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3端子コンデンサ貫通接続によるノイズ対策

1. はじめに

近年のIC駆動周波数の高速化や自動車の電装化等にともなって、ますますノイズ対策の重要性は増しています。 
ここでは、放射エミッションノイズ、伝導イミュニティ対策として、3端子コンデンサを貫通接続した際のノイズ低減効果についてご紹介します。

貫通接続、非貫通接続に関してはこちら 
ノイズ対策の基礎【第11回】チップ三端子コンデンサの使用上の注意 | 村田製作所 技術記事(murata.com)

2. 放射エミッションノイズ対策

近年、回路の小型化需要からDC/DCコンバータのスイッチング周波数が高くなっており、その高調波成分も高い周波数まで存在する傾向にあります。
そして、IC内や基板に存在する寄生インダクタンスや浮遊容量などと共振し高周波に高いレベルのノイズエネルギーを発生させます。
その対策として、DC/DCコンバータの出力ライン、または、入力ラインに低ESLを特徴とした3端子コンデンサを使用した事例をご紹介します。

DC/DCコンバータ出力ラインに3端子コンデンサ貫通接続(民生品の例)

DC/DCコンバータ出力部に一般的な2端子コンデンサと低ESLが特徴の3端子コンデンサを乗せ換えてノイズ低減効果を比較しました。
まず、2つの挿入損失の周波数特性を示します。10MHz以上の領域で3端子コンデンサの方が約20dBフィルタ効果が優れていることが分かります。
また、DC/DC出力電圧リプル波形には、下図のように急峻なスパイクノイズが重畳していることがあります。
ここで、2端子コンデンサから3端子コンデンサへ置き換えることで、このスパイクノイズのレベルを半減できていることが分かります。

挿入損失周波数特性
挿入損失周波数特性のグラフ
DC/DC出力電圧波形
DC/DC出力電圧波形のグラフ

続いて、放射エミッションノイズレベル測定結果を示します(CISPR32/3m)。
低ESLの3端子コンデンサを使用することで、2端子コンデンサと比べて15dB以上もノイズが低減することが確認できました。

2端子コンデンサと3端子コンデンサの比較
2端子コンデンサと3端子コンデンサの比較
放射エミッションノイズレベル(CISPR32 3m)
放射エミッションノイズレベル(CISPR32 3m)のグラフ

DC/DCコンバータ入力ラインに3端子コンデンサ貫通接続(車載機器の例)

DC/DCコンバータは、出力ラインだけでなく、入力ラインにも大きなノイズが発生します。
車載機器で使われているDC/DCコンバータの入力部に、「フィルタなし」「π型フィルタ」「3端子コンデンサ」の3つパターンのフィルタを配置し、放射エミッションノイズを比較しました。
結果から分かるように、3端子コンデンサ1素子でπ型フィルタ(3素子)と同等のノイズ低減効果を発揮しており、部品点数低減にも繋がります。

π型フィルタと3端子コンデンサの比較
π型フィルタと3端子コンデンサの比較
放射エミッションノイズレベル(CISPR25 ALSE法)
放射エミッションノイズレベル(CISPR25 ALSE法)のグラフ

3. 伝導イミュニティ対策

放射エミッションノイズだけでなく、伝導イミュニティにも効果を発揮した事例をご紹介します。
半導体のイミュニティ評価試験であるDPI法試験において、MCUの電源ラインに3端子コンデンサ(貫通接続)を使用して、その効果を確認しました。
3端子コンデンサがないときはNG(異常動作)となっていたものが、3端子コンデンサを使用することでOK(正常動作)に改善しました。

DPI試験条件
DPI試験条件のイメージ画像
DPI試験結果
DPI試験結果の表

4. さいごに

低ESLを特徴とした3端子コンデンサ(貫通接続)によるノイズ低減効果を紹介しました。
今回は、DC/DCコンバータの放射エミッションや伝導イミュニティ試験の結果をご紹介しましたが、その他にも伝導エミッションや電子機器内の自家中毒対策にも利用できます。
回路に3端子コンデンサを追加するのはもちろん、現行使われている2端子コンデンサやフィルタの置き換えとしても使用できます。
ノイズ対策のソリューションの一つとして、3端子コンデンサの使用をご検討下さい。

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