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エネルギーハーベストが実現する電力の未来

温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルの実現、太陽光や風力をはじめとする再生可能エネルギーの使用、あるいは省エネ対策。世界的な気候変動対策の動きを起点に、エネルギーをめぐる課題解決は目まぐるしいスピードで進んでいます。エネルギー対策にAIやIoTなどを用いたDXが進む現在は、まさにエネルギーや環境問題のパラダイムシフトが起きていると言っても過言ではないでしょう。

そうしたエネルギー分野において、新たに注目を集めているのが「エネルギーハーベスト」と呼ばれる技術です。ハーベストとは収穫という意味。身近な環境から微小なエネルギーを“収穫”し、電圧体やモジュール、センサを駆使して電力に変換する技術を指し、「環境発電」とも呼ばれています。メリットは大きく分けて2つ。1つはもちろん、太陽光や振動などから電力を生み出すので、環境にやさしいということ。もう1つは、場所のメリットです。

たとえば、山奥に土砂災害を検知するためのIoTデバイスを設置し、常時作動させるとします。しかし、場所的には電力ケーブルなどの配線を引くことが難しく、電池を使えばメンテナンスやコストが課題となります。そうしたとき、周囲の環境からエネルギーを収穫するエネルギーハーベストを活用すれば、配線が困難な場所でも自ら電力を生み出し、IoTデバイスを半永久的に作動させることができるのです。

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インフラ設備の予知保全など、常時作動が必要なIoTデバイスでの普及が期待されている

暮らしの中のさまざまなエネルギーを電力に

では、エネルギーハーベストはどのような環境からエネルギーを収穫するのか、代表的なものをいくつかみてみましょう。

振動

振動や衝撃など、物体の動きからエネルギーを取り出します。具体的には、自動車が走る道路や電車が走るレールなどの振動が挙げられます。身近なところでは、トイレの手洗い場や台所で用いられる自動水栓。水の流れを利用して電力を生み出すことができます。

生物

生物もエネルギー源になります。ある電子部品企業が開発に着手しているのは、樹液からの発電。植物の導管を通る水分(木部樹液)と電極が反応してできる微小な電力を蓄える仕組みです。また、田んぼに生息する微生物が、エサの有機物を分解する際に出す微小な電子を電力に変える取り組みも進んでいます。

機械や自動車のモータやエンジンなどが発する熱、ビルや工場の排水時に生じる熱、さらには温泉の熱などを利用して電力を生み出すことも可能です。

人体

ランニングやサイクリングといった運動はもちろん、汗や心拍から発電する技術開発が進められています。

 

微小なエネルギーを集めているため、エネルギーハーベストによる発電量はそれほど大きくないという課題はありますが、環境由来のエネルギーへの注目度は高く、さまざまな分野への応用が期待されています。

たとえば、モビリティ分野、特に電気自動車の分野では、走行時のモータの熱や振動などのエネルギーを電力に変換し、バッテリーに充電することで、自ら発電して走る電気自動車の開発が期待されています。また、24時間作動する必要があるセキュリティシステムに付随するIoT機器や、停電時でも停止が許されない人工呼吸器などを扱う医療・介護の現場での需要も存在します。

今後、エネルギーハーベストがどのように社会に浸透していくのか。そして、そのことは世界的な気候変動対策にどのような影響を与えるのか。今後も、エネルギーハーベストの進化から目が離せません。

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