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DX×Murata:DXによって進化する製造業の未来

人材育成を通じて、DXを企業文化にするために

社会全体でDXが浸透する中で、DXの推進を担うデジタル人材の育成が急務とされています。そうした中で、多岐にわたる領域でDXに取り組むムラタでは、DX推進に必要な人材育成のプロジェクトを行っています。人材開発部の西田、情報システム統括部の鷹野が、プロジェクトの概要や狙いを解説します。

1. DX人材を育成するための基礎教育と職種教育

DX推進に必要な人材育成のプロジェクトが本格的にスタートしたのは、中期方針2024が開始された2022年4月のこと。その経緯を、西田と鷹野はこう振り返ります。

西田「ムラタはさまざまな領域でDXを推進してきましたが、そうした中で、全社的にDXを浸透させるためには、どの階層の従業員の意識変容を促すべきかが議題に挙がりました。そこで、DX人材育成戦略の策定を検討していた鷹野(当時は経営戦略部に所属)に相談を持ちかけたのが始まりです」

鷹野「全社取り組みとしてDX人材育成を推進する中で、点ではなく面で捉えながら全社に波及させることに課題感を持っていました。従業員の間には、DXというワードに対する戸惑い―例えば、具体的に何をしたらいいのか、何が変わるのかといった反応―がありました。特に、製造部門ではDXによってどんな効果が得られるのかといった差分を重視する傾向が強いので、どのようにDXの浸透を図っていくかを人材開発部とディスカッションしました」

そこで、職種教育、基礎教育という2つの視点からDX人材育成の構想を描き、具現化していきました。

DX人材教育と目的のイメージ画像
DX人材教育と目的

西田「基礎教育については、職種や役職に関わらず、すべての従業員を対象に実施しています。DXの基礎知識や業務改善など、内容は多岐にわたります。それに加えて、組織の中でDXの旗振り役となる人材を育てるという観点から、職種教育を加えることで組織力の強化を図っています」

DX基礎教育と階層教育の連携のイメージ画像
DX基礎教育と階層教育の連携

鷹野 「職種教育については、さらに細分化した2軸を設けています。1つは、管理職やマネージャー、リーダー、現場のオペレーターなど、階層という横軸へのアプローチ。これは組織の機能に関わらず、すべての階層に働きかけることができます。もう1つは、製造やR&D(研究開発)、商品開発など、組織の機能に準じた縦軸へのアプローチです」

2. 目的から手段を逆算する自律的な思考を身につける

LMS(学習管理システム)や社内のDX事例を共有するポータルサイトを構築した上で、「職種教育に関しては、階層や組織ごとの機能・特性を踏まえた人材育成プログラムを個別に開発する必要がありました」と鷹野は言います。

鷹野「ムラタでは、本社の従業員が製造拠点に常日頃からアプローチし、課題の吸い上げを行っています。その課題に、ムラタとして目指すべき人材像をかけ合わせ、職種別のプログラムを開発していきました。例えば、製造部門用には3つの育成コースを設け、座学と実務を組み合わせています」

こうした階層・組織に応じたプログラムの最適化こそが、職種教育の狙いだと言えます。

鷹野「部門によってDXに対する意識や温度感、環境はさまざまです。例えば、製造部門では日々、大量のデータが蓄積されるので、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といったデジタルツールを活用した改善策が見えやすい。一方で、R&D部門ではデータを自ら取ってくる必要があり、製造部門ほどデータが蓄積していません。それゆえに、R&D部門では機械学習に関するスキルの習得など、改善のための新たな武器を手に入れるプログラムを組んでいます」

単に知識や情報をインプットするのではなく、自ら思考し、自律性を持ってアウトプットしていく研修が組み込まれていることも特徴です。鷹野は、「目的よりも手段が先行したままデジタルツールを導入しても、効果が上がらず、継続しません。達成したい目標へ向けて目的から手段を逆算していく思考を身につけることが重要」だと言います。

鷹野「そうした思考を身につけるために、本社の従業員を講師として各事業所に派遣し、管理職、研修の受講者と三つ巴になって課題について話し合い、どんな改善策があるかを考え、可視化していくプログラムを行っています。受講者は管理職に選抜してもらい、その人をどういう人材に育てていくかも考えてもらいます。そして、受講者の成長や改善策の提案を正しく評価する。単なる研修ではなく、評価や成果につなげることで組織が活性化することを目指しています」

