ノイズ対策技術 / 事例紹介(民生)

差動インターフェイスのノイズ対策~イントラシステムEMC~(1)

1. 差動インターフェイスと無線通信モジュールの普及

近年、スマートフォンをはじめとするデジタル機器は、機器内外で高解像度・大容量のデータ伝送が必要になっており、様々な差動インターフェイスが採用されています。

差動インターフェースの最新規格の表
差動インターフェースの最新規格

一方で、インターネットとのデータ伝送のために無線通信モジュールが搭載されるようになりました。その中でもWi-Fiはポピュラーな無線通信として普及しています。

Wi-Fiの無線通信フロー図

2. 差動インターフェイスのノイズ問題

差動インターフェイスの高速化と無線通信の普及により、イントラシステムEMCが顕著となっています。

イントラシステムEMCの説明図

イントラシステムEMC:USB3.2 によるノイズが機器内のWi-Fi アンテナに干渉し、Wi-Fi通信品質を劣化させる現象。

公規格に対するEMC:機器本体やUSB3.2ケーブルから放射したノイズが、公規格の限度値を超過する現象。

3. 放射エミッションのノイズ対策手法

差動インターフェイスにコモンモードチョークコイル(CMCC)を挿入します。CMCCはノイズ源の近傍に搭載するのが効果的です。

Tx信号のノイズ源=USB IC側

Rx信号のノイズ源=USB コネクタ側

コモンモードチョークコイル(CMCC)の搭載前の図
Before
コモンモードチョークコイル(CMCC)の搭載後の図
After

推奨フィルタ

コモンモードノイズを効果的に除去することができ、信号波形に悪影響を与えません。また、一部ICメーカーの推奨を得ています。

4. Wi-Fiアンテナ結合ノイズ(1)単純な基板による調査

USB Type-Cコネクタ付きの評価基板を用いてUSB3.2伝送時のアンテナ結合ノイズを評価しました。
信号源は、USB3.2対応のノートPCで、シンク機器にSSDを用いています。また、評価基板から5cm離した位置にオムニアンテナを設置しました。

USB3.2を伝送した時、評価基板配線から放射するノイズが、どの程度アンテナに結合するのか調査しました。
また、CMCCでの対策効果の比較を行いました。

単純な基板による調査の図

5. Wi-Fiアンテナ結合ノイズ(1)単純な基板による調査結果

緑vs赤(基準)
CMCCをノイズ源遠方に配置すると、ノイズが約2dB改善しました。
青vs赤(基準)
CMCCをノイズ源近傍に配置すると、ノイズが約5dB改善しました。

結果、CMCCの搭載位置によって、3dBの差が生じました。

USB3.2伝送時におけるオムニアンテナへの結合ノイズのグラフ画像
USB3.2伝送時におけるオムニアンテナへの結合ノイズ

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