在感の向上や事業推進のスピードアップ、さらに研究・開発コストの低減といったメリットも期待できます。

オープンイノベーションのデメリット

オープンイノベーションのデメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。

  • 機密情報や知的財産などの流出リスク
    自社の機密情報が他社に流出する可能性があります。特に自社の技術や顧客情報を他社に提供するようなケースでは、この危険性が高くなります。
  • 目的の明確化
    オープンイノベーションによる利益を最大化するには、目的を明確にする必要があります。オープンイノベーションは、あくまでも目的ありきで取り組む活動です。目的が明確でない場合、オープンイノベーションは大きな徒労に終わってしまう可能性が極めて高くなります。
  • 自社の研究・開発力の衰退
    限られた予算をオープンイノベーションへ投資すると、自社が進める他の研究・開発に割り当てる予算が減少します。特に、これまで進めてきた研究・開発への予算が減少するようなケースでは、従業員がモチベーションを失い、結果、人材流出の原因になる可能性があります。

これらのデメリットは、提携先に開示する情報を明確にしておく、ビジネスプランを明確にしておく、バランスを考えた研究・開発への投資計画を立案するなど、事前の調査・検討で解決しておかなければなりません。

4. オープンイノベーションの現状

さまざまな産業において、クローズドイノベーションによる技術革新では競争力に限界が見え始めた現在、オープンイノベーションへの期待と理解は深まりつつあります。しかし前述のとおり、オープンイノベーションにはメリットとデメリットがあります。そこで、ここでは製造業を例に、オープンイノベーションの現状について説明します。

製造業におけるオープンイノベーション

近年、製造業でもオープンイノベーションに取り組む企業は増えてきています。しかし、他の業種に比べれば少ないのが現状です。特に中小企業でオープンイノベーションに取り組んでいる企業は20%足らず(図2)。その連携先は大多数が国内の大学・研究機関であり、同業種や中小企業・ベンチャー企業、海外機関などは少数です(図3)。

オープンイノベーションの取り組み状況のグラフ1
図2 オープンイノベーションの取り組み状況
オープンイノベーションの取り組み状況のグラフ2
図3 オープンイノベーションの取り組み状況(複数回答のため、合計は必ずしも100%にはならない)

出典:経済産業省ウェブサイト

このように、製造業においてオープンイノベーションが進まない理由を以下に挙げます。

  • 自前主義(クローズドイノベーション)へのこだわり
    製造に従事する技術者にとって自らの力による課題解決こそが重要な使命であり、社外の技術や知識で課題を解決することには抵抗があります。このため、課題解決に有効な社外組織があったとしても、その技術や知識を使うことに積極的ではありません。このような自前主義はオープンイノベーションの妨げになります。
  • 人材・スキルの問題
    オープンイノベーションに取り組むには、他社や研究機関などとの広い範囲におけるコミュニケーションが欠かせません。そのようなコミュニケーションには製造技術はもとより、ビジネスに関する幅広い知識とコミュニケーション能力が必要です。このようなスキルを持った人材の不足が、製造業のオープンイノベーションを困難にしています。
  • 技術流出のリスク
    技術力を競争力の核とする製造業にとって、オープンイノベーションに対するもっとも大きな不安は、自社が有する知識や技術の流出です。この不安が自前主義を生み出し、結果としてオープンイノベーションに対して消極的になる場合があります。

以上のような理由から製造業ではオープンイノベーションが進まず、さらにオープンイノベーションに取り組んでも投資を事業化・企業収益に結び付けることができないといったケースが多くみられます。

製造業におけるオープンイノベーションの必要性と注意点

しかし、グローバルな競争が激化し製品ライフサイクルが短期化するなか、企業がオープンイノベーションを導入することなしに、国際的な競争力を維持することは困難です。
また、イノベーションというと、スタートアップ企業や先端的な企業が挑戦するものといったイメージがあるかもしれません。しかし市場のニーズの変化が激しく、人材不足が深刻な課題となっている製造業では、大企業であってもオープンイノベーションによる新たな価値の創造に挑戦していく必要があります。
企業にとって、オープンイノベーションは多くのメリットとデメリットを抱えた一大事業です。それだけに、提携先の選定には細心の注意が必要です。特に事業化には提携先の技術力はもちろん、技術情報の開示度や迅速で的確な対応は欠かせず、またアフターサポートへの取り組みも、事業化後の企業収益を左右する重要なポイントです。

5. まとめ

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オープンイノベーションを通じ、すでに多くの企業や大学が連携し新しい価値を生み出しています。そのような状況のなかで、製造業におけるオープンイノベーションの立ち遅れは「モノづくり」の将来を左右する大きな課題です。
異なる分野の組織が連携し、技術の融合により新たな価値を創造することを目的とするオープンイノベーション。製造業を取り巻く多くのデメリットや課題は、最適な提携先との連携の必要性を物語っているように思われます。

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