ノイズ対策技術 / 事例紹介(自動車)

PoCシステムに求められるインダクタとノイズ対策-2

3. Bias-T回路のSIへの影響

Bias-Tインダクタに必要な特性-広い周波数範囲

理想的なインダクタは周波数に比例してインピーダンスが上がり続けますが、実際のインダクタはそうではありません。インピーダンスカーブは山なりの形状となります。
PoC用のBias-Tインダクタはどの周波数で高い周波数を持つ必要があるのかを調べるために、SerDesの信号成分を周波数軸で測定しました。
その結果、SerDesの信号は幅広い周波数にわたって分布しており、Bias-Tインダクタは幅広い周波数範囲で高いインピーダンスを持つ必要があることがわかりました。

PoCシステム(SerDes)の信号周波数成分 測定方法

PoCシステム(SerDes)の信号周波数成分 測定方法のイメージ画像
PoCシステム(SerDes)の信号周波数成分 測定方法

検証に用いたBias-T回路の特性

通常のインダクタは単体で広い周波数範囲をカバーすることができないので自己共振周波数の異なる複数のインダクタを組み合わせてカバーする必要があります。一方、Bias-T用に開発されたインダクタLQW32FTシリーズは、単体で広い周波数範囲をカバーできるので、インダクタの部品点数を減らせます。

検証に用いたBias-T回路の特性のイメージ画像
検証に用いたBias-T回路の特性

SIの測定

複数のインダクタを組み合わせた場合とBias-T用に開発されたLQW32FTの両者で、SerDes信号のSI(Signal Integrity)に差があるかどうかを確認しました。
複数のインダクタを組み合わせた場合はインピーダンスカーブが安定しないため、信号波形の乱れが見られます。一方、LQW32FTシリーズを使用した場合は信号波形が乱れず伝送されています。

SIの測定のイメージ画像
SIの測定

信号ラインの透過特性(S21)・反射特性(S11)

波形品位が低下するのは伝送ラインの伝送特性が悪くなるためです。Bias-Tの信号伝送側の透過特性S21を確認すると、LQW32Fシリーズを使用した方が良好な特性になっています。また、反射特性S11もLQW32FTシリーズを使用した方が良好です。

信号ラインの透過特性(S21)・反射特性(S11)のイメージ画像
信号ラインの透過特性(S21)・反射特性(S11)

4.ケーブルがSIに与える影響

測定系

車載同軸ケーブルの特性が波形に与える影響を確認するために、信号発生器の信号を車載同軸ケーブルに流してオシロスコープで波形観測するとともにケーブルの透過損失特性をS21により評価しました。

測定系のイメージ画像
測定系

ケーブルの透過損失特性(S21)

ケーブルの長さを変えてみると、ケーブルが長くなるほど高周波の波形品位の低下が顕著になりました。このように、ケーブルがSIに与える影響は無視できません。Bias-Tインダクタを評価する際は、ケーブルを含めた評価系でSパラメータを確認する必要があります。

ケーブルの透過損失特性(S21)のイメージ画像

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