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スマートファクトリー・ケーススタディ

作業者の熟練度の差をどのようにして埋めるか?岩手村田製作所編(後編)

3. コミュニケーションを重ねることで見えてくる解決策

新人作業者の組み立て取扱数の目標未達を改善するため、「リアルタイム優先作業指示システム」を導入した岩手村田製作所のスマートファクトリー化。目標達成という成果を得たものの、改善は終わりませんでした。

明内「ムラタには“改善は無限”、つまり改善に終わりはないという精神が根づいています。つい目の前の業務に追われ、成果が出たら満足してそこで終わりがちですが、常に半年、1年先を見据え、改善点を探り続けることが重要だと思います」

製造課製造係・製造リーダー 明内のイメージ画像
製造課製造係・製造リーダー 明内

東山「新人作業者の組み立て取扱数目標は達成したのですが、それでもベテランと新人の間には組み立て取扱数にかなりの差がありました。『ベテランのほうが生産性が高い理由はなんだろう?』と、新たな改善意識が芽生えたのです」

製造課保全係・スーパーバイザー東山のイメージ画像
製造課保全係・スーパーバイザー東山

明内「システムの導入=課題解決ではないことを強く実感し、もっと広く深い視点で現場を見て、考えを掘り下げようと思いました」

東山「原因を突き止めるため、設備情報取得ツールをさらに活用し、分析ツールを新たに作成しました。組み立て取扱数の推移を時系列でチェックし、数が低下している時間帯、設備の稼働状況、作業優先順位の順守状況を分析したところ、材料交換のときに干渉停止(複数の設備が同時に停止すること)が多く発生していることが判明しました」

明内「そこで、ベテランの作業者が実践している干渉停止を防ぐノウハウをすぐにシステムの作業設計条件に組み込み、優先度の順位付けに反映しました。これによって新人とベテラン作業者の差が埋まり、加えて、作業にかかる習熟期間を8割ほど短縮することができました」

さらなる改善意識から生まれた分析ツールの取り組みは、コミュニケーションによって課題解決のヒントが見えてくるという大切なことを教えてくれます。そして、“改善は無限”という言葉の通り、スマートファクトリー化にゴールはないのかもしれません。

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4. スマートファクトリー化がもたらす視点と思考

システムの導入までに要した期間は約8ヵ月。「設備同士の情報連携や調査・分析に時間がかかり、やきもきする日々が続きました」と東山さんは振り返りますが、そのぶん、導入後の喜びはひとしおだったと言います。

東山「トライ導入して3~4日後のことです。朝、出社すると明内が興奮気味に駆け寄ってきて『やりましたよ!ベテランと新人の差が埋まりました!』と。あのときの感動は今もよく覚えています」

スマートファクトリー化による成果を収めた岩手村田製作所。プロジェクトのポイントは、「情報共有」と「コミュニケーション」だと2人は口を揃えます。

東山「岩手村田製作所グループ内には、さまざまな情報を共有する社内向けサイト(電子掲示板)があり、スマートファクトリーに関する事例を閲覧することができます。これによって、気になることやわからないことを調べることができますし、担当者に問い合わせて質問をすることもできるのです」

明内「ムラタ全体でもこうした情報共有サイトが存在し、事例やノウハウの共有が積極的に行われています。また、今回のリアルタイム優先作業指示システムはムラタの社内システムを活用しているので、担当部署のサポートやアドバイスを受けながらプロジェクトを進めることができました」

コミュニケーションについては、作業者へのヒアリングからノウハウを導き出した分析ツールの例のように、対話を重ねることが重要だと言います。

東山「保全係でもシステムやツールを使った予知保全を実施しており、月1回の共有会で進捗や狙いを作業者全員に共有しています。何を目的にスマートファクトリー化に取り組んでいるか。スマートファクトリー化によってどのような影響やメリットがあるか。そういったことをきちんと伝え、納得してもらうことは非常に大事だと思います」

明内「共有会では、作業者の考えていること、現場の困りごとなどを話し合う時間を設けていますが、今回のシステム・ツール導入によってある変化が生まれました。課題が解決したことで作業者の心に余裕が生まれ、モチベーションが高まり、どうすれば今以上に生産性や品質を高められるかの議論が活発になったのです。そこから『次はこんなことに挑戦しよう』という改善のアイデアも生まれました。スマートファクトリー化によって作業者に新たな視点が生まれ、思考が深まったことは一番の収穫かもしれません」

製造課製造係・製造リーダー 明内、製造課保全係・スーパーバイザー東山のイメージ画像2

5. スマートファクトリー化で人の価値を高める

スマートファクトリー化においては、AIやIoT、ロボティクスといった先端技術の活用がフォーカスされがちですが、あくまでも“人”を起点にした発想が重要だと明内と東山は言います。

明内「どうしたら新人とベテラン作業者の熟練度の差をなくせるか、どうしたら作業者の肉体的・精神的な負荷を下げられるか。スマートファクトリー化においては、そういった“人”の困りごとや悩みを解決する視点が大切だと思います」

東山「なぜ、改善を続けているのかと個人的に聞かれたら、面倒臭いことをなくすためだと答えます。改善することは大変だけれど、それを実現したら日々の作業が半分か、それ以下になる可能性があります。面倒臭いから、楽をしたいから。そういう人間的な視点も忘れてはいけないと思います」

明内「今後は、人にしかできない作業をできるだけ簡素化して、それを機械やツールに担わせていきたいと考えています。どうやってそれを実現するか、改善するかを考えるのが人です。機械やツールと人の役割を突き詰めていくことで、人にしかできないもの、人にしかない価値が高まっていくのではないでしょうか」

東山「どんなに機械やツールが発展しても、システムを構築するためのアイデアやノウハウを考えるのは人、改善策を講じるのも人です。スマートファクトリー化を進めるには人のアイデアが必要ですし、同時に、スマートファクトリー化によって余裕が生まれ、アイデアを生み出すことに集中できる。そんな未来を実現できるといいですね」

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