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人とくるまのテクノロジー展 2023 出展レポート

村田製作所は、2023年5月24日~26日には横浜のパシフィコ横浜にて、7月5日~7日には名古屋のAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)にて開催された自動車産業国内最大級の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展」(公益社団法人自動車技術会)に出展。自動車業界が推し進める電動化、自動化、コネクテッド化、機能制御の電子化の取り組みを後押しする、ムラタの最新技術・製品を披露いたしました。

ここ数年の開催では、コロナ禍の中、自動車産業の関係者の方々がリアル会場に足を運びにくい状況が続いていました。今回の開催では、多くの来場者に、実際に会場に来て、みて、触って、最新テクノロジーの最前線の動向を実感していただきました。ムラタブースの説明員との間では、展示に関する活発な質問・議論が交わされ、数多くのご評価、ご示唆をいただきました。ここでは、名古屋会場での展示を中心に、ブース内で披露した技術・製品とデモの様子を紹介いたします。

CASEに沿ったクルマの進化を、電子部品のチカラで後押し

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脱炭素化・サステナビリティを目指す取り組みが世界的に加速し、自動車業界においては、いよいよ電気自動車(EV)の本格的成長期が到来しつつあります。一方、装備車が年々拡大してきた先進運転支援システム(ADAS)の機能もますます高度化。さらなる安全性向上に向けた技術開発が進められています。加えて、市場投入車の大部分に通信機能が標準搭載されるようにもなり、クラウドや周囲のクルマ、交通インフラなどとつながることで、さまざまなサービスが提供されるようになりました。

ムラタのブースでは、これまで磨き続けてきた技術の粋を惜しみなく注いだ、社会と自動車業界の要請に応える数々のソリューションを提案。その効果と価値を、実物・パネル展示・デモなどを通じて感じていただきました。そして、モビリティ業界に携わる技術・製品を企画・開発されている方々からは、

「機能や性能、価格、市場投入時期など、採用の可否を検討できる詳細な情報が知りたい」
「センサを使って、クルマの内外から、思いのほか多くの価値ある情報を収集できることに驚いた」
「事前情報で知った新技術の実物とデモをみるためにブースを訪れたが、期待どおりだった」
「提案されたソリューションを自社課題の解決策として活用できるか、情報を持ち帰って検討したい」

といった多くの声をいただきました。

ムラタは、こうした自動車業界の方々の声に真摯に耳を傾け、密に連携しながら、自動車のよりよい進化を後押しする価値ある電子部品のソリューションを共に開発・提供していきたいと考えております。そして、エレクトロニクス業界のイノベーターとして、信頼性に優れたコンデンサなどの受動部品や先進安全システム向けのセンサ、通信モジュールをはじめとするソリューションの開発・提供を通じて、スマートかつ快適なモビリティ社会の実現に貢献いたします。未来にむけて常に自動車業界と並走する村田製作所にご期待ください。

INDEX

提案1:より魅力的で、利便性の高いEVの実現にむけて

・EVの高付加価値化を支援するノイズ対策用樹脂モールド面実装タイプMLCC:EVAシリーズ【新製品】

・高精度な温度検知で電動車用バッテリの高性能化と安全確保を支援:SMD NTCサーミスタ

・X in 1統合パワーエレクトロニクス向け車載高耐熱フィルムコンデンサ

提案2:より安全で、快適なクルマの自動化にむけて

・E/Eアーキテクチャの刷新と自動運転/ADASでの要求に対応する電子部品群

・広範囲かつ高精度な距離検知でより安全な自動ブレーキを実現:超音波センサ【開発中】

・乗員の健康状態をセンサで常時見守り安全運転を支援:乗員モニタリングセンサ【参考出品】

・GPS電波が届かない場所でも自車位置を正確に特定:慣性力センサ SCHA600

提案3:多様なシーンで確実接続できるコネクテッドカー実現にむけて

・2種類の主要規格に準拠したV2X向け通信モジュール:Type 1YL / Type 2AN

・輸送業界のDX実践を後押しするRFID内蔵タイヤ

提案4:さらなるクルマの進化を支える、ムラタの技術・製品

・運送・交通業界のドライバーの疲労を可視化して安全運行を実現:疲労ストレス計 MF100

・街灯にセンサと通信機能を組み込んで住民と社会を見守る:スマートポール対応技術

・8つの解析機能を1パッケージ化した設計者用シミュレーションソフト:Femtet(フェムテット)

