ノイズ対策ガイド

積層フェライトビーズの開発秘話~横巻きタイプGHz対応フェライトビーズ~

【世界初の横巻きタイプフェライトビーズ開発着手へ】

1995年度の終わりのことだった。商品部との開発検討会で、「やりましょう、是非やらせて下さい」と横巻きタイプGHz対応フェライトビーズの開発に着手することを決めた。入社2年目の若いメンバーと一緒に翌年テーマ開始を行い、世界初「横巻きタイプGHz対応フェライトビーズ」の商品化は1997年末であった。

【最初の一歩、積層フェライトビーズの商品化】

私は今から28年ほど前にフェライトの窯業部門に配属された。当時ムラタは誘電体のセラミックコンデンサはNo.1であったが、磁性体であるフェライト関係はメジャーでは無かった。社内でもフェライト窯業部門は赤字続きで負け犬部門と言われ悔しい思いをしていた。そのため、部門の皆がなんとかフェライトで売れる商品を作りたいとの思いが強かった。
当時、国内にはフェライトで強い会社があり、既に積層コイルを商品化していた。所属していた部門ではフェライトコアを作っていたが、積層工法で作る商品も窯業品の範疇との思いで手掛け、1986年フェライトビーズとしては最初の積層商品を世に出すことが出来た。その後、ビア接続によるコイルタイプを実用化しHighインピーダンス化や小型化、材料展開による高速信号化などシリーズ展開を進めた。常に新しいものをいち早く世の中に出そうとの思いで商品を作って行った。

【GHz対応フェライトビーズの商品開発】

今回テーマのGHz対応フェライトビーズも以前からアイデアとしてはあったが、難しそうだとかコストが掛かりそうだとかでなかなか取り組めていなかった。しかし、積層フェライトビーズを商品化した時から、「独自で世の中に無いものを最初に出し、そしてお客様に喜んでもらう」という考えであり、何としても一番にとの思いが強かった。商品企画部門とのロードマップ検討の中、高周波ノイズ対策という市場の要求の時期ともうまく合致し良いタイミングで開発活動を開始できた。

このフェライトビーズは、高周波インピーダンスを向上させるため浮遊容量(*)が小さくなるように積層方向を従来と90°回転させている。チップ部品の長手方向に積層する構造で、我々は「横積層横巻き構造」と名づけ、「横巻き品」と呼ぶようになった。開発を始めると、この構造や商品特徴に起因するような、例えば積み重ねズレ、カット変形、強度、高周波特性測定等の課題が次々に出てきたが、メンバーとの粘り強い対応と関係部門の絶大な協力により解決を図って行った。
元々はフェライト積層の事業は規模も小さく、独自に一からの要素技術検討も十分出来る状況ではなかった。もの造りに必要な技術を先行する積層コンデンサなど社内外から取り入れ、既存のコア技術とうまく融合し、EMIのアプリケーション開発と合わせ効率よく商品化に結びつけられた。

【常に独自の新しい商品を】

今では、この構造はムラタだけのものでは無いが、先行者としての利益にも繋がるものであったと考えている。また積層フェライトビーズの分野で、同業の参入も多い中ムラタは今でも業界をリードし続けられていると自負している。電子部品も昨今の低価格競争の中では、良いものを低価格で提供できなければすぐに逆転される環境であり似た商品の中での激しい競争となっている。そのため常に同業品の分析を行い競い合わなければならないかもしれないが、ものまねでは無く独自の構造・材料・工法でもの造りを行いお客様が望まれる新しいものをいち早く世の中に出して行く精神は持ち続けたいと考えている。

縦巻構造品/従来品(透視図)
図1. 縦巻構造品/従来品(透視図)
横巻き構造品/開発品(透視図)
図2. 横巻き構造品/開発品(透視図)

*浮遊容量:回路素子や回路パターンなどにおいて、導体間に分布する静電容量のこと。
例えばフェライトビーズでは、浮遊容量が大きくなると高周波でインピーダンスが早く低下しノイズ除去素子としての高周波性能が失われる。

 

担当:EMI事業部 第1商品開発部 H.T

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