コンデンサガイド

テクニカルレポート_技術編(全2回-2)

進化するコンデンサ~積層セラミックコンデンサ~

Part2 技術編 ~後編~

当コラムは"進化するコンデンサ~積層セラミックコンデンサ~Part1 技術編 ~前編~"の続編です。
まずは前編をお読みください。前編はこちら

温度特性と直流電圧特性に注意

一方,積層セラミックコンデンサのデメリットとしては大きく二つが挙げられます。
第1に,温度特性に劣ることです。具体的には,温度変化に伴う静電容量の変化が大きいものがあり、アルミ電解コンデンサは,-55~+125℃の温度範囲で容量変化は±15%程度ですが,積層セラミックコンデンサでは品種によって(例えばF特性品)は,+30~-80%の範囲で容量が大きく変わってしまいます。従って,温度が非常に高くなる自動車の室内などで使う電子機器や,スキー場などの寒冷地などで使用する電子機器に積層セラミックコンデンサを採用する場合は,容量変化の小さなB特性品等を選択して電子回路を設計する必要があります。

ただし,温度特性に劣るというデメリットは,誘電体材料にチタン酸バリウム(BaTiO3)を使う高誘電率系(クラス2)の積層セラミックコンデンサに限定されるので注意してください。酸化チタン(TiO2)を使うクラス1の積層セラミックコンデンサについては,-55~+125℃の範囲における容量の温度係数が最大±60ppm/℃と小さいです。しかし,酸化チタンは比誘電率が小さいため大容量品は製品化されていません。

第2に,直流電圧特性(DCバイアス特性)が存在することです。直流電圧特性とは,積層セラミックコンデンサに直流電圧を印加すると,実効的な静電容量が減ってしまう現象です(図3)。

図3 直流電圧特性

積層セラミックコンデンサは直流電圧を印加すると実効的な静電容量が減少する特性を持つ。
DCバイアス特性とも呼ぶ。

例えば,定格電圧が6.3Vで静電容量が100μFの積層セラミックコンデンサに直流4Vを印加すると,B特性品の場合は静電容量が約20%,F特性品の場合は約80%も減ってしまいます。アルミ電解コンデンサとタンタル電解コンデンサでは,こうした現象は起こりません。

このため,積層セラミックコンデンサを選択する場合は,適用する信号ラインの直流電圧成分を測定し,実効的な静電容量がどの程度減少するかを把握しておく必要があります(別掲記事「DCバイアスを考慮した表記法,JEITAが標準化」を参照)。ただし,「最先端の微細加工技術で製造した半導体チップは,電源電圧がかなり低くなっています。最近では,1.0V付近で動作するチップも珍しくはありません。このように、低電圧で駆動する回路においては、直流電圧特性の問題は,そう顕著に現れなくなっています。
直流電圧特性についても,問題が発生する品種はクラス2品に限定されています。チタン酸バリウムが強誘電体であることが原因のため、常誘電体である酸化チタンを使うクラス1品では,直流電圧特性の問題は起こりません。

※会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
※当記事は日経BP社ウェブサイト「Tech On! 」2010年2月~3月に掲載された内容を再構成したものです。
※当社積層セラミックコンデンサについて詳しくは以下をご覧ください。

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