ロボットのエミッション対策手法-3(3/4)
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4. 模擬ロボットのエミッション対策(放射ノイズ)
ロボットのエミッション対策の2つ目の事例として、30MHz~1GHzで評価する放射ノイズの対策事例を紹介します。このパートでは、(1)ブラシモータのノイズ事例と、(2)ブラシレスモータのノイズ事例の2事例を取り上げます。
5.(1)ブラシモータのノイズ事例
5-1.(事例)ブラシ内蔵DCモータで駆動するAGVの放射ノイズ評価
ブラシモータの放射ノイズ事例として、ブラシ内蔵DCモータで駆動するAGV(Automated Guided Vehicle)の放射ノイズを調べました。
今回の調査では、電波暗室床面に磁気テープを円状に貼り付け、その磁気テープ上をAGVが周回する動作をさせてノイズを測定しました。
AGVはブラシ内蔵DCモータで駆動しています。
- AGVは、円状の磁気テープ上を周回させた。
- CISPR11の測定環境を参考し、実使用環境を想定した機器配置にて放射ノイズを評価した。
ノイズ対策前の放射ノイズを調べました。
30MHz~1GHzの広い周波数帯で、ノイズスペクトラムが観測されました。
また、一部ではノイズ許容値を上回るノイズスペクトラムが観測されました。
- 広い周波数帯で針状のノイズスペクトラムを観測。
5-2. 放射アンテナの調査(ノイズの切り分け)
市販ロボットの調査と同様に放射ノイズの発生メカニズムを調査しました。
ここでは、放射アンテナ調査を抜き出して示しています。
- ノイズ源:ブラシDCモータの放電ノイズ
- 経路:モータの放電ノイズがケーブルに伝導
- 放射アンテナ:制御基板とモータを接続するケーブル
- フェライトコアにより、放射ノイズレベルが低減。
フェライトコアを、モータと制御基板を接続するケーブルに1つ装着すると、全周波数帯で放射ノイズのスペクトラムが低減しました。これより、ノイズ源、伝導経路、放射アンテナは下図の①~④のようになっていると考えられます。
ブラシモータが動作するとブラシノイズが発生します。このブラシノイズは、ブラシモータの動作原理から必ず発生するノイズです。このブラシノイズが、②で示したケーブルに伝導します。ここで、ロボットに使用されるケーブルは、ビニル被覆ケーブルが大半であり、シールド付きケーブルは滅多に使用されません。つまり、ビニル被覆ケーブルにノイズが伝導すると、そのノイズは空間に放射されることになります。
先に示した、放射アンテナの調査について説明します。モータと制御基板を接続しているケーブル(②で示したケーブル)にフェライトコアを装着すると、モータから発生したブラシノイズはフェライトコアに阻止されてケーブルに流れ込みにくくなります(※フェライトコアで、ケーブルのインピーダンスが大きくなるため、ノイズが伝導しにくい)。
②のケーブルにノイズが伝導しにくいため、ケーブルから放射するノイズが低減します。
この事例では、ノイズ源がブラシモータのブラシノイズで、放射アンテナは②で示したケーブルでした。
5-3. ブラシノイズの対策事例
ブラシノイズをフィルタで対策する事例を紹介します。
本事例では、コモンモードチョークコイル(PLT10HH)と、Xコンデンサ(0.1uF)を用いました。
このフィルタ構成で対策した前後のノイズを調べました。
フィルタを挿入することで、全周波数帯でノイズスペクトラムを低減できています。
また、ノイズ許容値も満足することができ、少ない部品点数で効果的に放射ノイズが抑制できました。
- モータで発生した(ブラシ)ノイズをケーブルに伝導させない。
- 放射ノイズが大幅に低減。
5-4. ブラシモータの放射ノイズ対策のまとめ
コモンモードチョークコイル(PLT10HH401100PN)
- 続けて読む:ロボットのエミッション対策手法-4(4/4)