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今だからできる、製造業のIoT(IIoT)のスモールスタートやスケールアップのためのソリューション選び

工場の規模を問わない、製造業のIoT(IIoT)導入の目的と課題

インダストリー4.0(第4次産業革命)をドイツ政府が2011年に発表(翌2012年に承認)*1し、2016年には日本政府が第5期科学技術基本計画においてSociety 5.0を初めて提唱*2するなど、各国でDX化が推し進められてきました。製造業におけるモノのインターネット=IoT(以下、IIoT:Industrial Internet of Things)という言葉が流布・定着して久しい昨今、インダストリー5.0(第5次産業革命)に関する議論も盛んになりました。こうした背景からIIoTのコンセプトがモノ中心から人間中心にシフトしつつある中、より高度なUX(ユーザーエクスペリエンス)を目指したソリューションやユースケースも多数登場しています。

いずれも、データの収集とそれを活用した生産や稼働状況の監視や管理、傾向分析、予知保全、改善課題の抽出など、業務の効率化や生産性向上という目的において有効な手段であることは間違いありません。一方で、企業や工場の規模を問わず、すべての工程においてIIoT導入における最適解を見つけることが容易であるとは限りません。

その理由として、たとえば、工程や工程間の性質によっては、第3次産業革命において代表的な変化といえるFA(ファクトリーオートメーション)化と、それによるインラインでのデータ収集が難しいケースなどが挙げられます。それゆえ、第4次産業革命を象徴するIIoTを活用したスマートファクトリー化は容易ではないと考えてしまっても不思議ではありません。

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FA化が難しい工程では、IIoTの導入が困難というイメージを持たれることも。

ここでは、IIoT導入における悩みやボトルネック、多種多様なソリューションやサービスが出揃った今だからこそ、従来の悩みや課題を解決したスマートなIIoT導入の選び方やコツなどを紹介します。

*1 出典:総務省「平成30年度版 情報通信白書」

*2 出典:内閣府「第5期科学技術基本計画(平成28~平成32年度)」、「Society 5.0」

IIoT導入における悩みやボトルネックの例

以下では、IIoT導入における悩みやボトルネックとして、人が関与する工程/DX人材の確保/環境や条件との親和性/選択肢の多さ、コストや効果などへの不安といったことが挙げられます。以下では、これらに関する代表的な例を紹介します。

人が関与する工程

工程の一部にどうしても人による機械操作や工具の使用、手作業などが必要だったり、工程間のワーク移動や検査を人がオフラインで行わなければならなかったりする場合があります。また、製品によっては現在の技術では自働化そのものが難しく、ほとんどの工程において人による繊細な作業が不可欠というケースもあります。

こうしたケースでは、データの取得と状況の可視化や分析による稼働時間の管理や課題抽出、改善などが困難であるため、IIoTの導入に踏み切りにくい理由となることが少なくありません。

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人が関与する工程では、特にIIoT導入によるデータ取得の難易度が高いと考えられがち。

DX人材の確保

工場にIIoTデバイスやデータを伝送・蓄積するためのシステムを目的通りにかつ安定的に運用できるよう構築したり、取得したデータを活用して可視化・分析したりすることで業務改善に役立てるには、ICTに関する知識やノウハウが必要です。しかし、製造現場では、こうした知識やノウハウを持ったDX人材の確保がボトルネックとなる場合も少なくありません。また、実際にIIoTソリューションを導入したものの、それで得たデータから所望する結果が得られていないというケースもあります。専門知識を持った人物によるサポートがないという不安が、導入へのハードルとなっている工場も少なくないでしょう。

環境や条件との親和性

IIoTの導入にあたっては、各工程の自働化はもちろんそれを制御・管理するためのネットワークシステムが求められる場合がほとんどです。工場の規模に関わらず、ネットワークへの接続やデータの入出力ができない機械・設備を使用する工程が存在したり、人による作業が多くの割合を占めたりしている場合などは、ネットワークシステムが不完全、または構築されていないことがあります。