西田「誰もが育成当事者になり、寄ってたかって人を育てる。これは今回のプロジェクトに限らず、ムラタの人材育成に共通する思想です。個人の自主性や創造力といった育つ力を伸ばし、そのために組織や会社がバックアップしていくことで、人は大きく成長していくと考えています」

3. 成功体験によってDXが浸透する組織風土が生まれる

こうしたDX人材育成の取り組みを通じて、西田は多くの従業員の成長を目の当たりにしたと言います。

西田「従業員の中には、ITパスポートを取得した者も何名かいます。彼らはロジカルシンキングやマーケティングの知識を身につけたことはもちろん、DXを推進する上での共通言語が生まれ、他部門の従業員とのコミュニケーションが円滑になったと述べています。組織横断的なイノベーションを生み出す必要が増している今、非常に重要な視点・視座を養うことができたと思います」

新入社員が各工場に実習に赴き、新たな視点から改善策を思考し、発表する研修でも、大きな成果が得られたと西田は続けます。

西田「新入社員には、業務効率化やコスト削減、品質改善など、さまざまな観点から改善策を考えてもらいました。ムラタの源泉であるモノづくりの現場や改善が根づいた組織風土を体験し、交流を広げることが主目的ですが、新入社員の改善策は鋭い着眼点を持ったものが多く、実際に現場に導入している点に意味があると思います」

こうした具体的な改善の成果は、人を動かし、成長させることにおいて極めて重要だと鷹野は続けます。

鷹野「研修や教育でマインドを変えることは基本的に不可能で、成功体験をはじめとする実体験・原体験がないと人は変わらないと思います。デジタルツールを活用することで生産性が上がった、業務が効率化した、品質が上がった。そういう成果があがって初めてマインドチェンジが生まれ、DXが浸透していくと思います。実体験・原体験をもとに自らDXに取り組む風土を作るために、組織として、会社としてどうバックアップし、継続させていけるかが今後のカギですね」

西田「研修や教育で変わるマインドは10%程度、あくまでもきっかけに過ぎないと考えています。スキルや知識を身につけ、身近なところから成果をあげていくことが重要です。例えば、ペーパーレスから始めてもいい。小さなところから成果を実感する機会を後押しし、全社にDXを浸透させていきたいですね」

「育つ力」を伸ばすための支援構造のイメージ画像
「育つ力」を伸ばすための支援構造

4. 新たな価値を提供し続けるために、DXをムラタの企業文化に

DX推進に必要な人材育成の取り組みを通じて、社内の雰囲気にも変化の兆しが見られると言います。

鷹野「DX推進への機運が全社的に高まり、デジタルを活用する人材にスポットライトがあたり、評価される空気が醸成されています。社会的なデジタル人材の不足が深刻化していく近い将来、ムラタにはデジタルについて学び、育ち、活躍する場所がある。そういった会社の魅力度、企業価値の向上においてもDXは大きな役割を果たすと思います」

西田「個人のWILL(意志)にはさまざまな形がありますが、DXによってそれを後押しする環境が整ってきています。こうした人材育成を通じてスキルや知識を身につけ、従業員の可能性が広がり、新しいことにチャレンジするきっかけにつながればいいですね」

西田は「こうした人材育成を通じてDXが根づくのは1年や2年先ではなく、長期的な視点が必要」だと言いますが、DXが浸透した先には大きな価値が生まれると締めくくります。

西田「DXは目標ではなく、あくまでプロセスです。けれど、避けては通れないプロセスであることも事実です。将来的に社会や市場がどんなに変化しても、ムラタが新たな価値を提供し続けていくために、DXは必要不可欠です。変化を認識し、適応していくためにも、DXを学び、実践し続けることが重要なので、これからもDX推進に必要な人材育成を継続していきたいと思います」

鷹野「個人的には、社内でデジタルやDXという言葉が消滅するくらい当たり前のものにしたいと思っています。それはつまり、DXがムラタの企業文化として根づくことを意味します。社是にある、技術を練磨するという文脈に沿って、DXを企業文化にしていく。それが現時点での1つのゴールだと考えています」

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