提案1:より魅力的で、利便性の高いEVの実現にむけて

EVの高付加価値化を支援するノイズ対策用樹脂モールド面実装タイプMLCC:EVAシリーズ 【新製品】

最新のEV開発では、航続距離の延長と充電時間の短縮を狙って、従来約400Vだったバッテリ電圧を800V以上へと高圧化する動きが出てきています。EVAシリーズは、小型・低背(12.7×6.0×3.7mm)でありながら、安全規格に準拠した高電圧負荷時に要求される沿面距離を確保できる、EV向けノイズ対策用の樹脂モールド面実装タイプの積層セラミックコンデンサです。800V帯の高電圧バッテリを搭載したEVの車載充電器(OBC)やモータ駆動用インバータなどに適用し、高い安全性を確保したノイズ対策部品として活用できます。これまで活用していたフィルムコンデンサや大型の単板コンデンサと置き換えることで、回路基板の小型化が実現。車室空間の拡大や電装品配置の自由度向上、バッテリ容量の増加に貢献できます。また、リフローでの実装が可能なため、組み立てコストの低減も後押しします。

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高精度な温度検知で電動車用バッテリの高性能化と安全確保を支援:SMD NTCサーミスタ

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大容量・高出力のバッテリを搭載する電動車の安全確保と性能向上には、熱暴走を確実に防ぐための高精度な温度検知に基づく精緻な熱制御が不可欠になります。ムラタは、車載バッテリセルの熱暴走対策に貢献できる、AEC-Q200準拠で、小型・高精度なSMD NTCサーミスタ(温度センサ)を提供します。最小0.6×0.3mmと小型製品もラインアップしており、検知温度精度も最小0.18℃@25℃と高精度です。近年、これまでケーブルでつないでいたバッテリセルを、フレキシブル基板でつなぐ構成へと変更したバッテリモジュールが増えています。SMDタイプのNTCサーミスタならば、フレキシブル基板上への表面実装が可能になり、バッテリモジュールの組み立てコストの低減に貢献します。また、フレキシブル基板上に実装することでセンサとセル表面の接触面積が広くなり、高速応答が実現。これによって、異常発生を迅速に検知し、深刻化する前に対処することが可能になります。

X in 1統合パワーエレクトロニクス向け車載高耐熱フィルムコンデンサ

電動システムの構成要素であるインバータやモータ、ギア、車載充電器(OBC)、DC-DCコンバータなどのパワーエレクトロニクス機器では、EVの普及を見据えて、E-Axleで見られるような機能統合が進んでいます。こうした潮流の中、高電圧・大電流の電力を扱う回路に用いる高容量のフィルムコンデンサでは、電力密度の増大に対応できる高耐熱・低背の製品が求められるようになりました。ムラタは、セラミックコンデンサの開発を通じて培った高品質化・小型化の知見を活かして、新たな要求に応える車載高耐熱フィルムコンデンサを開発しました。これまでのフィルムコンデンサは、耐熱が85℃~105℃と電力密度の高いパワーエレクトロニクス機器向けとしては十分ではありませんでした。ムラタが開発したフィルムコンデンサでは、独自開発したフィルム材料を採用することで、125℃~135℃と高耐熱化を実現。統合化が進む車載パワーエレクトロニクス機器の小型・軽量化に貢献します。

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提案2:より安全で、快適なクルマの自動化にむけて

E/Eアーキテクチャの刷新と自動運転/ADASでの要求に対応する電子部品群

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自動車での自動化と制御電子化の急激な進展に対応するため、「電気/電子アーキテクチャ(E/E architecture)」を、より効率的で効果的な構成へと刷新する動きが進んでいます。従来の分散型のアーキテクチャが、最新車種では機能種別ごとに処理システムを分散配置する分散ドメイン型へと、開発最前線では中央の高性能コンピュータに機能統合する集中ドメイン型へと変貌を遂げつつあります。こうした中、電気/電子回路に搭載されるSoCの高性能化や電源アーキテクチャの分散化、車載ネットワークの高速化に対応する電子部品が求められるようになりました。ムラタでは、電子部品の材料、工法、構造を最適化することで、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)での要求に適合する小型・高信頼性を実現した電子部品を開発・提供していきます。

