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女性のヘルスケアを支えるフェムテックの今

2兆円規模への拡大が予測されるフェムテック市場

近年、脚光を浴びている“フェムテック”という言葉をご存じでしょうか? 「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語で、女性の健康上の課題をテクノロジーで解決する製品やサービスを意味します。

ライフステージにおいて、女性は月経や妊娠、不妊、産後ケア、更年期、婦人科系疾患といった女性特有の出来事に直面します。それらは女性の働き方やライフステージに大きな影響を及ぼしますが、一方で、女性のヘルスケア面の課題はこれまでメディアなどで大きく取り上げられることはありませんでした。

フェムテックを通して女性の健康課題に取り組むことは、単に女性の快適さや働きやすさを実現するだけにとどまりません。経済産業省の「健康経営における女性の健康の取り組みについて(2019年3月)」によると、月経に伴うパフォーマンスの低下によって、日本では約4,900億円/年の労働損失が引き起こされているといいます。現在、フェムテックを手がける企業はスタートアップを中心に世界中で増えており、日本の市場では2025年に約2兆円規模に達すると予測されています(経済産業省「働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に与える効果と課題に関する調査報告書」)。

スマホアプリを通じて妊活をサポート

フェムテックの中でも比較的知名度が高いサービスとして、月経管理をサポートするスマホ用アプリがあります。その中のひとつは国内で20年以上利用されており、最近では月経日の予測だけでなく、ユーザーの妊娠・避妊希望に応じたサポートも行っています。また、アプリを通じて収集したビッグデータを活用し、大学や自治体と連携して課題解決に取り組む試みも行われています。

ある印刷関連会社は、女性の基礎体温を就寝中に自動で記録するIoTサービスを開発しました。女性の基礎体温は、ホルモンの分泌バランスに応じて低温期と高温期に分かれます。このサイクルを把握するには数ヵ月間、安静時の体温記録を続ける必要がありことから、一部の女性にしか活用されていないのが現状でした。

そこで印刷関連会社が開発したのが、センサーが搭載されたウェアラブルデバイスと専用アプリを組み合わせたIoTサービスです。デバイスを装着して寝ると、起床時に専用アプリで基礎体温を確認できるため、手間をかけずに基礎体温を測定することができます。このサービスは自治体の事業にも導入され、妊娠を希望する市民に無料貸し出しするなど、市民の出産サポートに役立てられています。

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就寝中に基礎体温を記録するIoTサービスも開発されている

女性特有の疾患をテクノロジーで緩和

そのほかにも、フェムテックは女性特有のさまざまな疾患に対応した製品・サービスを提供しています。

例えば、生理痛は女性を悩ます症状のひとつです。ある日用品メーカーの調査によると、女性の7割が生理痛に悩んでおり、生理痛のレベルが「重い」「やや重い」と回答した割合を世代別に見ると、10~30代はいずれも7割超、40代は6割超、50代は5割超だったといいます。生理休暇を設けている企業は多くありますが、女性にとっては取得しづらいのが実情ではないでしょうか。海外のある企業では生理痛を感じにくくするウェアラブルデバイスを開発しており、神経に電気信号を流すことで痛みをやわらげる効果があるといいます。

また、モバイル型の胎児モニターを開発したベンチャー企業も存在します。コードレスのデバイスで胎児の心拍を確認し、クラウドを通じてリアルタイムで医師とデータ共有することができます。オンラインでの妊婦検診が可能となり、コロナ禍でのニーズ増加が期待されています。

女性に多い疾患のひとつが乳がんです。既存の検査方法にはX線検査やエコー検査がありますが、被爆のリスクや痛みなど、受診者に負担がかかるケースもあります。そこで、あるベンチャー企業はベッド型の検査装置を開発。受診者がベッドの上でうつ伏せになり、ベッドの穴に乳房を入れるだけで超音波検査ができるもので、受診者の負担を軽減することが可能になりました。

このように、フェムテックではさまざまな製品・サービスの開発が進んでいます。情報管理や製品・サービスの安全性、社会の意識改革なども含めて発展途上の市場ではありますが、女性のヘルスケアをサポートする新たな製品・サービスには大きな期待が寄せられています。

村田製作所の開発する『疲労ストレス計』は非侵襲で自律神経の状態をリアルタイムで計測できます。 医師監修の評価基準で、製薬・健康食品業界のさまざまな企業で導入されています。

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