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進化を遂げるビューティーテックの今

感染症対策としてマスクの着用が日常化した昨今、化粧品業界に大きな変化が生じています。

マスクの着用に加え、在宅勤務やオンライン会議が増え、それまで日課だった化粧を省く女性が増加。この傾向は世界的に加速傾向にあります。日本の行政機関である経済産業省が発表した家計調査によると、右肩上がりで増加してきた日本の化粧品出荷指数は2020年に大幅下落し、コロナ禍で落ち込む化粧品需要の現状が浮き彫りになりました。さらに、コロナ禍によるインバウンド需要の消失も加わり、化粧品業界に変革が求められています。

そんな中、化粧品業界に新たな風を吹き込んでいるのが、AIやIoTなどのテクノロジーを活用した「ビューティーテック」と呼ばれる製品です。まずは、ビューティーテックが生まれた背景をみてみましょう。

消費者が化粧品を選ぶ際、重要なポイントとなるのが色選び。口紅やファンデーションのラインアップに数十色を揃えるブランドも珍しくありませんが、非接触が重視されるコロナ禍において、消費者が店頭で見本品を試す/ビューティーアドバイザーが商品を提案する機会が減少しました。また、女性たちの間では、生まれ持った肌や髪、瞳の色に調和した「パーソナルカラー」を重視する傾向が強まっており、パーソナライズされた化粧品を求める傾向が強まっています。

そうした課題や要望に対し、各社が提供しているのがビューティーテックです。

たとえば、日本の化粧品ブランドでは、スマートフォンで自分の顔を撮影すると、AI(人工知能)による画像認識を駆使し、最適な色味の化粧品を提案するアプリを開発。AIが推奨する色味のアイシャドウを、専用の自動販売機で購入できるサービスも登場しています。また、化粧品のみならず、ヘアカラー剤の分野でも、売り場に置く色見本毛束を撤去し、アプリで髪色をシミュレーションできるサービスも広まっています。

米国の化粧品ブランドでは、一人ひとりの肌色に合ったファンデーションを調合するカスタムメイドサービスを提供。専用デバイスで肌色のトーンを測定し、独自のアルゴリズムでファンデーションを塗った後の肌色を再現するものです。また、別の化粧品ブランドはAIを搭載した口紅用のデバイスを発売。アプリで好みの色を作成すると、3本のカラーカートリッジをセットしたデバイスが色を再現してくれる仕組みです。1,000通りの色を再現できるほか、雑誌で見た口紅の色をスマートフォンで撮影し、同じ色の口紅を再現することも可能です。

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画像解析による色味の提案は、ヘアサロンなど美容業界全体に波及している

IoTミラーで肌の状態をチェックし、最適な化粧品を提案

IoTミラーも複数の化粧品ブランドが販売しています。代表的なデバイスは、AI・カメラ・水分量測定センサを鏡に搭載し、鏡に顔を写すと肌の状態を自動測定し、天候や生活習慣情報を加味した最適なスキンケア化粧品を提案してくれるものです。

IoTミラーはデバイス単体のもの、自宅の洗面所に装着するものなどがありますが、米国では百貨店の化粧品売り場でも普及し始めています。百貨店において、ビューティーアドバイザーが消費者の顔に化粧を施す様子をIoTミラーで撮影。その動画データを消費者のIoTミラーに送信することで、消費者はプロの手順を確認しながら化粧ができるという用途も生まれています。

一方、肌が弱い人に向けた化粧品選びにもビューティーテックがひと役買っています。フランスの化粧品メーカーが開発したセンサ型デバイスは、皮膚に貼り付けると毛穴から出る微量の汗を捉え、pH値(水素イオン濃度指数)を測定するもの。pHバランスが失われることで生じる乾燥や湿疹などを防ぐ効果が期待されています。

より自分に合った化粧品を選びやすくなったうえ、肌の健康状態なども検知してくれるビューティーテック。化粧品業界から美容業界への広がり、さらには健康状態の把握における医療分野へ広がる期待も含め、今後もさまざまな製品が登場することが予想されます。

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