コンデンサガイド

高分子コンデンサの基礎(前編) -高分子コンデンサって何?-

はじめに

パソコンなどの電子機器のメイン基板を見てみると、図1の様な6タイプのコンデンサをよく見かけます。タンタル電解コンデンサ(二酸化マンガンタイプ、高分子タイプ)、アルミ電解コンデンサ(缶タイプ/電解液、缶タイプ/高分子、チップタイプ)、MLCCなどです。
コンデンサにはその他にもフィルムコンデンサやニオブコンデンサなど色々な種類がありますが、今回は村田製作所も手掛けている高分子コンデンサについて説明します。

 
図1 主なコンデンサ

高分子コンデンサとは

高分子コンデンサとはタンタル電解コンデンサもアルミ電解コンデンサも同様に、陰極に導電性高分子を用いた電解コンデンサのことを指します。高分子タイプのアルミ電解コンデンサであれば、陽極にアルミニウム箔、陰極に導電性高分子を用いています。高分子タイプのタンタル電解コンデンサであれば、陽極にタンタル金属、陰極に導電性高分子を用いています。図2に導電性高分子アルミ電解コンデンサの模式図を示します。

 
図2 導電性高分子アルミ電解コンデンサの模式図

従来タイプの電解コンデンサは陰極に電解液を用いたり、二酸化マンガンを用いたりしています。それらを導電性高分子にすることによりESRを低くすることができ、温度特性を安定にでき、更に安全性を高めたり寿命を長くすることができる点がメリットです。図1を見ていただくと分かるように、高分子コンデンサは従来タイプの電解コンデンサよりもESRが低いことが分かると思います。
また、電解コンデンサであれば陽極に使っている弁金属の種類によって基本的に誘電体の種類が決まり、それにより誘電率やDCバイアス特性や音鳴きの特性等が決まります。この様に、陽極と陰極と誘電体を色んな種類の材料を組み合わせることで様々な特性を得ることができます。それぞれが得意な領域と苦手な領域があり、電子機器設計者が回路設計する際はそれらを使い分けています。

ECASシリーズについて

アルミ電解コンデンサは陰極材料と構造で分けると大きく3タイプあり、ムラタのアルミコンデンサは全固体の積層型高分子アルミコンデンサ(ECASシリーズ)です(図3参照)。その他は缶タイプの捲回型で、陰極に電解液を用いているものと、高分子を用いているものがあります。
ECASシリーズの特徴は伝導度が高い導電性高分子を陰極に用いていることに加えて、アルミ素子を積層することで電解コンデンサの中では最もESRが低くできます。また、静電 容量を大きくとることができ、かつ、DCバイアス特性が無いため直流電圧をかけた時の実使用上の静電容量が安定しています。このように、低ESR、高容量かつ容量が安定しているという点がECASシリーズの最大の特徴です。

 
図3 ECASシリーズの構造例

ECASシリーズの主なアプリケーション

コ ンデンサの主な回路上での役割の一つは、電源ラインの電圧を安定化し、なだらかにすることです。電子機器が高機能化すればするほど、CPUなどの電源ライ ンはシビアな電圧制御が求められています。電圧ラインを安定化するために大きな静電容量が必要な場合もあります。その様な場合、これまではMLCCを数多 く並べる提案をしてきましたがECASと組み合わせることで、場合によってはより員数とコストを抑える提案ができるようになりました。村田製作所は ECASシリーズをMLCCの商品群に加えたことで今まで以上に幅広い提案ができるようになりました。

図4はCPUやFPGAの電源ラインの簡単な回路図です。

図4 CPUやFPGAの電源ラインの簡単な回路図

ECASシリーズは低ESR、低インピーダンス、静電容量が安定しているため、負荷電流が大きく変動が激しいCPUなどの各種電源ラインの平滑(リップル吸収や過 渡応答)用途に最適です。基本的にMLCCと組み合わせて使われる場合がほとんどで、ECASシリーズは特に電圧変動抑制(高速バックアップ)用途で能力 を発揮します。電圧変動抑制用途にはよく高分子タイプのタンタル電解コンデンサや、高分子タイプのアルミ電解コンデンサ(缶タイプ)も用いられますが、ECASシリーズはそれらよりもESRが低く、ESRと静電容量のバランスがとれている為、電圧変動抑制用途に最適です。
そんなECASシリーズはPC(ノートPC、サーバー、マザーボード、複合機 等)、デジタルAV機器(液晶テレビ、ゲーム機、セットトップボックス 等)によく使われています。
この様な電子機器を設計される際は是非ECASシリーズをご検討下さい。

ECASシリーズのラインアップ詳細についてはこちらからどうぞ。

担当:株式会社村田製作所 ポリマーデバイス商品部

関連製品

関連記事