コンデンサガイド

積層セラミックコンデンサ 小型化への挑戦(3)

今回は、MLCC(積層セラミックコンデンサ)の商品開発、実装技術に長年携わってきた弊社技術者によるコラムをお届けします。

超小型MLCCと実装の想い出

この度異動が決まり、これまで取り組んできた実装技術の仕事から少し離れ、新たな商品分野の開発に従事することになった。私自身、心残りは沢山あるが、次に着任する部署でも「お客様の求めるものを先読みし、事前に必要な商品/サービスを準備すること」を目標に力の限りを尽くすつもりである。新しいことにチャレンジできるということはそれだけでワクワク・ドキドキする。
これを機会に、私が実装の世界に深くかかわるきっかけとなった、0603サイズのMLCC開発時の思い出を紹介したい。

思い起こせば、私が初めて実装に携わったのも商品開発を担当しているときであった。当時、世界最小となる0603サイズ(0.6mm×0.3mm×0.3mm)のMLCCの開発に挑戦できるということで、モチベーションは高かった。しかし、この超小型サイズに対応できる実装技術はまだ確立されておらず、基板にはんだ付けする評価はすべて人の手で行っていた。お客様に0603のPRに出かけても「どうやって実装するの?使えないじゃん!!」とほぼ門前払い。そこで、生産技術部内で実装を専門に評価していたFさんに相談した。そして、一緒に実装方法を提案できるようにしようと決めた。

まず、基板の精度が出ないため、まともに実装できない。ここからの改善であった。
ソルダーペースト(*1)のはんだ粒径が大きくて、小さな図形の印刷もできなかった。はんだメーカーさんにお願いして、印刷できるはんだの開発を開始した。メタルマスク(*2)も厚みを薄くし、かつ、小さな穴の加工が必要となった。とにかく多くのサンプルを評価した。
次はいよいよ基板搭載である。最新のマウンターで評価すべく、マウンターメーカーさんに押しかけ、テストを行った。認識できない、ノズルで吸えない、基板に落ちない、まともに基板に載るのが100個中50個ぐらい、Fさんと頭を抱え込んだのを覚えている。私自身も実装機の前でソフトを補正しながら奮闘したこともあった。
ソルダリングはツームストーン(*3)が多発することを予想していたが、これは思っていたより上手く行った。ただ、メニスコグラフ(*4)でのデータ取得には相当課題が多かった。

ここから苦労したのが、実装関連の各メーカーさんの理解を得ることだった。各メーカーさんから「本当に0603なんて商売になるの---?無駄な仕事になるんじゃないの!!」との声が挙がっていた。私たちの信念、将来の展望を語り、お客様の要求を共有化し、評価サンプルを供給し続けることによって、少しずつ夢が共有できるようになってきた。その気になればさすがに「餅は餅屋」というか、何とかなる。社内の評価体制が整い、開発も加速した。お客様に対しても十分とは言えないまでも、社内で取得した実装データを紹介できるようになった。
この時、実現するかどうかわからない夢を一緒に、いや、主体的に取り組んでいただいた、実装関連のメーカーさんに心から感謝している。

それから数年後に0402サイズ(0.4mm×0.2mm×0.2mm)の開発を始めることになるが、0603の開発時に培った協働関係や人脈のおかげで、技術的な苦労は多かったものの、比較的スムーズに進めることができたと思う。

『仕事は一人ではできない。違った専門性を持つ独自技術がいくつか組み合わさることによって、真似のできない技術が構築される。今後の日本の生きる道はここにあるのかもしれない。』なんてことを思う今日この頃である。社内でも社外でも仲間を大切に、一緒に日本を元気にしていきたい。

担当:村田製作所 EMI事業部第1商品開発部
handle name:麦わら海賊団 T.N.

【用語説明】

*1 ソルダーペースト
リフローはんだづけのために使用するペースト状のはんだで、はんだ粉末とペースト状フラックスの混合物からなる。ペーストの粘性により実装部品に粘着するため、実装部品を基板に仮固定する役割もある。

*2 メタルマスク
ソルダーペーストを基板に印刷する時に用いる、印刷パターン形状に切り抜かれた金属板のこと。

*3 ツームストーン
部品の片側がはんだの表面張力によって引き寄せられ、正しくはんだ付けがされず、
チップが立ち上がる現象(マンハッタン現象とも呼ばれる。)

*4 メニスコグラフ
微小チップ部品のはんだ濡れ性を測定する試験方法で、はんだディップ槽にチップ部品を浸漬し、部品に加わる力を測定することによりはんだ濡れ性を評価するもの。

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