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トイレのIoT化がもたらす新しい健康管理

世界的に拡大する人工知能(AI)やIoTの波は、“究極の個室”といえるトイレにも押し寄せています。家庭内で日常的に利用されるトイレは、人の行動データや生活状態を定点観測する上で有効だと考えられており、IoT化とセンサ技術を組み合わせることで健康管理に生かす動きが進んでいます。また、コロナ禍で高まる衛生・清潔意識を背景に温水洗浄便座が世界的に普及しており、こうした状況もトイレのIoT化を後押しする可能性があります。

日本のトイレの製造企業では、Wi-Fiモジュールを内蔵したIoTトイレが一部で製品化されています。現状では、スマートフォンと連携し、大・小洗浄の使用履歴を記録したり、使用実態から温水洗浄便座のノズルのメンテナンス時期を通知したりする機能などが実現しています。

センサ技術を応用し、トイレで身体の健康状態を把握

ただし、トイレのIoT化のメリットは広く理解を得られていません。こうした状況を打開しようと、企業はスタートアップなどと連携してIoTトイレの開発を加速させています。

例えば、身体とのタッチポイントである便座に各種センサを設置したり、排泄物の状況を便器が検知できるようにしたりと、さまざまなセンサ技術を駆使し、身体の情報を取得。情報はスマートフォンやパソコンで管理され、摂取すべき栄養素を豊富に含んだ料理のリコメンドや、健康上のアドバイスをすることを目指しています。また、外部パートナーとの共創を通し、定額制(サブスクリプション)の健康管理サービスの提供を視野に入れる企業もあります。起床時や就寝前など、トイレは同じような時間帯に利用する傾向があるため、普段との体調の違いを発見するにはうってつけの場所なのです。

コロナ禍で温水洗浄便座に対する関心が高まったことから、トイレの新設や買替が世界的に進み、IoTトイレの導入につながることも期待されます。今すぐではないにしても、導入に向けたトイレ環境の整備は進みそうです。

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ジャパンプロダクトの代表格である温水便座のグローバルニーズが高まっている

トイレのIoT化には空室可視化や清掃効率化などのメリットも

世界的に見ると、温水洗浄便座の普及率は日本がリードしています。内閣府の消費動向調査によると、2人以上の世帯における普及率は2021年3月で80.3%に達し、1世帯当たりの保有台数も1台以上となっています。一方、欧米やアジアなどでの普及はこれからというのが現状です。例えばヨーロッパでは、浴室とトイレが同じ部屋に設置されていることが多く、別々に分かれている日本とは異なり、コンセントの配置が変わってきます。水漏れと漏電に伴う感電リスクがあるため、コンセントを低い位置に設置することが難しいのです。温水洗浄便座はもちろん、IoTトイレも電源を必要とします。その意味で、IoTトイレは世界に先駆けて日本で普及する可能性が高いと考えることができます。

前述したように、IoTトイレの最大のメリットは健康状態を把握することにあり、便の画像分析や尿成分の解析といったシステムの開発が進んでいますが、それ以外のメリットも存在します。例えば、公共施設のトイレの混雑を緩和するため、センサを駆使して空き状況を可視化するサービスが開発されています。同じくセンサを使って使用頻度や洗浄剤の減りを検知し、汚れ具合をデータ分析した清掃の効率化、水漏れ・詰まりなどの故障の検知と早期修復なども挙げられます。

近い将来、公共施設や家庭では、IoTトイレがスタンダードになる日が訪れるかもしれません。

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