ノイズ対策技術 / 事例紹介(民生)
Wi-Fi 6におけるノイズ対策-1
1. Wi-Fi 6の登場
Wi-Fiの新しい規格IEEE802.11axが制定され、『Wi-Fi 6』 と名付けられました。
変調多値化(1024QAM)による最大伝送速度の向上や、複数ユーザーへの効果的なパケット割り振り技術(OFDMA)により混雑環境に強いという特徴があり、駅や空港など過度に混み合う場所での公共Wi-Fiなどへ応用が期待されています。
ただし、変調多値化(1024QAM)はノイズに弱くなるという側面があるため、従来規格よりもノイズ対策の重要性が増す可能性があります。

Wi-Fi 規格の移り変わり
Wi-Fi 規格名 | 最大通信速度 | 周波数 | 新呼称 | 年 |
---|---|---|---|---|
IEEE 802.11a | 54Mbps | 5GHz 帯 | - | 1999 |
IEEE 802.11b | 11Mbps | 2.4GHz 帯 | - | 1999 |
IEEE 802.11g | 54Mbps | 2.4GHz 帯 | - | 2005 |
IEEE 802.11n | 600Mbps | 2.4GHz 帯 5GHz 帯 | Wi-Fi 4 | 2010 |
IEEE 802.11ac | 6.9Gbps | 5GHz 帯 | Wi-Fi 5 | 2015 |
IEEE 802.11ax | 9.6Gbps | 2.4GHz 帯 5GHz 帯 | Wi-Fi 6 | 2020 |
2. EVM許容値の確認
Wi-Fi 6で考えられるノイズ問題は送信特性・受信特性の悪化です。
送信特性を表すパラメータとしてEVMというパラメータがあり、規格上EVMが-35dB以下になるよう設計されますが、周囲のノイズの影響により、実際は設計値よりも悪化していることが考えられます。Wi-Fi 6のモジュールを用いて下図の測定を行い、1024QAMの通信でEVMの悪化がどれだけ許容されるのか確認しました。

■測定条件
出力:-20dBm(At SG Port)
周波数:5210MHz
帯域幅:80MHz
データレート:11ax MCS7/9/11
S/N比:50~18dB
3. EVM許容値の確認結果
下図は「PER vs EVM」の測定結果です。
通信品位を満たす基準をPER(packet error rate)10%以下とした場合、1024QAMの場合はEVMが-29dbm以下である必要があることがわかりました。

このときの、EVMと送信波形のS/N比の関係を下図に示します。
1024QAMは規格に準ずるEVM-35dBm満たす設計をしていても、そこからS/N日が5dB劣化すると通信が困難になることがわかりました。
64QAMのときは必要なマージンが12dBであったのに対して厳しい状況になっており、ノイズ対策を行う重要性が増しています。

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