IIoT×アフターコロナ:コロナがもたらす生産現場の変化を探るのメイン画像

IIoT×アフターコロナ:コロナがもたらす生産現場の変化を探る

ニューノーマルで注目を集める「非接触」と「3密回避」

新型コロナウイルスの影響は、IIoT(Industrial Internet of Things)機器を含む産業機器市場全般に及んでいます。イギリスの調査会社オムディアによると、“世界の工場”と称される中国の産業用オートメーション市場の年平均成長率は2018年が7%でしたが、2019年は自動車市場、電機・電子市場の低迷から2%に落ち込んでいます。中国経済は世界でもいち早くコロナ禍から回復したにもかかわらず、主力ユーザーの減速、サプライチェーンの混乱などの影響を受け、今後も2020年2%、2021年2.7%の水準で推移すると予想されています。

一方で、コロナ禍が逆に好機になる可能性も指摘されています。工場での稼働率が落ち込んだり、労働者の確保が難しくなったりすると、労働力に依存しにくい生産体制への移行を促し、従来以上にIIoTネットワークや人工知能(AI)を活用するスマート工場の需要が高まることです。その際、キーワードになるのが「非接触」「3密回避」です。

コロナ禍を機に、IIoTがもたらす「非接触」の注目度は日に日に増しています。個人端末からのシステム制御、音声・ジェスチャーによる制御、非接触スイッチなどがクローズアップされています。また、「3密」を察知して回避するために、湿度や温度、CO2濃度、人感などのセンサーを1つのパッケージにして、そこから各種データを取得する技術なども登場しています。さらに、将来のニューノーマル時代に向けて、制御の自動最適化を図って「スイッチに触らなくても済む」技術の開発も進んでいます。

市場調査会社グローバルインフォメーションのレポートによると、世界のプロセス自動化および計測の市場規模は、2020年の674億ドルから2025年には768億ドルに増え、5年で100億ドル以上の成長が見込まれています。この市場の成長は、今後のIIoTの普及、エネルギー効率・コスト削減のニーズ、あるいは脱炭素社会機運の高まりなどによってさらに推進されるでしょう。

IIoT×アフターコロナ:コロナがもたらす生産現場の変化を探るのイメージ画像1

工場における無人搬送車に普及の兆し

非接触、3密回避の流れの一環として、生産工場領域や物流領域において無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)の普及が進んでいます。IoTタグを実装したAGVは、工場内に設置されたIoTルーターから電波を受信することで自動走行を可能とする搬送車で、中でもNFN(ナチュラルフィーチャ・ナビゲーション)方式が注目を集めています。これは光による検知・測距技術などを使って搬送車周囲の2Dマップを作成し、自己の位置を推定しながら走行するタイプです。

AGVは自動走行の方式で4世代に分けられます。磁気テープを使った第1世代、QRコードを使った第2世代、反射板を使った第3世代、そして前述したNFN方式の第4世代です。第1~3世代のAGVは、事前に床や壁に誘導体を設置する必要があり、導入のために製造工程のレイアウト変更が必要となるなどの課題がありました。一方、周囲の2Dマップ作製と自己の位置推定を同時に行うNFN方式では、既存設備の変更が不要などの長所があり、普及拡大につながりました。

ところで、欧米のAGV市場では、第2世代以降の導入率が約50%であるのに対し、日本では約10%にとどまっているといわれます。日本でAGVやAGF(無人フォークリフト)の普及が欧米より遅い理由としては、製造業などにおいて優秀な運転技術者が多いことなどが挙げられています。しかし、今回のコロナ禍による大規模な巣ごもり需要で、日本でも飛躍的にEC(電子商取引)利用が拡大しました。ニューノーマルの時代になってもこうした傾向は続き、いずれは物流倉庫での人手不足が深刻化すると予想され、物流市場でAGV・AGFの普及が急速に進むとみられています。

コロナ禍によって、企業における働き方は大きな変化に直面しました。ネットワークの活用による在宅勤務が拡大したように、製造業などの生産現場や物流でも、コロナ禍をイノベーションのきっかけにしようという動きが見られます。今後、IIoTをどのように業務効率化に活用していくかが焦点になるでしょう。

関連リンク

関連記事