コンデンサガイド

コンデンサの発熱特性と測定方法

本コラムはコンデンサの基礎を解説する技術コラムです。
今回は、コンデンサの発熱特性についてご説明いたします。

1.コンデンサの発熱について

電子機器の小型化・軽量化に伴い、部品の実装密度が高くなると放熱性が低下し、装置の温度が上昇しやすくなります。特にパワー出力回路素子からの発熱が機器の温度上昇に大きく影響しますが、コンデンサにおいても大電流が流れる用途(スイッチング電源の平滑用、高周波パワーアンプの出力カップリング用など)ではコンデンサの損失成分に起因する電力消費が大きくなり、自己発熱が無視できなくなることがあります。そのため、コンデンサの信頼性に影響を与えない範囲にコンデンサの温度上昇を抑える必要があります。
理想的なコンデンサは容量成分のみですが、現実のコンデンサには電極の抵抗成分や誘電体の損失、電極のインダクイタンス成分があり、図1.のような等価回路で表すことができます。

 
<図.1>

このようなコンデンサに交流電流が流れるとコンデンサの抵抗成分(ESR)により、式.1-1で示される電力消費Peが生じ、コンデンサは発熱します。
 

2.コンデンサの発熱特性

コンデンサ自体の発熱特性測定は、コンデンサの温度を対流や輻射による表面からの放熱や、治具を通した伝熱による放熱を極力抑えた状態で行う必要があります。また、誘電率の電圧依存性が非線形になる高誘電率系コンデンサでは、コンデンサに印加される交流電流と交流電圧を同時に観測する必要があります。さらに、低容量の温度補償用コンデンサは100MHzを超える高い周波数における発熱特性が必要になるため、より反射が少ない状態で測定を行うことが必要になります。 

2-1.コンデンサの発熱特性測定システム

高誘電率系コンデンサ(DC~1MHz領域)の発熱特性測定システムの概略を図.2に示します。
信号発生器の信号をバイポーラ電源で増幅しコンデンサに印加します。そのときの電流を電流プローブ(カレントプローブ)を使って観測し、コンデンサの電圧を電圧プローブを使って観測します。同時に、コンデンサ表面の温度を赤外線温度計で観測し、電流及び電圧と表面の温度上昇との関係を明らかにします。

<図.2>

温度補償用コンデンサ(10MHz~4GHz帯域)の発熱特性測定システムの概略と測定形態を図.3に示します。

<図.3>

システムを構成する機器ならびにケーブル類はすべて50Ωに統一しており、測定試料はマイクロストリップラインを形成した基板に実装し両端にSMAコネクタを取り付けた形状としています。
信号発生器(Signal GENERATOR)の信号を高周波アンプ(Amplifier)で増幅し、方向性結合器(Coupler)で反射を観測しながら試料(DUT)に印加します。試料を通過して出力された信号を終端器(Attenuator)で減衰させ電力計(Power Meter)で観測します。同時に試料表面温度を観測します。

2-2.コンデンサの発熱特性データ

高誘電率系積層セラミックコンデンサの発熱特性の測定データとして、3216タイプ10uFのB特性6.3Vの発熱特性データとインピーダンスとESRの周波数特性を図.4に示します。

<図.4>

100kHz、500kHz、1MHzにおける交流電流と温度上昇の関係と、インピーダンス(Z)及びESR(R)と周波数との関係を示しています。発熱特性は100kHz>500kHz>1MHzの順番で小さくなっていることが確認できます。また、ESRは、100kHzで10mΩ、500kHzで6mΩ、1MHzで5mΩとなっており、ESRと発熱特性の関係が深いことを確認することができます。

3.発熱特性データの入手方法

発熱特性データは、弊社のWebサイトから確認することができるようになっています。

図.5は弊社が提供している設計支援ツール「SimSurfing」の画面です。品番と確認したい項目を選択することにより、特性を表示することができます。さらに、シミュレーション用データとして、SPICEネットリストやS2Pデータをダウンロードすることができます。
各種電子回路設計に是非ご活用ください。

<図.5>

SimSurfingはこちら

 

担当:株式会社村田製作所 コンポーネント事業本部 S.K

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