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DX×Murata:DXによって進化する製造業の未来

DXを加速させ、「Vision2030」を実現する戦略と挑戦

ムラタの長期構想である「Vision2030」の実現に向けて、ビジネスとITが共にドライブすることを目的にスタートしたMDX(Murata Digital Transformation)。ビジネスモデルやバリューチェーン、コアコンピタンスといった多岐にわたる領域を変革し、全社でDXに取り組む戦略について、執行役員 コーポレート本部 情報システム統括部 統括部長の須知が解説します。

1. 「人」と「データ」がつなぐハイサイクル組織を目指す

ムラタの全社的な取り組みとしてスタートしたMDX。そのベースには、「Diversity & Decision Making Process」「Definition」「Digital」という3つの“D”が内包されていると須知は言います。

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自律分散型組織運営と3つのD

須知「デジタイゼーション、デジタライゼーションをドライバーとしてデジタルトランスフォーメーションを実現していく考えです。そのために、個人やチーム、組織、拠点を超えたダイバーシティな相互理解・連携の下、意思決定プロセス(Diversity & Decision Making Process)を最適化し、KGI/KPIや組織のありようを改めて定義(Definition)していきます」

DXを通じたビジネスモデルの変革は「非常に難易度が高い」と前置きした上で、須知は「その先に『人』と『データ』がつなぐハイサイクル組織を見据えている」と続けます。

須知「ハイサイクル組織とは、仮説を立て、実行し、検証し、次の仮説を立てるサイクルを早めることでスパイラルアップし、アジャイルな意思決定を可能とする組織を意味します。それを実現するために、共通のデータを複数の人間が同時に閲覧できるデータ基盤を構築し、経営と現場・お客様やサプライヤーの情報がつながり、自律的に情報・データを活用して全体性を意識した方針展開ができる状態を目指します」

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「人」と「データ」がつなぐハイサイクル組織へ

2. すべてのビジネスプロセスをつなぎ、俯瞰的かつ効率的な最適化を図る

MDXの具体的な取り組みは、「提供価値/ビジネスモデル」「バリューチェーンスルー」「コアコンピタンス強化」をポイントに実行していくと須知は言います。

MDXの全体図のイメージ画像
MDXの全体図

須知「『提供価値/ビジネスモデル』については、従来の標準型ビジネス、用途特化型ビジネスに加え、より課題解決にフォーカスした新たなビジネスを立ち上げ、トランスフォーメーションを実行しています。デジタルを活用してこの3層ポートフォリオを強化していく中で、重要なキーワードとなるのが『バリューチェーンスルー』です」

お客様や市場を起点とするデマンドチェーン、商品開発や製造といったモノづくりのプロセスに根ざしたエンジニアリングチェーン、原材料・部品の調達から販売に至るまでを指すサプライチェーン。そのすべてをつなぎ、プロセスを最適化することがバリューチェーンスルーです。

須知「これまでムラタは、優位性のある技術とすり合わせの力でお客様のニーズを適えることを強みとしてきました。しかし、現在はそれだけでは不十分で、いかにスピーディに実行するか、いかにロスをなくすかといった観点も新たな競争軸になっています。その競争において優位性を保つために、すべてのプロセスをつなぎ、俯瞰的かつ効率的な最適化を図っていくことが重要だと考えています」

そして、「バリューチェーンスルー」を実現するために「コアコンピタンス強化」を図ると須知は続けます。

須知「ムラタの最大の強みであるモノづくりにおけるサイバーフィジカルシステムの活用、技術開発におけるMI(マテリアルズ・インフォマティクス)の活用、マーケティング・プロモーションにおけるデジタル活用を推進していきます。『提供価値/ビジネスモデル』『バリューチェーンスルー』『コアコンピタンス強化』の領域で可視化と連動を行うことで、意思決定の高度化を可能とするハイサイクル組織を確立する。これらを包括したMDXを推進していく考えです」

3. 「自律性」「全体性」「進歩性」を重視したデジタル基盤の構築

「提供価値/ビジネスモデル」「バリューチェーンスルー」「コアコンピタンス強化」に基づく意思決定の高度化において、それらの土台となるのが次世代デジタル基盤の構築です。須知は「単にデータ基盤・アプリ基盤・インフラ基盤を整備し、DXを促進することが目的ではない」と言います。

次世代デジタル基盤のコンセプトのイメージ画像
次世代デジタル基盤のコンセプト

須知「次世代デジタル基盤のキーワードは『自律性』『全体性』『進歩性』です。『自律性』とは、現場の人間が自律的にデジタルを活用し、変革を起こし、新たな価値を生み出すこと。そのためにデータ基盤を整備し、データを安全・安心に利用できるデータガバナンス機能を提供していくことが『全体性』を意味します」

「自律性」は、これまでもムラタで大切にしてきた価値観だと言います。

須知「すべての現場で行われている改善活動も、自律性がベースになっています。ただ、組織が拡大するにつれ、事業や機能といった縦軸が強化される一方、組織を横断した横軸の連携や全体最適が弱くなっていたことも事実です。だからこそ、『自律性』と『全体性』のバランスを考慮しながらバリューチェーンスルーを推し進め、各事業部や現場との連携を後押ししていく必要があると考えています」

「進歩性」は、API連携(アプリケーションプログラミングインタフェース)や仮想化技術をはじめとする最新のテクノロジーを活用することを意味します。

須知「ヨーロッパでは、サプライヤーとお客様が同一のデータ基盤やサイバーフィジカルシステムでつながり、ビジネスのスピードがどんどん加速しています。そういったグローバルな動きに後れをとらないためにも、最新のテクノロジーを導入し、社外サービス・アプリとの連携基盤を強化していきたいと考えています」

4. 従業員一人ひとりがDXを自分ごと化することでビジネスとITがドライブする

MDXでは、従業員が自律的にDXに取り組むための環境構築も重要になってくると須知は言います。

須知「例えば、デジタル活用を身近なものにしてもらうために、ムラタ環境を準備してChatGPTを提供しています。その他にも、誰もが安心して最新情報技術を利用できるクラウド活用推進体制の構築、誰もが気軽に相談できるデジタルアーキテクチャー相談窓口の開設、サイバーアタックや情報漏えいに対応したセキュリティ強化など、IT民主化に向けたさまざまな施策を走らせています」

数ある施策の中でも、情報共有の重要性を須知は強調します。

須知「MDXとしてのビジョンを示すと同時に、それによって何が起こるか、どんなメリットがあるかの進展を従業員に示し、情報共有していくことが重要です。そのための新たなポータルサイトの運用も行っています。そうした情報に触発され、従業員が実際にデジタルを活用し、課題を解決し、成功体験を積み重ねていく。自分がDX推進の主役だと、従業員一人ひとりが自分ごと化して初めて、ビジネスとITがドライブしていくと考えています」

全社的な課題としてMDXを打ち出し、取り組みを加速させる一方で、「MDXはあくまでも『Vision2030』のありたい姿を実現するための手段の1つ」だと須知は締めくくります。

須知「『Vision2030』には、社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営、自律分散型の組織運営の実践、仮説思考に基づく変化対応型経営、DXの推進といった経営変革の実行が示されており、MDXはその手段の1つです。そして、具体的に3層ポートフォリオと4つの事業機会(通信・モビリティ・環境・ウェルネス)を拡大させ、成果のサイクルの速度を上げるためにはデジタル活用が欠かせません。2030年には確かな手応えが得られるようにMDXを具現化し、『人』と『データ』がつなぐハイサイクル組織を実現していきます」

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