また、ネットワークシステムが構築されていたとしても、センサ類など各種IIoTデバイスへの電力供給や有線通信による配線の煩雑化による段取り替え・品種替え時の工数増加の懸念、無線通信における電波干渉などさまざまな要因がIIoTを導入する際の悩みの種となることがあります。

さらに、ネットワークのセキュリティ面でも、顧客企業とのセキュリティ契約や自社のルールによっては、第三者が運営するクラウドサービスの利用が制限または限定されている場合もあるでしょう。

選択肢の多さ、コストや効果などへの不安

多種多様なIIoTのソリューションやサービスが多数販売されている昨今、裏を返せばどれが自社の工場に適しているのかが分かりにくい状況ともいえます。

初期導入コストだけでなくクラウドサービスの利用料などのランニングコストや、現場や工程にフィットし上手く運用・活用できるかなどの不安もIIoTの導入を難しくしている要因として無視できません。

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自社の環境・条件に対して、効果やコストに見合ったIIoTソリューションを見つける難しさも。

スモールスタートでのIIoTの導入や補完が可能な時代に

前述の通り、IIoTの概念が市場に定着している現在、多種多様なIIoTのデバイスやソリューション、サービスが販売されており、その中から最適なものを選択して導入することが可能です。従来は難易度が高いと思われてきた工程に対しても、「スモールスタート」でIIoTを導入したり、部分的に導入できていなかった箇所を補完できたりするためのソリューションも登場しています。

スモールスタートとは、文字通り小さい規模から導入を始めることで、特定の工程または機械・設備から運用を開始することができます。そのため、大規模なシステムでは難易度が高かった、意図した通りの結果が得られるかどうかを実証する「PoC(Proof of Concept:概念実証)」を実施しやすいことも大きなメリットです。ほかにも、大規模一斉導入による膨大な初期コストや、適合の是非、成果以上のランニングコストの発生といったリスクを最小限に抑え、小さな規模からIIoTに関する知識や経験、ノウハウを積み上げていくことができます。

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特定の工程または機械・装置を対象にIIoTのスモールスタートを実施することで、PoC(概念実証)を容易化。

また、こうしたソリューションは、工場の大部分にIIoTを導入しているものの、人が行う作業などデータ化・可視化ができていなかった特定の工程に対しIIoTソリューションを導入してスケールアップを図ることで、不足していたデータを補うことも可能です。

IIoTのスモールスタートやスケールアップにおけるソリューション選びの方法やコツ

以下では、従来のIIoT導入における課題をクリアし、スモールスタートや不足箇所の補完によるスケールアップを可能とするソリューションの選び方や導入のコツを紹介します。

工程を自働化しないまま、データを取得する

従来はFAのインラインにセンサなどのIIoTデバイスを導入して、データを取得・蓄積し、監視や可視化、分析を行うことが一般的でした。しかし、現在は人が関与するオフライン工程であっても後付けのデバイスを導入してスムーズにデータを取得し、活用する手段もあります。

たとえば、ある工程や動作ごとに作業者がボタンを押したり、小さなデバイスを動かしたりなどの簡単かつ直感的な操作、またはタブレット端末の簡単な操作だけで、稼働時間や進捗状況をデータ化して3M(ムリ・ムダ・ムラ)の抽出と改善が行えるソリューションであれば、DX化が容易です。このように作業者への負担やタクトタイムへの影響を最小限に抑えることができるIIoTソリューションを選ぶことが大切です。

導入から運用まで専門的なサポートが用意されている

製造現場においては、専門知識を持ったDX人材の確保も重要な課題です。IIoT機器の購入やそれで得たデータから分析を行うためのソフトウェアの購入または利用契約だけでは、狙い通りの運用やデータ活用ができない場合があります。

スモールスタートとはいえ、初期投資やランニングコストを無駄にしないよう、専門的な知識を持ったスタッフから導入前の親身なコンサルティングや導入後のサポートを受けることができるIIoTソリューションを選ぶことが重要です。

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IIoTの導入でデータを取得・可視化し、管理や改善に活用するまでのトライアルやサポートが重要。

