RFIDソリューション
村田製作所(以下、ムラタ)は国内最大規模の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2026」に出展しました。ムラタは車の自動運転だけでなく、ドローンや配送ロボット、ヒューマノイドロボットなどの様々な“New Mobility”が、人と共存する社会を思い描きます。
今回の人とくるまのテクノロジー展 2026では、従来の超音波センサでは計測できなかった、近接距離の検知が可能な超音波発生デバイスを活用した自律走行のデモを披露。加えて、タイヤに埋め込み、路面状況に関するデータを取得することで走行性能向上につなげられるセンサタグも提案。ムラタはこれらの新技術を通じて、より安全で快適なこれからのモビリティ社会の進化を支えていきます。開幕日当日の様子をお伝えします。
なめらかな動きで壁に近づいていくAMR(自律走行搬送ロボット)。その先にある壁にあわやぶつかる――、というタイミングでそのまま壁に沿うように横移動を開始し、壁スレスレで衝突を回避。AMRと壁の距離は約3cm。「人とくるまのテクノロジー展 2026」のムラタブースで披露されたこのデモを支えているのが、AMRに搭載した「サーモホン」と呼ばれるデバイスです。
「『残響』のない超音波発生デバイスを搭載し、最短だと1cmの距離まで測定できる。自律走行でよく搭載されるLiDARが苦手とする透明体の検知なども正確にできる」とムラタ担当者は力を込めます。
搭載するのは「サーモホン」と呼ばれる「非振動型広帯域超音波発生デバイス」。このデバイスは「CEATEC AWARD 2020」オープン部門準グランプリを受賞しています。
超音波センサは自動車では駐車時に障害物を知らせるバックソナーとして使われていますが、「近距離の測定は15cm程度が限度」(ムラタ担当者)でした。
一般的な超音波センサは、自身が振動することで超音波を発生させます。この超音波が対象物に反射して返ってくるまでの時間を計測することで対象物との距離を測りますが、対象物との距離が近くなりすぎると「残響」により、自身の発した超音波との区別がつかなくなるため、正確な測定ができないという弱点を抱えていました。
ムラタのサーモホンは、電気を熱エネルギーに変換しデバイス周辺の空気を膨張・収縮させることで超音波を発生させます。デバイス自身は振動しないため残響がなく、1cmの近距離での検知が可能となりました。
自律走行には、LiDARが搭載されることもありますが、レーザー光を使うため、光を透過するガラスなどの透明体、光を散乱する金属、光を吸収する黒い物体の検知は苦手としています。一方で、ムラタのサーモホンは超音波を使用するため、これらの物体も正確に検知できます。「サーモホンはLiDARよりも安価。カメラと組み合わせて使うことで、『ぶつからない』をサポートできる」(ムラタ担当者)
思い描くのが人とモビリティやロボットが共存していく社会での活用です。ムラタ担当者は「たとえば自律走行の車が狭い道を通るときや、ロボットによる荷物の積み込みなど、正確な位置情報が必要な場面などで使えるのでは」と話します。
人とくるまのテクノロジー展 2026では、AGV (無人搬送車)やAMR、マイクロモビリティ、ロボットなどの開発に関わる担当者からの意見を吸い上げていくとともに、今後のパートナー探しにも力を入れたい考えです。
タイヤにセンサタグを内蔵することで、インテリジェントタイヤ化するという提案も行っています。タイヤに内蔵できるRFID(Radio Frequency Identification)モジュールを活用した取り組みです。全長は40~60mm程度で、中央部分に温度やひずみを計測できるICを設定しています。タイヤの製造過程でタイヤ内部に埋め込むことが可能なため、タイヤ内部の温度やひずみといったデータを正確に取得できます。
タイヤの温度やひずみなどのデータはタイヤの故障を検知するのに重要なパラメーターのため、タイヤの研究開発においては重要視されています。しかし、これまではシミュレーションなどを駆使して推定するのが主でした。ムラタ担当者は「RFIDを活用した『センサタグ』を使えば、よりリアルなゴム内部の温度変化などを知れる」と話します。
人とくるまのテクノロジー展 2026では、実際にタイヤにセンサタグを装着し、タイヤを押すとひずみに関するデータが、センサタグに触れると指から伝わった温度により温度上昇に関するデータが取れる様子のデモを実施しました。
現在はレース用タイヤや乗用車むけタイヤの研究開発目的での利用を想定していますが、「車において唯一の地面との接点であるタイヤ」からデータを得られる意義は大きいと捉えています。
測定したひずみのデータからタイヤと地面との摩擦係数を算出することも可能と考えており、安全な自動運転に活かしていきたい考えです。自動運転では路面の変化を繊細に捉えていくことが非常に重要です。ムラタ担当者は「たとえば、雨から雪に変わった場面。タイヤからデータを取り続けていれば、摩擦係数の変化により状況を敏感に感じ取れる。雪面では制動距離が伸びるので、スピードを緩めるといった自動制御に活用できる」と話します。
人とくるまのテクノロジー展 2026では、タイヤメーカーや自動車メーカーに加えて、自動車むけシステムを開発するIT企業などの関係構築を目指しています。
人とくるまのテクノロジー展 2026は、横浜市のパシフィコ横浜で5月29日まで開催します。ムラタのブースはNo. 375で、来場には公式サイトを通じた事前登録が必要です。人とくるまのテクノロジー展 2026に関するムラタの展示会サイトはこちらです。
ムラタの担当者は「『ムラタと一緒に、New Mobilityの街へ』をコンセプトに展示しています。ぜひムラタブースへお越しください!」と呼びかけています。