RFID製品

この記事は 物流ニュースサイト「Logistics Today」に2022年2月21日に掲載された広告記事です。
202X年夏のある日、幹線道路を走行中の配送トラックのドライバーは、まっすぐハンドルを操作しているにもかかわらず、どうしても車体が左に寄ってしまうことに気づいた。急ぎの荷物を配送後に営業所に戻って車両を確認。左の後輪にひびが入り、パンク寸前だったことが分かった。ドライバーが端末を取り出してタイヤにかざし、表示されたデータを見て驚いた。「半月前にパンクを応急措置していたのか」。戻ってきた車両も端末でチェックしたところ、さらに1台のトラックのタイヤで同様の補修歴を確認。早速タイヤを新品に交換した。「大事故をひき起こすところだった」。ドライバーは胸をなで下ろした――。
このドライバーは、なぜ端末でタイヤの応急措置歴をチェックできたのか。それを可能にしたのが、RFID(radio frequency identifier)と呼ばれる技術。ID情報を埋め込んだRFタグから、電磁界や電波などを用いた無線通信を使って情報をやりとりするシステムだ。このRFIDをモジュール化してタイヤに内蔵することで、製造・装着時期や交換のタイミング、補修歴などのあらゆる「履歴」を確認できるシステムの開発が着々と進み、ついに仏タイヤメーカーMichelin(ミシュラン)の手で商品化されることになった。
村田製作所とミシュランがタイヤ内蔵RFID共同開発(2021年12月13日掲載)
商品化に貢献したのが、ミシュランと共同でRFIDモジュールの開発に携わった、電子部品メーカーの村田製作所だ。ここでは、タイヤ内蔵用RFIDモジュールの開発や市場展開を推進する村田製作所の戦略に迫る。
高さ1ミリ、奥行き1ミリ、幅6ミリ。小指の上に載せられる超小型の直方体を示しながら、村田製作所のRFID事業推進部ビジネスディベロップメント課シニアマネージャー・福原将彦氏は語る。「これが、村田製作所がミシュランと共同で開発したRFIDモジュールです」。ミシュランがグローバル市場で展開するバス・トラック用タイヤに埋め込まれているのが、まさにこのモジュールを活用したタイヤ内蔵用RFIDタグだ。
タイヤは、ゴムをはじめとしてカーボンブラックや硫黄などの配合材、さらにスチールなどの構造材などを混合して作られている。これらの材料を高温・高圧で加工する過程で、このRFIDモジュールを内蔵する。タイヤが出来上がった段階では、ゴムの中に埋め込まれてしまっているというわけだ。
タイヤにRFIDを内蔵するためには、こうした高温・高圧の過酷な環境でもRFIDの通信など各種機能が失われない「耐久性」と「小型化」が欠かせない。「そこで、村田製作所の通信市場で培った高周波・小型化技術や自動車市場における技術的知見が役立つことになったのです」(福原氏)
ミシュランが着目したのも、まさにこうした村田製作所の技術力だった。両社の出会いは2016年のある展示会。ミシュランの担当者は、村田製作所の出展ブースで通信機器システムのデモンストレーションを目にして、衝撃を受けた。
実は、ミシュランは村田製作所と共同開発をする前に、米ハナ・テクノロジーズとRFIDタグの開発を手がけていた。ミシュランはハナ製RFIDタグを内蔵した商用車用タイヤを開発して販売を始めたものの、タグの耐久性に課題を見えてきた。
新たにミシュランの開発パートナーとなった村田製作所は、独自の技術でRFID用ICとRF回路を小型モジュール内に収め、ハナ社のらせん状アンテナの内側にモジュールを収納することで、磁界結合されている。その実現にどうしても必要だったのが、らせん状アンテナに収納できるモジュールの「小型化」だった。
「タイヤに埋め込むRFIDには、高温加工に耐えられるだけでなく、車両走行時の振動や衝撃に耐える堅牢性も求められます。村田製作所のRFIDモジュールはミシュランの走行試験もクリアしており、RFIDタグの故障リスクを大幅に抑制できるとみられたことから、本格的な市場展開のゴーサインが出たのです」(福原氏)。村田製作所のモジュールにハナ製のアンテナを組み合わせてミシュランのタイヤに内蔵することで、トラックとバス向けのRFID内蔵タイヤ製品の商品化にこぎつけた。ミシュランとの共同開発開始から6年が経とうとしていた。
東京ビッグサイトでことし1月19日から3日間開催された「第14回国際カーエレクトロニクス技術展」。村田製作所ブースで披露されたタイヤ内蔵用RFIDタグに、多くの来訪者が驚きの声を上げた。拡大するタイヤ市場において、タイヤの安全性の保証や製造時の物流効率化、個々のタイヤのライフサイクルを管理することなどが課題となっている。その解決を支援する取り組みとしてRFIDタグをタイヤに内蔵する発想は、あまりにも斬新だったのだ。
