ノイズ対策技術 / 事例紹介(自動車)

ADASを見据えた車載Ethernet 1000Base-T1ノイズ対策-3

7. 伝導エミッション対策

伝導エミッション測定条件

1000Base-T1 EMC評価ボードを用いて伝導エミッション測定(150Ω法)を行いました。

伝導エミッション測定条件のイメージ画像
周波数 150k – 1600MHz
RBW 9kHz (150k-30MHz)  
120kHz (30-1600MHz)
Dwell Time 5ms/Hz
Step Size 3.6kHz (150k-30MHz)  
48kHz (30-1600MHz)
EUT 1000Base-T1 EMC Test Board
EMI Test Receiver N9030A(Keysight)
Pre-Amplifier 8447D(Keysight)
DC Power Supply GP035-5(Takasago)

CMCCの違いによるノイズ減衰効果の比較

1000Base-T1EMC評価ボード上の信号ラインからコモンモードノイズを取り出し、EMIレシーバにて測定を行います。
今回はCMCCを入れ替えることによりノイズを比較しました。

CMCCの違いによるノイズ減衰効果の比較のイメージ画像

伝導エミッション対策で使用したCMCC

評価用CMCCとして1000Base-T1用として商品化されたDLW32MH101XT2と、比較対象として100Base-T1用として商品化されたDLW43MH201XK2、CAN用として商品化されたDLW32SH101XK2を用いました。

ディファレンシャルモード伝送特性のイメージ画像
Sdd21(ディファレンシャルモード伝送特性)
コモンモード伝送特性のイメージ画像
Scc21(コモンモード伝送特性)
ディファレンシャルモード反射特性のイメージ画像
Sdd11(ディファレンシャルモード反射特性)
モード変換特性のイメージ画像
Ssd12(モード変換特性)

伝導エミッション測定結果

伝導エミッション測定を行った結果、1000Base-T1用として商品化されたDLW32MH101XT2が最もノイズ抑制効果が高く、限度値を満たしました。DLW43MH201XK2、DLW32SH101XK2は限度値を満たすまでノイズを抑制することはできませんでした。

伝導エミッション測定結果のイメージ画像

ノイズ発生メカニズム

CMCCによってノイズ抑制効果が異なった原因として、CMCCのモード変換特性Ssd12の影響が考えられます。Ssd12の値が高いと、入力されたディファレンシャルモード信号がコモンモードノイズに変換される割合が高くなり、結果としてノイズレベルが高まってしまったと考えられます。

ノイズ発生メカニズムのイメージ画像

ノイズ抑制のポイント

低周波ではScc21によってどれだけコモンモードノイズを抑制できるか、高周波ではSsd12のモード変換特性によりコモンモードに変換される量をどれだけ減らせるかが伝導エミッション測定結果に影響していると考えられます。

ノイズ抑制のポイントのイメージ画像

ボード設計における注意点

CMCCの評価に際して、ボード設計における注意すべき点がわかってきました。
1000Base-T1用CMCCの同一サンプルを、同じ条件の評価ボードに実装したところノイズレベルが異なり、一方のボードではNGとなりました。

※同一CMCCサンプルであっても評価ボードの状態によってNGとなることがあります。

ボード設計における注意点のイメージ画像1

ボード上における伝送路特性を解析した結果、CMCCの出力側でモード変換特性に違いがあり、ボード#2の方が値が高いことが分かりました。

ボード設計における注意点のイメージ画像2
モード変換が発生する部分

ボードによって伝導ノイズレベルが異なった原因として、CMCC通過後のディファレンシャルモード信号が、ボード上でコモンモードノイズに変換されたためと考えられます。

ボード設計における注意点のイメージ画像3
モード変換の発生メカニズム

モード変換が発生するポイントとして、CMCCの出力側にある抵抗、コンデンサ、基板配線などが考えられ、それらの特性バラツキによりアンバランスが生じたと考えられます。
このため、CMCC以外の部分においても各ラインの特性バランスが取れるように注意する必要があります。

ボード設計における注意点のイメージ画像4
モード変換が発生すると考えられるポイント

100Base-T1における伝導エミッション

100Base-T1にて同様の伝導エミッション測定を行ったところ、CAN用のDLW32SH101XK2では限度値を超えましたが、100Base-T1用として商品化されたDLW43MH201XK2では十分なノイズ抑制効果を持ち、限度値を満たしました。

100Base-T1における伝導エミッションのイメージ画像1
100Base-T1
100Base-T1における伝導エミッションのイメージ画像2
1000Base-T1

100Base-T1と1000Base-T1の違い

100Base-T1と1000Base-T1ではディファレンシャルモード信号に含まれる周波数成分が異なるため、必要なモード変換特性も異なります。
このため、それぞれの規格にあわせて設計されたCMCCを選ぶ必要があります。

100Base-T1と1000Base-T1の違いのイメージ画像
差動信号波形スペクトル

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