IoT家電で暮らしが変わる――スマートライフの実現へ

コロナの影響で増加したIoT家電ニーズ

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、自宅で過ごす時間が大幅に増えました。それにともない、食事の準備・後片付け、洗濯物の量や回数、あるいは部屋の掃除など、家事の頻度が増えたことを実感している人も多いのではないでしょうか? ある調査では、4割の人が家事の機会が増えたと答えるなど、暮らしは大きく変化しています(タイガー魔法瓶調べ)。

それとともに、冷蔵庫や電子レンジ、掃除機、洗濯機といった白物家電をはじめ、家電製品へのニーズにも変化が現れ、“IoT家電”への関心が高まっています。IoT家電とは、家電がネットワークに接続され、遠隔操作をはじめ、さまざまな便利なサービスが付帯したものです。家事の機会が増えたことで、より多くのユーザーが最新家電の便利さに気づき、買い替えるケースが増えています。実際に、この一年間で白物家電製品の国内販売額は2000年代に入って最高額を記録しました(日本電機工業会「出荷統計調査」)。

今回は、そんなIoT家電の動向をみてみましょう。

遠隔操作や自動調理など、多様な進化を遂げるIoT家電

スマート家電やネット家電、IoT家電などと呼ばれるネットワーク接続型の家電は、2000年代初頭に登場し始めましたが、当初はあまり注目されませんでした。インターネットにつなげて利用できる機能が限られるなど、メリットが少なかったことが主な要因です。

注目され始めたのは2017年~18年頃、スマートスピーカーの登場がきっかけでした。音声で家電を操作するという新しい機能が話題になるとともに、この頃からWi-Fiの普及など無線通信環境の向上、センサ技術の進化などを背景に、家電に無線LANを搭載したIoT家電が次々と登場しました。

たとえば、電子レンジや自動調理鍋といった機器がIoT化し、献立をアドバイスしてくれたり、スマートフォンのアプリからレシピをダウンロードして、あとは必要な食材・調味料を入れ、スイッチを入れるだけで自動調理できたりするなどの進化を遂げました。そのほかにも、部屋を自動で掃除してくれるロボット掃除機、音声によってスイッチON/OFFの操作ができる照明器具、自宅の外から遠隔操作でき、部屋の人数や生活パターンに応じて室温をコントロールするエアコンなどが登場しています。

さらに、最近のIoT家電はクラウド上にAI機能を搭載し、最適な家電制御を実現する進化を遂げています。IoT家電を販売するメーカーは、自社でクラウド上にIoTプラットフォーム(必要な機能やサービスを提供するIoT基盤)を運営し、プラットフォームとIoT家電を結んでいます。これにより、省エネなどの最適制御をはじめ、IoTプラットフォームを利用する提携先の宅配業者が、そのメーカーのIoT調理家電にふさわしいメニューを開発し、必要な食材セットを宅配するサービスを利用できるなど、より便利なサービスを提供するものへと進化しています。家電メーカーでは、このIoTプラットフォームをオープンにし、さまざまなサービス会社に提供することで、サービスの質をさらに高めていくという動きが加速しています。

機能も多様化し、グローバル市場規模も伸長

コロナ禍に実施した調査によると、IoT家電を使ってみたいと答えた人は約4割にのぼりました。使ってみたいIoT家電のトップは「キッチン家電」(約45%)で、次いでテレビ、掃除家電、エアコン、洗濯機、照明が30%~40%と上位に挙がります。また、54%の人が家庭でもDX化を進めることで、家事をより便利にする必要があると感じています(タイガー魔法瓶調べ)。

現在、IoT家電のラインアップは加速度的に増えており、ルームエアコンを全機種IoT化したメーカーもあります。また、冷蔵庫、洗濯機、空気清浄機、電子レンジなど、IoT対応の製品の種類も増えています。AV製品ではインターネットに接続できるテレビ=スマートテレビの構成が高まっています。

IoT家電の機能も多様化し、省エネや快適な制御はもちろん、IoT家電や設備がひとつのデバイスとなり、機器の操作履歴データを集約・分析し、家族一人ひとりに最適な制御やアドバイスを行うように進化しています。IoT家電メーカーが運営するIoTプラットフォームを活用し、さまざまなサービス事業者が食材の宅配・家族の見守りといったサービスを提供するなど、QOL(Quality of Life=暮らしの質)を高める機能・サービスの開発も活発です。

総務省の「令和2年版情報通信白書」によると、世界で稼働するIoT家電は、2019年は2018年から約10億台増え、約50億台にのぼります。2022年には87億台と予測され、今後のグローバルな市場規模は拡大の一途をたどるでしょう。日本はIoT家電の導入が世界より遅れていると言われてきましたが、経済産業省もスマートライフの実現を後押しする政策を推し進めており、IoT家電がスタンダードになる日も近いかもしれません。

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