広範囲かつ高精度な距離検知でより安全な自動ブレーキを実現:超音波センサ 【開発中】

安全な自動ブレーキシステムや自動駐車システムを実現するために、自車と周囲のクルマやモノの距離をより広い範囲で高精度に検知できる超音波センサが求められています。ムラタは、近距離と遠距離双方の性能をさらに向上させた超音波センサを開発中です。共振周波数の公差を従来比50%に低減させることで、最大550cmの範囲での距離検知性能を安定化させました。加えて、静電容量の公差も従来比50%に低減することで、従来品では30cmだった最小検知範囲を15cm以下にまで縮め、近距離性能を向上させました。さらに、低Q化とQ公差の規格化によって、コーディングICとの融和性を実現。温度特性も向上させました。ムラタでは、パーキングアシストなど車両周囲の状況検知などに適した79GHz帯のミリ波レーダーソリューションも開発しています。

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乗員の健康状態をセンサで常時見守り安全運転を支援:乗員モニタリングセンサ 【参考出品】

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ドライバーが安全運転できる状態であるためには、運転中の健康状態が常に良好である必要があります。ムラタでは、呼吸や心拍といった生体信号を検知して、クルマの乗員の存在や状態をモニタリングできる、座席シート中に組み込んで使うセンサを開発しています。高感度、高分解能で、しかもワイドレンジでの計測が可能です。乗員がシート上に座ることによる大きな荷重変動と、呼吸や心臓の動きによる微小な荷重変動を、ひとつのセンサで同時計測ながら分別可能です。ドライバーの健康状態を見守ることによる安全確保や、シート上に置かれたモノと乗員を判別できる高機能シートベルトリマインダー、エアバッグを安全に作動させるための乗員検知などに活用できます。ムラタでは、車室内での子どもの置き去り検知などに適した60GHz帯のミリ波レーダーソリューションも開発しています。

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GPS電波が届かない場所でも自車位置を正確に特定:慣性力センサ SCHA600

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安全な自動運転システムや先進運転支援システム(ADAS)の実現には、自車位置を高精度で特定できるセンシング手段の採用が必須です。しかし、トンネル内などGPS電波が届かない場所では、位置の特定が困難になります。SCHA600は、高精度でのモーション検知・位置検知を実現する6軸ワンパッケージ慣性力センサです。デジタルSPI通信によるデータ出力に対応しています。検知範囲は、ジャイロは±125dpsまたは±300dpsで、加速度は±6gです。また、機能安全のレベルでASIL-Dが求められるシステム開発への適用可能です。優れた耐振動特性も備えており、加えて広範囲の異常を検知できる常時自己診断機能も搭載しています。AEC-Q100に準拠しています。

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提案3:多様なシーンで確実接続できるコネクテッドカー実現にむけて

2種類の主要規格に準拠したV2X向け通信モジュール:Type 1YL / Type 2AN

自動運転を実現するためには、自車搭載したセンサだけでは検知できない情報を、周囲のクルマや信号機など交通インフラから収集する仕組みが必要になります。その実現には、V2V(車車間)やV2I(車とインフラ間)の通信機能の搭載が欠かません。Type 1YL / Type 2ANは、ムラタが初めて開発した、DSRC方式(IEEE801.11準拠)とセルラーV2X方式(3GPP Release14/15、PCS準拠)の両方に対応するV2X向け通信モジュールです。V2Xチップセット市場を世界的にリードするAutotalks社製のAEC-Q100に準拠したチップセットを搭載。ムラタの高周波RF設計技術や独自の高密度実装技術を活かして、高い品質、堅牢性、パフォーマンスレベルのモジュールに仕上げました。V2Xでは、国や地域によって対応するべき規格の方式が異なりますが、Type 1YL / Type 2ANならば、簡単に仕向け地での要求に対応できます。

