コンデンサガイド

積層セラミックコンデンサ 小型化への挑戦(2)

当コラムは"積層セラミックコンデンサ 小型化への挑戦①"の続編です。まずは小型化への挑戦①をお読みください。

前回のあらすじ
「これ以上小さいコンデンサっていらんかな?少し考えて見てくれや。」そんな開発部長のつぶやきから始まった小型化への挑戦。サイズは0603。
6カ月強、がむしゃらに突き進んできて、ようやく50%の良品が取れるようになった。ここからは良品率を上げる一方で特性測定の方法や実装方法など、実際にお客様で使っていただくための検討を並行して進めなければならない。社内の生産技術や社外の測定機メーカー・テーピング機メーカー・実装機メーカーとの共同開発が始まった...

0603の開発に奮闘しているうちに、不思議なもので不良率はまだ高いものの、何とかコンデンサができるようになった。信頼性も保証可能なレベルとなった。でも、コスト的には通常の1005の数十倍。設備は動いているより止まっている時間のほうが長いくらいのトラブル続き、性能設計は実現できたものの商売として成り立つかどうかはこの時点では全く未知であった。
この状態で無謀にも0603のラインを一本投資した。これは私自身、身震いした。投資した金額を回収しなければいけないという責任感と投資を許可くださったTOPの器の大きさに対する感動から来る震えであった。

ラインを投資し、福井県の工場の片隅に設置したと同時に製造ラインの立ち上げとビジネスの立ち上げを製造部の中で進める体制となった。月一億個の生産を軌道に乗せ、ビジネスとして成立させることが私の使命で、これが達成できるまでは開発には帰ってくるなといわれた。もちろん私もそのつもりであった。この時点で私の下に製造担当者3名と製造技術者2名が配属された。前述のS君はなぜか開発に残った。
この時点で注文は0、製造部内のお荷物的存在でいろいろな小言を言われながらも好きなようにやらせていただけたのはありがたかった。

ちょうどラインが立ち上がるかどうかの時期であった。0603の注文が入りそうという知らせが入った。月30万個であった。お客様の基板設計の中でどうしてもサイズが目標に入らない、基板の中で2個だけ0603を使いたいというものであった。このときのために、このように困っているお客様に満足していただくために私たちは仕事をしている。嬉しかった。何が何でも対応しようと思った。設備のトラブルが頻発し、たかが30万個が簡単には出来なかった。出荷日に間に合わすためにメンバー全員で徹夜した時もあった。この注文もモデルチェンジでなくなったころ、結構、ものづくりの形も出来上がりコストも下げられる自信が付いてきた。また、実装面も協力いただいた実装機メーカー各社の努力で安定してきた。ここで、一気にPRを行った。少しずつ注文が入ってきた。

ここからはコスト低減と品種の充実に従事した。注文はモジュール関係のお客様を中心に徐々にその数量も上がってきた。
そして、2001年に初めて1億個の壁を超え利益も少しは上げられるようになった。
今では0603サイズが携帯市場などではメインのサイズになりつつある。初期から0603に携わり、いろいろな壁を乗り越えてきたメンバーは心の中でしてやったりと思っているに違いない。世の中はすでに0402の時代に突入している。我々は積層セラミックコンデンサをどこまで小さくできるのか。私はもう老眼で目が見えない。若いムラタの技術者が挑戦し、更なる小型化の道を開くことを信じている。

担当:福井村田製作所 T.N

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