ノイズ対策技術 / 事例紹介(自動車)

ADASを見据えた車載Ethernet 1000Base-T1ノイズ対策-2

5. 車載Ethernetのノイズ対策

Ethernetの問題点

Ethernetに使用されるケーブルと、 HDMI、USB等のケーブルには違いがあります。HDMIやUSB等のケーブルには対となる信号ラインと別にGNDラインが用意されているため、コモンモード電流が流れてもその電流がGNDラインを通って戻るため、コモンモード電流によって発生する磁界は打ち消し合い、放射しにくくなっています。一方、Ethernetでは、GNDラインが用意されていないため、コモンモード電流が戻るルートは浮遊容量を介した大地となり、放射しやすくなる傾向にあります。

HDMI、USB等のケーブルの場合

HDMI、USB等のケーブルの場合のイメージ画像

ケーブルにGNDラインを沿わしているため、
コモンモード電流により発生する磁界も一部キャンセルされます。

 

コモンモード電流による放射が小さくなります。

Ethernetのケーブルの場合

Ethernetのケーブルの場合のイメージ画像1

ケーブルにGNDラインがないため、
コモンモード電流により発生する磁界はキャンセルされません。

 

コモンモード電流による放射が大きくなるため、部品によるノイズ対策が必要になります。

車載Ethernetを始めとする差動伝送におけるノイズ対策にはコモンモードチョークコイル(CMCC)が有効です。コモンモードチョークコイルは共通のコアに2ラインを逆方向に巻いたもので、ディファレンシャルモードの電流に対して両ラインで発生する磁束は互いに打ち消し合うためディファレンシャル電流には影響を与えず、コモンモードの電流に対しては両ラインで発生する磁束が強め合うためインダクタとして働きます。これによって、差動信号に影響を与えずにコモンモードノイズを効果的に減衰させることができます。

Ethernetのケーブルの場合のイメージ画像2

コモンモードだけを選択的に落とすことができます。

6. 車載Ethernetに使用するCMCCの注意点

車載Ethernetにおいては、CMCCのバランスも重要です。CMCCを構成する2ラインの線路長や巻き方にずれが生じると、電流のバランスが崩れ、モード変換が生じてコモンモードノイズを発生させてしまうことがあります。このため、両ラインのバランスが取れるように設計されたCMCCを選ぶ必要があります。

車載Ethernetに使用するCMCCの注意点のイメージ画像

CMCCの線路長等に2つのコイル間でズレがあると、
モード変換によりコモンモードノイズが新たに発生する要因になります。

 

モード変換の少ない部品を選定する必要があります。

1000Base-T1のノイズ対策に最適なCMCCとしてDLW32MH101XT2が商品化されています。1000Base-T1で使用することを考慮したインピーダンス値を持ち、モード変換発生しにくいバランスの取れた設計となっています。

DLW32MH101XT2

DLW32MH101XT2のイメージ画像

1. 自動車車内ネットワークの信号ラインから放射されるノイズ対策に効果的です。

2. 車載Ethernet規格1000Base-T1適合

3. 自動車用途に対応した使用温度範囲(-40~125℃)

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DLW32MH101XT2の伝送特性

ディファレンシャルモード伝送特性のイメージ画像1
Sdd21(ディファレンシャルモード伝送特性)
コモンモード伝送特性のイメージ画像2
Scc21(コモンモード伝送特性)
ディファレンシャルモード反射特性のイメージ画像3
Sdd11(ディファレンシャルモード反射特性)
モード変換特性のイメージ画像4
Ssd12(モード変換特性)

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