ノイズ対策技術 / 事例紹介(自動車)
PoCシステムに求められるインダクタとノイズ対策-4
INDEX
6.放射ノイズ対策実例
つぎに、PoCシステムを有するSerDesの評価基板を用いて放射ノイズを測定し、ノイズ対策を行ってみました。Tx側とRx側の評価基板を1.5メートルの車載同軸ケーブルで接続し、Rx側に電源供給して評価基板を駆動させた際の放射ノイズを測定しました。
初期状態
放射ノイズを測定したところ、30MHz~2.5GHzの全体域でブロードバンドノイズが確認され、規格値を超える周波数帯が存在しました。
近傍磁界分布 測定結果
ボード上のノイズ源を確認するために、基板表面の近傍磁界分布測定を実施しました。
SerDes ICの信号ラインおよびICの電源供給ラインに広帯域なノイズスペクトルを観測しました。また、両者のスペクトル形状を比較すると、値は異なるものの相似形状になっていることがわかりました。
このことは、信号ラインも電源ラインもノイズ源が同じものであることを示しています。
信号ラインの方が高いレベルを示しているため、SerDesの信号がノイズ源になっていると考えられます。
※この評価ボードのDC-DCコンバータはスイッチング制御式ではないため、スイッチングノイズに起因する磁界分布ではありません。
Serializerからのノイズ伝導経路(推定)
推定されるノイズ伝導経路は次の通りです。
経路①:基板GNDおよびケーブルのシールド層と信号ラインへノイズが伝導する。
経路②:経路①のノイズが電源層に結合し、電源ケーブルへノイズが伝導する。
Serializer ICから送信される信号のノイズ成分は、基板上でGND層に結合し、同軸ケーブルをコモンモードで伝導します。(経路①)
そのノイズ成分は、Deserializer IC搭載基板に伝導し、基板内で電源層にも結合することにより、電源ケーブルをコモンモードで伝導します。(経路②)
経路①の対策のために、信号用CMCCであるDLW21SH391XQ2を実装し、
経路②の対策のために、電源用CMCCであるPLT5BPH5013R1SNを実装しました。
その結果、30MHz~1000MHzにおいてフィルタなしの状態よりもノイズが10~20dB抑制されました。
ムラタが推奨する コモンモードチョークコイル
対策①+②
2つの対策を両方適用することによって、30MHz~2.5GHzの全周波数において、最大約25dBノイズが抑制されています。
7. まとめ
- PoCシステムについて、Bias-TインダクタによるSIの改善やCMCCによるノイズ抑制について検証を行いました。
- 広帯域特性を有するインダクタ(LQW32FTシリーズ)を用いることにより、SIが改善しました。
- SIに対するケーブル影響は無視できないため、PoCシステムのBias-Tインダクタを評価するには、ケーブルを含めたSパラメータ特性で評価するのが望ましいと考えられます。
- DC-DCコンバータのスイッチングノイズがSIに悪影響を及ぼす可能性を考慮し、検証を行いました。その結果、PoC用のBias-Tインダクタによりスイッチングノイズを低減させられることを確認しました。
- DC-DCコンバータのスイッチングノイズやSerDesの信号がノイズ源となり、放射ノイズレベルを悪化させる可能性があることを確認しました。その対策には、コモンモードチョークコイル(DLW21Sシリーズ)が有効であることがわかりました。