リードタイプ積層セラミックコンデンサ(キャパシタ)おすすめシリーズ
電子部品のチカラで化石燃料からの脱却を支える
温暖化対策でにわかに脚光を浴びるようになった技術がいくつかあります。太陽光/風力発電や電気自動車(EV)、パワー半導体、燃料電池などはその代表でしょう。こうした技術の中で、かねてから重要で広く利用されてはいたのですが、近年、その重要性が段違いに高まっている電気コンポーネントがバッテリです(図1)。
バッテリは、古くはおもちゃや懐中電灯などに、現在はノートPCやスマートフォンといった携帯機器に欠かせない動力源でした。ところが、これまで化石燃料を燃やして利用していた機器・設備が電化されるようになり、再生可能エネルギーの活用が促進されていく中で、バッテリの新たな利用シーンが急拡大。これまで以上に高性能・高信頼・安全なバッテリの登場が渇望されるようになりました。
たとえば、EVや電動の船、飛行機のような、パワフルなエンジンを動力源/熱源として利用してきたモビリティを電化する場合には、極めて高度なバッテリが求められます。連続使用時間を長くするための大容量化、小電力から大電力まで迅速に充放電可能にするための高入出力化、充放電を繰り返しても長期間にわたって劣化しない長サイクル寿命化、さまざまな温度・振動・衝撃などの下でも利用可能にする安全性向上などといった高度な要求をすべてクリアする必要があるのです。
ところが、こうしたEVのような新たなシーンで利用するバッテリであっても、基本的な構造や使われている材料は、スマートフォンで利用されている従来のバッテリと大差がありません。容量、出力、寿命など多角的見地から最も使い勝手のよいバッテリである、リチウムイオン二次電池が大きな改良をすることなく使われているのです。
リチウムイオン二次電池のセル(電池の最小構成単位)1個あたりの動作電圧は、満充電では約4V、放電した場合で約2V。スマートフォン向けも動作電圧は同等です。また、1個のセルで実現する容量も、最新EVに搭載されているものは約2 6Ah。スマートフォン向けの容量は約3Ahなので、確かに多少大きいのですが、EVのような重たい機械を動かすにしては小さなものだと言えます。
実際には、EVのモータは400V~800Vという高電圧電力で駆動しており、実用的な航続距離を得るために搭載すべきバッテリの容量は50kWh以上と大きなものです。1000個以上のセルを組み合わせて直列・並列に並べることで、EV向けバッテリの仕様を実現しているのです。一定数のセルを組み合わせて高電圧・大容量化したバッテリをモジュール、さらにそれを複数個まとめたものをパックと呼んでいます。
小さなセルを組み合わせて大きなバッテリを作るこうした方法を採用するためには、ある課題を解決しておく必要があります。
一般に、セルごとの容量や入出力といった特性は、材料や製造のバラつきに由来する個体差があります。そして、充放電を繰り返していくと、充放電など環境から受けるストレスに対する強さにも個体差があるため、セルごとの個体差は大きくなる傾向があるのです。こうした個体差は、数多くのセルで構成されるモジュールやパック全体の寿命や出力などの特性に大きな影響を及ぼします。モジュールやパックの特性が、使われているセルのうちの、性能とストレス耐性が最も劣るセルの特性に準じてしまうからです。一般に、個々のセルを取り巻く環境の温度や充放電時の電圧・電流にブレ(「ストレス・ストレングス」と呼びます)があるため、耐性の低いセルほど劣化の度合いが高くなります。特に、過充(放)電や過熱、内部ショート(短絡)による容量低下や電源失陥などが起きると車両の制御や走行が不能となり事故につながる可能性さえあります。
こうした背景から、複数のセルを組み合わせて構成したモジュールやパックをより長期にわたって性能を維持し、安全に利用するためには、1つひとつのセルの劣化を最小限に抑えることができる動作環境を整えておく必要があります。こうした目的に向けて、各セルの動作と状態を細かく監視・制御する役割を担っている制御システムが、バッテリ管理システム(Battery Management System:BMS)です。
BMS中では、各セルの動作と状態を、高精度かつ高分解能で常時監視しています。セルの動作・状態の監視には、電圧・電流・温度・漏電などを検知するセンサを利用します。そして、セルやモジュール単位でのわずかな不整合やバランスずれを補償できるように充放電を制御し、特性がなるべく均一になるようにバランスを保ちます。これによって、モジュールやパックとしての動作寿命と性能の最大化、安全性の確保を実現します(図2)。
そして、マイコン中のソフトウェア制御により、電池の仕様や設計から決まる使用範囲と収集したデータを照らし合わせ、(1)セルの劣化を引き起こし安全性を損なう過充電・過放電を防止するための充放電制御、(2)危険な過電流を防止する充放電制御、(3)安全かつ円滑な動作を可能にする温度の管理、(4)電池残量(SOC)の算出、(5)航続距離と寿命を最大化するためのセル電圧の均等化(セルバランシングと呼びます)などを行います。さらに、過充電や過熱などの異常を検知した場合には、他の車載システムにアラートを発信したり、出力電力を切り離す機能を持つ制御回路に知らせたりすることで、事故の発生を未然に防ぎます。
BMSの重要機能であるセルバランシング技術には2つの方式があります。1つは、放電スイッチを使って、電圧の高いセルを強制放電させて、電圧が低いセルとの差分容量を熱に変えて、電圧を均等化するパッシブ方式。もう1つは、隣接する容量・電圧バランスが崩れたセル間で電流をやり取りしてセルの充電状態を均等化させるアクティブ方式です。バッテリの潜在能力を余さず使い切るには、アクティブ方式を使う必要があります。
BMSの性能は、組み込まれている制御機能の多様さや精度で決まります。ただし、その実現は、セルの動作や状態を検知するセンサとBMSの回路中に使われている多くの電子部品の精度が高いことが大前提です(図3)。また、多数のセルを監視することになることから、BMSの回路構成自体が複雑化しており、より小型・軽量のセンサや部品が求められます。
これまでのBMSでは、各セルの動作や状態を、センサで収集したデータをあらかじめ入力されたルール・制御範囲に照らし合わせながら推測していました。今では、人工知能(AI)に電池の電気化学的な現象の傾向を学習させてより高い精度で推測する技術の導入が検討されています。「AI BMS」と呼ばれる技術の活用で、急速充電中のセル性能の推測やセル劣化の早期発見が可能になるのではと期待されています。
また、近年、モジュール間およびBMSとの間をつなぐ制御ラインを無線化する、ワイヤレスBMS(wBMS)の導入に注目が集まっています。モジュール間をまたがるケーブルの数を削減できるため、重量が低減し、アクセスし難い場所との配線も容易になります。EV向けBMSに適用した場合、1台あたり約10m分のケーブルと有線接続に付随するコネクタやトランスなどを削減できるそうです。さらに、空いたスペースにセルを搭載して、バッテリ容量を増やすことも可能になります。ただし、有線接続に比べれば、信号の伝送路の環境が不安定で故障のリスクが高まります。
すでに、EVや大型エネルギー蓄積システム(ESS)にwBMSを適用する動きが出てきています。wBMSの実現には、高信頼かつ低遅延の無線技術の適用が必須です。無線ICを開発する半導体メーカーが独自規格の無線技術の使用を提案している場合が多いのですが、それらの多くには2.4GHzのISMバンド無線が使われています。EVやESSのバッテリ中に、小型で信頼性の高い無線モジュールが多数利用されることになりそうです。無線モジュールの進化に伴って、wBMSを適用可能なアプリケーションがさらに拡大していくことでしょう。