村田製作所はこのタイヤ内蔵用RFIDタグについて、タイヤの安全性を担保するための取り組みを軸として、さらに幅広い領域に導入できる武器とする構想を温めている。その一つが、工場や物流倉庫におけるタイヤ製品の在庫管理の効率化支援だ。
一般的に在庫管理は現状、先進的手法としてバーコードをリーダーで読み取る方法が使われている。とはいえ、未だ伝票を従業員が手作業でチェックしている現場も数多い。ここでRFIDを内蔵したタイヤが普及すれば、ゲートを通るだけで在庫確認が可能になる。バーコードリーダーを上回る現場業務の効率化につながる可能性が高い。
福原氏は強調する。「タイヤメーカーに、RFID内蔵タイヤの活用領域を提案する。協力して普及拡大を図っていくのが、村田製作所の戦略です」
2024年ごろを目処に、商用車に加えて乗用車にもRFID内蔵タイヤ製品の導入を広げていくミシュラン。村田製作所がその指南役を買って出ることで、自らビジネスチャンス拡大につなげる。さらにはミシュラン以外のタイヤメーカーへの普及にも踏み込んでいく。まさに壮大な計画が始まろうとしている。
村田制作所のRFIDタグはこちら
ミシュランとのタイヤ内蔵用RFIDモジュールの共同開発で、RFIDの活用方法で新境地を開いた感もある村田製作所。しかし、RFIDモジュールの開発力もさることながら、製品供給だけで終わらないのが、村田製作所の強みと言えるだろう。
RFIDを将来のさらなる成長領域と位置付ける村田製作所は、製品供給をテコにトータルソリューションでRFIDシステムの導入を支援する取り組みを独自に構築している。その具体的な仕組みが、RFID関連機器の制御や取得したデータの集計などの役割を果たすミドルウェア「id-Bridge」(アイディーブリッジ)だ。
ここで、id-Bridgeについて説明しておこう。id-Bridgeはサーバー上でプリンタやリーダライタなど各RFID機器の制御を行いつつ、id-Bridgeトライアルソフト(標準ソフトウェア)などのウェブアプリケーションと連動してRFIDタグの読取履歴をデータベースに記録することができるミドルウェアだ。
ERP(企業資源計画)やMES(製造実行システム)などの基幹システムとの連携には、REST API(ウェブシステムを外部から利用するためのプログラムの呼び出し規約「API」の一種でRESTと呼ばれる設計原則に従い策定されたもの)のインタフェースを追加することで、id-Bridgeと双方向で連携が可能となる。ハンディ端末を使用する際には、アンドロイド専用のモバイルアプリケーションも準備している。
id-Bridgeにはブラウザ画面で閲覧できるダッシュボード機能があり、設定条件に合わせたタグの読取履歴も確認できる。例えば、各拠点の最新の在庫数量を確認したり特定の製品の流通履歴を追跡したりと、ステータスの確認が可能である。その読取履歴や在庫情報などのデータをCSVやExcelで出力する機能も標準装備している。
一般的に基幹システムとの連携を前提としたシステム構築には大規模な投資が必要となるが、村田製作所では低価格で短期間で顧客にRFIDの実証実験の環境を構築できるよう、id-Bridgeトライアルサービスを用意している。RFIDタグの発行や検品作業、棚卸、製品探索など、医療分野の幅広い物流管理業務プロセスに適応可能で、医療分野以外の物流管理業務への導入にも適している。
タイヤ内蔵用RFIDタグも、このid-Bridgeを活用することで、ソフトウェアとの連携や読み取りデバイスの構築、導入に向けたコンサルティングなどのサービス面でも支援まで含めた幅広いサポートビジネスを展開することで、顧客に導入メリットを訴求し普及拡大を推進するというわけだ。
RFIDソリューションの詳細はこちら
id-Bridgeトライアルの資料ダウンロードはこちら
タイヤが生産されてから廃棄されるまで一貫して管理できる唯一の手段である、タイヤ内蔵用RFIDタグ。倉庫での在庫管理を含めたサプライチェーン管理にも活用できるなど、使い手のアイデアによって多様な管理業務の最適化・効率化を実現していく。これが村田製作所のRFIDソリューションの目指す姿だ。
物流業界では、業務効率化を実現するためのDX(デジタルトランスフォーメーション)化が注目を集めている。RFIDも物流DX化の一つの手法として広がりを見せ始めているが、開発メーカーがその使い方を広く周知するのに手をこまねいている印象もあった。村田製作所は独自のソリューションを通して、新たな物流をはじめとする広く社会に貢献する取り組みを実現する強力な武器として、RFIDの可能性を提示しようとしている。
「新しい生活様式」の時代の到来を見据えて、物流をフックとした社会の変革が加速するであろう将来、村田製作所はRFIDのもたらすトレーサビリティーの可能性をどこまで追求していくのか。今後もその取り組みの行方から目が離せない。
©2022 LOGISTICS TODAY株式会社