IoTのセンサ技術で介護現場の見守り負担が軽減

シート型センサの導入で介護者の負担を軽減

現在、少子高齢化を背景とした福祉・介護現場の人手不足は深刻の一途をたどっています。厚生労働省の試算では、生産年齢(15~64歳)人口は2025年以降、さらに減少が加速。介護関係職種の有効求人倍率は、全職業より高い水準で推移しています。すなわち、介護の現場における人手はすでに足りていない状況なのです。

そうした課題の解決策として期待されているのがIoTの導入です。介護福祉施設を7拠点展開するとある社会福祉法人は、IoT機器を積極的に導入して職員の業務負担軽減に力を入れるなど、さまざまな対応が進んでいます。今回は、介護現場におけるIoT導入事例を、センサ技術を中心にみてみましょう。

認知症患者など、比較的介護必要度の高い高齢者が入居する特別養護老人ホームでは、利用者のベッドの下にシート型センサを配置して、寝返りや呼吸、心拍などの体動をリアルタイムで検出しています。このセンサで睡眠状態を把握し、無線LANでデータを一元管理すれば、職員が昼夜を問わず居室を巡回する必要がなくなり、負担が大幅に軽減されます。また、夜間に行うオムツ交換も、利用者の目が覚めたタイミングを見計らって行えば、ただでさえ眠りの浅いお年寄りの睡眠の妨げにはなりません。

シート型センサは、医療・介護用ベッドを手がける企業が、ベッドからの起き上がりや離床を検知する見守りセンサと併せて販売しています。圧力センサによるベッドシート型や、床に敷くフロアシート型が存在し、小型の送信機はシートに内蔵できる仕組みです。心拍などは計測しませんが、ナースコールシステムに中継することで見守りの効率化が図れます。

この介護施設に導入されているIoT機器は20~30種類です(介護ロボットを含む)。シンクタンクを設立してIoT機器を独自評価し、導入の効果を研究・検証しており、巡回などの見守り業務が占める時間は介護業務全体の約15%と算出。センサ活用で作業時間が半分以下になると見込んでいます。その分、食事や排せつ介助など、人の手が必要な業務により多くの時間を割くことができるのです。

センシング技術でわずかな体表現の動きを計測

介護現場に欠かせないセンシング技術は、日々、大きな進化を遂げています。たとえば、医師が代表を務める京都の医療機器スタートアップが開発した「非接触見守りセンサ」は、79ギガヘルツという高周波帯レーザーを使用し、近接した2つの物体を識別する能力に優れています。測定範囲は最大7mで、対象者を自動検出して追尾。1部屋に1台設置すれば、多床室でも隅々まで検知できます。利用者だけでなく、複数人の動きも検知し、介助者がきちんと介護しているかもモニタリング可能です。

こうした最新のセンサ技術は、呼吸による体動など、わずかな体表面の動きを高精度で計測できるのが大きな特長です。ベビーベッドに設置すれば、うつぶせ寝による呼吸停止など、被介護者はもちろん、乳児の異変の早期発見にも役立ちます。また、心拍や呼吸など、バイタルデータのより高精度な計測を実施し、医療現場計測への活用も視野に入れ、第三者機関による認証が必要な管理医療機器の認定取得を年内に予定しています。関西の国立大学、大手エレクトロニクス商社が協業し、研究用途としての販売が始まっており、大手総合電機メーカーが自社製品開発用に複数台購入しました。ホームセキュリティやスマートホーム、ヘルスケアなど、家電製品への応用も検討する見込みです。

また、海外でもセンサ技術を活用した見守り用デバイスの導入が進んでいます。たとえば、アメリカの介護施設では、マットレスの下に敷く非接触型の振動センサで生体情報を計測し、モニター表示することで、介護者が心拍数などを計測する手間が軽減されています。イギリスでは、高齢者が家電などを使用した状況を把握するセンサ付きプラグ(コンセント)が活用されています。

このようなセンサを使った見守りシステムは、カメラと違い、利用者の心理的な忌避感が薄く、プライバシーにも配慮できる面があります。人間にしかできないより丁寧なケアに集中するためにIoTを活用することは、業務負担の軽減はもちろん、介護ケアの質の向上にも結びつくでしょう。

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