スペースデブリ(宇宙ごみ)対策はなぜ必要か?のメイン画像

スペースデブリ(宇宙ごみ)対策はなぜ必要か?

スペースデブリが宇宙への旅を妨害する可能性も

民間企業による宇宙ロケットの開発、民間人による宇宙旅行が大きな注目を集め、きたるべき宇宙への大航海時代を前に、宇宙に漂うごみ=スペースデブリ対策が世界的課題になっています。米宇宙航空宇宙局(NASA)によると、地球から高度5万km以内に10cm以上のスペースデブリは2万個以上あるといわれています。

スペースデブリの代表例は、ロケットや衛星の爆発破片類、故障ロケット、役目を終えた人工衛星、ロケット上段機、分離放出部品類など。実にさまざまなスペースデブリが地球の周囲を浮遊し、その数は過去20年間で2倍に増加しています。

今年5月には、中国の大型ロケット「長征5号」の残骸が大気圏に再突入し、モルディブ近くのインド洋に落下しました。中国当局は大気圏の再突入時にほとんどの部品が燃え尽きたと発表しましたが、スペースデブリの危険性が世界に広く知られる出来事となりました。

スペースデブリの危険性は、地球に落下して被害が出る可能性があるだけでなく、全地球測位システム(GPS)衛星や通信衛星に衝突し、衛星機能に障害をもたらす可能性も指摘されています。将来的に宇宙旅行時代が現実のものとなり、有人ロケットが次々に打ち上げられようになれば、スペースデブリによるトラブルが頻発されると予測されています。

スペースデブリ(宇宙ごみ)対策はなぜ必要か?のイメージ画像1
誰もが宇宙旅行を楽しめる日に向けて、スペースデブリ対策は喫緊の課題に

さまざまなスペースデブリの除去対策

スペースデブリの除去対策が急務といえる状況下において、肝心のスペースデブリ除去に有効な技術はまだ存在しません。大学や大手メーカー、ベンチャー、スタートアップなどが独自の技術、システムで除去対策に取り組でいるところです。

某国立大学の研究グループでは、長さ1.5mの軽量緩衝ロボットアームを使い、スペースデブリ捕獲ロボットの開発を進めています。スペースデブリ除去衛星に搭載した単眼カメラで軌道上のスペースデブリを撮影し、固有空間上のスペースデブリの姿勢・運動を推定。時系列の姿勢・運動計測値からスペースデブリの姿勢、角速度を推定し、スペースデブリ除去衛星から出したロボットアームで捕獲する仕組みです。捕獲したスペースデブリは導電性テザーと呼ばれる長いひもにぶら下げ、減速しながら軌道から外し、大気圏突入で燃え尽きさせる方法を提案しています。

米国のスタートアップはテザーによるスペースデブリ除去技術の実証試験に成功。スイスのスタートアップはアームを使ったスペースデブリ捕獲の技術実証に取り組んでいます。スペースデブリに特殊レーザーを照射して軌道から外す研究も進んでいます。捕獲に失敗してスペースデブリをさらに増やしてしまうことにならないよう、スペースデブリを確実に捕獲・除去する技術開発が世界的に加速しているのです。

宇宙旅行の実現に向けてスペースデブリ対策は急務

米国の調査会社ノーザン・スカイ・リサーチは、世界の宇宙旅行市場を2020〜30年の累計で79億ドル(約8,800億円)と推定。そのうち6割が地球周回軌道を飛行するオービタル飛行(地球周回飛行)、4割が高度100km程度まで上昇後、地球を周回せず地上に戻る無重力体験のサブオービタル飛行(弾道飛行)と予測しています。宇宙の安全管理の国際ルールは未整備ですが、技術・システム開発に基づくスペースデブリ対策は着々と進んでいます。

ちなみに、無重力体験は1人20~30万ドル(約2,200万~約3,300万円)、宇宙旅行座席1席落札価格2,800万ドル(約31億円)といわれています。誰もがすぐに行ける旅行ではありませんが、宇宙旅行を安心して楽しめるよう、スペースデブリ対策は急務と言えるでしょう。

関連記事