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IIoT×5G:製造業を取り巻く5Gの進展

5Gの普及で新たな局面を迎えるIIoT

次世代の通信規格である5Gは、現在主流の4G(第4世代)と比べて超高速大容量通信、超低遅延、多数同時接続などの特長があります。5Gの理論上の最高通信速度は毎秒20ギガ(ギガは10億)ビットで、4Gの約20倍(nikkei4946.com調べ)。遠距離でもデータ送受信の遅れが1000分の1秒と、リアルタイムに近いデータのやりとりができます。1平方kmあたり100万台のデバイスの同時接続を可能にし、これは4Gの10倍に該当します。

5Gのメリットとして、映画などの大容量コンテンツを瞬時にダウンロードしたり、多方向の複数カメラからのスポーツ映像を同時配信し、臨場感を高めたりする使い方などがクローズアップされています。一方、センサーやロボットなど、多様で大量のデバイスを使った高度な情報処理が必要となるIIoT(Industrial internet of things)ネットワークにとっても優位性は顕著で、5Gの普及に伴ってIIoTが急速に進化するのは確実と見られています。

特に製造業において、より高度化されたスマートファクトリーに関する取り組みが注目されています。5Gによって工場のさまざまな機器の情報を瞬時に収集し、機器同士を協調動作させるなどして生産効率を高めることが狙いです。例えば、高速大容量通信の特性を活かすことで、作業員の動きを分析したリアルタイムのコーチングや、人とロボットの協調作業などに活用できます。また、超低遅延を活かすことで、危険な環境下の作業を遠隔でスムーズに操作することも可能に。多数同時接続を使えば、工場・施設内のすべての機器やセンサーを無線で接続して一元管理することにもつながります。

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5G対応IIoT市場の各国の動向と展望

5Gの先進国である中国は、同技術のIIoTへの導入を積極的に推し進めています。かねてからIIoTを「製造業モデル転換の重要手段」とみなしてきた中国政府は2021年1月、「IIoTイノベーション発展行動計画(2021~23年)」を発表。3カ年で製造業の総合力を顕著に引き上げるという戦略目標を打ち出しました。重点十大産業に対して、5G通信インフラで連結されたスマート製造拠点30~50カ所を立ち上げるよう求め、総合型IIoTプラットフォームも3~5カ所を育成する計画です。

一方、5Gの普及に関しては遅れをとった感がある日本でも、今後のIIoTへの活用をにらんだ取り組みを活発化しています。日本を代表する製造業大手は2020年9月、米国で5Gを用いた産業向けIIoTソリューションの大規模なテストを開始。シリコンバレーの研究施設に専用5Gネットワークを構築し、さまざまな産業を想定した、5GとIIoTによるデジタルトランスフォーメーション(DX)の価値を実証しています。

米国の市場調査会社Reportoceanによると、世界の5G対応IIoT市場は2030年までに約3100億ドルに達し、2020年から2030年にかけては毎年約27%成長。また、5G対応のIIoTデバイスの出荷は、2030年には約1億9000万台に達するとされています。将来的には、特に製造業界でのDXが加速することで「ローカル5G」の導入も本格化すると見られています。ローカル5Gは地域・産業のニーズに応じて企業や自治体などが個別に利用できる5Gネットワークのことで、自らの敷地内など特定エリアで5Gネットワークを構築・運用することができます。

急速な進化を遂げる5Gと、成長を遂げる5G対応IIoT市場。それらが製造業にどのようなパラダイムシフトをもたらすのか? 今後も目が離せません。

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