統合型再エネ制御ソリューションefinnos
電子部品のチカラで化石燃料からの脱却を支える
太陽光や風力といった再生可能エネルギーの有効活用は、カーボンニュートラル達成に向けて必要不可欠となる要素です。英エネルギー研究所が発行した報告書「Statistical Review World Energy 2023」によると、世界中の電源に占める水力も含めた再生可能エネルギーの割合はすでに約3割であり、その総量8,539TWhは1985年時点での2,058TWhに比べて4倍以上に伸びたのだそうです。
再生可能エネルギーを本格的に活用する方法と言えば、砂漠や草原のような広大な場所で行う太陽光発電や海上での風力発電など、自然エネルギーに満ちた場所での大規模発電を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、たとえどんな大都会の真ん中であっても、何らかの再生可能エネルギーが存在します。実際、都市部での再生可能エネルギーによる発電を導入する取り組みが積極的に進められています。例えば日本では、発電量は少なく補助的電源という位置づけながらも、ビルの屋上や住宅の屋根の上に太陽光パネルが設置して有効活用されています。また、新たな取り組みとして、ビルの壁や窓での太陽光発電技術や、人が歩くことで発生する振動で発電する技術の開発と導入も進められるようになってきました。
世界的視野から見れば、地元で消費する電力を、その地場の風力・太陽光・水力などを活用して賄う、“地産地消”を目指して取り組んでいる中小都市が多くあります。さらに、企業が自らの事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的イニシアティブ「RE100」に参加する企業も増えてきました。これらの企業では、少しでも多くの電力を自社発電すべく、工場などに発電設備を積極的に導入しています(図1)。
再生可能エネルギーを電力に変えて地産地消する取り組みは、きわめて有効なエネルギー活用の手段だと言えます。電力システムで必ず発生する送配電時の電力損失を最小化できるからです。
現在の電力システムでは、電力を大量消費する都市から遠く離れたところに大規模発電所を置き、発電した電力を消費地まで送配電して、生活や社会経済活動に活用しています。ところが、発電所で生み出された電力は、送配電網(グリッドとも呼ばれます)を経由して利用されるまでの過程で、約3割の電力が無駄に損失しています。送電線や、電力変換器の負荷によって、熱もしくは電磁波となって散逸してしまう電力が大量にあるからです。送配電の距離が短くなるほど、電力変換の回数が少なくなり、電力損失を少なくできます。このため、身の回りにある自然エネルギーを分散型電源として利用して地産地消ができれば、電力損失の発生を最小限に抑えることができるわけです。
出典:経済産業省 地域社会における持続的な再エネ導入に関する情報連絡会 第4回 資料
電力の地産地消を目指した小規模電力ネットワークを「マイクログリッド」と呼びます(図2)。マイクログリッドは、再生可能エネルギーを有効活用する以外にも、分散型の電力システムだからこそのメリットがあります。例えば、災害などの非常時に大規模停電が発生するような場合にも、地域に安定的に電力を供給することが可能であり、生活や事業活動を維持できます。
マイクログリッドのコンセプトは単純ですが、その実現はそれほど簡単ではありません。電力システムの構築・運用には、「同時同量の原則」と呼ぶ大原則があるからです。
同時同量の原則とは、どのような電力システムであっても、発電所からの電力の供給量と需要量を常に一致させなければならないという決まりごとです。もしもこの原則を破って電力システムを運用してしまうと、電力の電圧が不安定になったり、設備が故障して大規模停電の発生につながったりします。
ところが、太陽光のような再生可能エネルギーに由来する電力は、不安定な自然現象から作り出すことから、発電量を都合よく調整できません。このため、地域で発電する電力のみでは、利用する電力を賄うことや、使い切ることは困難です。そこで、地域間で需要と供給のバランスをキメ細かく調整するような高度な運用・管理や、大型エネルギー蓄積システム(Energy Storage System:ESS)を活用して過不足分を融通する仕組みが必須になります。
こうした課題を解決する手段が、マイクログリッドとよく似た概念である「スマートグリッド」です。スマートグリッドとは、各家庭や事業所など個々の電力需要を、スマートメータなど情報通信機器を活用してリアルタイムで見える化し、必要な電力を過不足なく供給できるように自動制御する仕組みです。
マイクログリッドとスマートグリッドはそれぞれ別の概念ではありますが、実際にはスマートグリッドの仕組みを導入しないと、効果的で効率的な電力の地産地消を実現するマイクログリッドを実現することが困難です。スマートグリッドでは、分散配置された再生可能エネルギーの発電施設での発電量と、生活や事業で消費する電力量をリアルタイムでキメ細かく把握し、分散配置した複数台のESSの充放電を管理しながら両者のバランスを取ります。設置したESSでの充放電の許容値だけでは足りない場合には、広域のグリッドから電力を調達・放出してバランスを保ちます。
マイクログリッド内に複数ある発電設備とESSを、IoT技術を利用して、あたかもひとつの発電所に見立てて電力の供給量を制御する技術は、仮想発電所(Virtual Power Plant:VPP)と呼ばれます。一方、家庭や事業所での電力消費状況は、スマートメータを使ってリアルタイムで把握することになります。世界的に見て、スマートメータの普及は急激に進んでいます。日本の首都圏では2014年から各家庭へのスマートメータ設置が始まり、2020年度末にはほぼ全世帯・事業所への設置が完了し、2024年度末までに日本全国での設置を完了させる予定です。つまり、マイクログリッドの構築を推し進めるための素地が着実にできつつあると言えるでしょう。
マイクログリッドでのエネルギー利用効率を、さらに高める試みも進んでいます。現在、商用電源として使われている交流電力ではなく、直流電力で送配電する「直流マイクログリッド」と呼ばれる新たな送配電網の導入に向けた技術開発が進められています。
マイクログリッドの電力供給側には、太陽電池や蓄電池といった直流電源が多く使われています。一方、電力消費側を見ると、半導体や電子部品を利用する情報通信機器やインバータを利用する省エネ電気製品は直流電力で動作しています。双方とも直流電力を扱っているわけです。
ところが、現状では交流電力で送配電するため、送電時にも利用時にも電力変換が必要であり、その際に電力損失が発生しています。直流マイクログリッドは、こうした無駄を最小限に抑えることを目指した技術です。従来の交流 200V/100V の配電線路の代わりに400V程度の直流バスを敷設して、高圧の商用グリッドとは双方向の交直変換器を介して接続して運用することが想定されています。直流送電システムは、マイクログリッド以外にも、長距離での送電への適用が進められており、すでに欧米では実用例化例があります。
マイクログリッドは、再生可能エネルギーの利用シーンの拡大に伴って、同時に構築・運用が進んでいくことでしょう。より高効率で、多様な利用シーンに対応できる柔軟なマイクログリッドと、その構築を後押しする電子部品の需要がますます高まっていくことが予想されます。