無線デバイスで配線の煩雑化を回避

センサなどのIIoTデバイス用の電源供給や通信ケーブルによる配線の煩雑化を考慮すると、設置や段取り替え、品種替え時の工数増加などが、導入のハードルとなる場合があります。

そこで、選択肢に入れたいのが無線通信に対応した各種センサなどのIIoTデバイスです。こうしたデバイスは充電式かつ電池寿命が長いものもあるため、電源ケーブルの配線も不要となります。また、設備が稼働した状態でも簡単に後付けで設置できる各種無線センサもあります。

ただし、無線通信可能なIIoTデバイスであっても、多くの機械・設備など障害物が多い工場では通信が不安定になってしまう場合があります。このような環境で安定した通信と運用を求める場合、障害物に強いSubGHz帯での通信が可能なものを選ぶことで問題を解決できる可能性があります。この通信方式は、電力消費量が少ないため無線デバイスの電池の長寿命化も図ることができ、まさに一石二鳥といえます。

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無線通信を活用して配線の煩雑化を回避。現場によって通信帯域やデバイスの充電サイクルなど運用性にも注目。

目的や環境に合った内容・コストでのスモールスタート

IIoTのスモールスタートにおいては、各種センサなどのデバイスだけでなく、ゲートウェイやソフトウェア、オンプレミス(自社環境)またはランニングコストがかかるクラウドサービスなどを組み合わせ、自社で独自に構築することは難易度が高いといえるでしょう。また、機械・装置をセンシングして監視するのか、作業の稼働時間をデータ化するのかなど、目的によっても構築すべきシステムの要件が大きく異なります。

IIoTデバイスだけでなく、自社のPCにインストールするだけでデータを可視化したり、簡単な操作で目的に合った設定ができたりするソフトウェアが付属しているものなど、目的や環境に適合させやすいソリューションを選択することで、スモールスタートがより容易になります。

また、目的や環境に合っているかどうかを確認するために、本格導入前のトライアルが可能かどうかも重要な選択基準であるといえます。実際にPoCを実施した上での導入であれば、コストを無駄にすることはありません。

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IIoTソリューションの導入には、専門的なコンサルティングやサポート、トライアルなどの有無も要確認。

まとめ:IIoTソリューションの選定ポイント

ここまでさまざまな理由でIIoTの導入に踏み切れていなかったり、部分的に導入できていなかったりする工場の悩みやボトルネック、そして、IIoTをスモールスタートするためのソリューションの選び方やそのコツなどについて説明してきました。最後に、IIoTのスモールスタートや補完を成功に導くためのチェックポイントを以下にまとめます。

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ポイントを整理することで、導入・運用しやすいソリューションを絞り込むことが可能。

人が関与する工程との親和性

IIoTを導入して作業者の稼働時間などのデータを取得して分析する場合、簡単な設定・操作で作業者や管理者の負担にならず、タクトタイムへの影響を最小限に留めることができるIIoTデバイスかどうか。

サポートやトライアルの有無

導入前から実際の製造現場での運用まで、専門的なサポートを受けることができるかどうか。また、本格導入前にトライアルの実施が可能かどうか。

無線通信と電池寿命

IIoTデバイスの電源ケーブルや通信ケーブルによる設備の煩雑化を避けることができるかどうか。また、障害物など通信電波を妨げる要因がある現場では、SubGHz帯での安定通信と省電力による電池寿命の長さに注目してみる。

導入の容易さやサポート体制

各種センサなどのIIoTデバイスや取得したデータを可視化・分析するためのソフトウェアなど、供給元メーカーの専門的なサポートのもと、コストを含め自社に合ったセットアップをスムーズに導入し運用できるかどうか。

村田製作所では、各種センサや無線通信デバイスなどの開発・製造技術に加え、複数の自社工場で実施した業務の効率化や生産性向上で得た多くの経験やノウハウを活かし、IIoTソリューションを提供しています。

さまざまな製造現場におけるIIoTのスモールスタートやスケールアップに適したソリューション、そして導入前後のサポート体制やトライアルなどサービス面を充実。工場や工程の規模を問わず、安心してご相談いただけます。

各種IIoTソリューションの概要や導入手順などは、下のリンクからご覧いただけます。

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