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輸送業界のDX実践を後押しするRFID内蔵タイヤ

人手不足に悩む輸送業界では、タイヤの点検・修理にともなうトラックのダウンタイム削減などが喫緊の課題となっています。ムラタは、Michelin社と共同でタイヤ内蔵型RFIDを開発しました。輸送業界でのデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を後押しする技術です。開発したタイヤ内蔵型RFIDを活用することで、在庫・物流管理や個品単位での残溝記録、リトレッド(更生)履歴の記録などのタイヤ管理作業の効率化が可能になります。UHF帯RAIN RFID(865~920MHz)を使用した小型(縦1.8mm幅~40mm)のタグであり、タイヤ加工や走行中の衝撃にも耐える耐久性を備えています。また、ムラタ独自のアンテナ設計を施すことによって、タイヤ内蔵後も良好な通信特性を実現できます。

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提案4:さらなるクルマの進化を支える、ムラタの技術・製品

運送・交通業界のドライバーの疲労を可視化して安全運行を実現:疲労ストレス計 MF100

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輸送業界や公共交通業界では、安全運行にむけて適切なドライバーの疲労管理が求められています。また、自動車業界を始めとする製造業の現場でも、安全確保と効率向上にむけて同様の課題を抱えています。MF100は、心拍のゆらぎを検知することで疲れを簡単・高精度に可視化する疲労ストレス計です。ムラタのセンサを用いて非侵襲検知した心拍・脈拍のデータを基に自律神経の状態を数値化。それを蓄積したビッグデータを医学的な裏付けのあるアルゴリズムで解析することで、交感神経と副交感神経のバランスと偏差値についての情報を抽出します。これによって、客観的な評価が難しかった「疲労・ストレス度」を可視化し、製造現場での従業員の健康管理や労働環境の改善活動などを支援します。また、クルマに搭載する快適設備の開発において、開発品の効果を客観評価するような用途にも活用可能です。

街灯にセンサと通信機能を組み込んで住民と社会を見守る:スマートポール対応技術

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街灯に5G基地局や環境センシングなどの多様な機能を統合したスマートポールが、スマートシティの中で人の見守りや社会活動を効率的かつ効果的に把握するための重要な要素として期待されています。ムラタは、交通量や人の往来、大気中のCO2濃度などを検知する各種センサ、および多様な通信モジュールなどの開発・供給を通じて、スマートポールの高度化に貢献していきます。2023年5月には京都府長岡京市と包括提携を締結。年内には実際にスマートポールを設置して、蓄電、発電と合わせてカーボンニュートラル達成にむけて今後取り組んでいきます。

設計者用シミュレーションソフト:Femtet(フェムテット)

Femtetは、8つの解析機能を1パッケージ化した、開発・設計者の多様な解析ニーズに応えるユーザーフレンドリーな解析シミュレーションソフトウェアです。電磁波、磁場、電場、応力、熱伝導、流体、圧電、音波の有限要素法解析、およびこれらの連成解析を電卓感覚で手軽に実施できます。材料、境界条件、ボディ属性、モデルのデータベース管理機能が標準装備されており、各自で作成したデータを開発チーム全体で共有・使用できます。ムラタが約40年間にわたって独自改良を重ねてきた国産ソフトウェアです。

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自動車産業が取り組む大変革を完遂するためには、これまで自動車業界内で蓄積してきた技術や知見に加え、他業界で培った新たな発想に基づくイノベーションが必要になってきています。ムラタでは、セラミックスをベースとした電子部品の開発・生産・販売を通じて、材料技術、プロセス技術、商品設計技術、生産技術、それらをサポートするソフトウェア技術や分析・評価技術などを蓄積してきました。これらの技術基盤を活用して、自動車の進化を後押しする独創的な製品・ソリューションを創出し、自動車産業のさらなる発展、スマートかつ快適なモビリティ社会の実現に貢献していきます。

記事の内容は、展示会出展時の情報です。最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

疲労ストレス計は医師監修の評価基準で「疲労」「ストレス」を客観的に見える化し、輸送業界や公共交通業界におけるドライバーの疲労・ストレス管理をサポートします。

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