ノイズ対策技術 / 事例紹介(民生)

差動インターフェイスのノイズ対策~イントラシステムEMC~(2)

6. Wi-Fiアンテナ結合ノイズ(2)実際の機器による調査

USB3.2対応+Wi-Fiアンテナ搭載の電子機器を用いて、アンテナ結合ノイズ評価を実施しました。
アンテナは、機器内に搭載されたアンテナを用いました。

USB3.2を伝送した時、評価基板配線から放射するノイズが、どの程度アンテナに結合するのか調査しました。
また、CMCCでの対策効果の比較を行いました。

実際の機器による調査の図

7. Wi-Fiアンテナ結合ノイズ(2)実際の機器による調査結果

緑vs赤(基準)
CMCCをノイズ源遠方に配置すると、ノイズは改善しませんでした。
青vs赤(基準)
CMCCをノイズ源近傍に配置すると、ノイズが約5dB改善しました。

結果、実際の電子機器を用いた場合でも、CMCCの搭載位置によって5dBの差異が生じました。

実際の機器による調査結果の図
USB3.2動作時におけるWi-Fiアンテナへの結合ノイズ

8. 実際の機器によるイントラシステムEMCの調査

USB3.2対応+Wi-Fiアンテナ搭載の電子機器を用いて、Wi-Fi受信感度評価を実施しました。

USB3.2通信中、電子機器とWi-Fiテストセット間でWi-Fi通信を行いました。その時、USB3.2通信無しの時と比較して受信感度が劣化するかを確認しました。また、CMCCでの対策効果の比較を行いました。

実際の機器によるイントラシステムEMCの調査の図

9. 実際の機器によるイントラシステムEMCの調査結果

緑vs赤(基準)
CMCCをノイズ源遠方に配置すると、受信感度は1dB改善しました。
青vs赤(基準)
CMCCをノイズ源近傍に配置すると、受信感度が8dB改善しました。

結果、実際の電子機器におけるWi-Fi受信感度の場合でも、CMCCの搭載位置によって7dBの差異が生じました。

実際の機器によるイントラシステムEMCの調査結果の図

10. 信号波形への影響

CMCCの挿入により信号波形に影響が出ないかをUSB3.2コンプライアンステストを用いて確認しました。こちらは、USB3.2の波形コンプライアンステスト環境を用いて、アイパターン評価を行っています。

信号波形への影響テストの図

11. USB3.2 アイマスクテスト結果

Keysight SDAとUSB-IFとアイマスクテストを行った結果、コモンモードチョークコイルNFG0QHB372を使用しても波形に悪影響はありませんでした。

Keysight SDAの波形グラフ画像
Keysight SDA
USB-IFの波形グラフ画像
USB-IF

12. まとめ

アンテナ結合ノイズ評価

  • USB3.2の信号伝送時、2.4GHz帯に結合するノイズが観測されます。
  • CMCCをノイズ源近傍に搭載すると、2.4GHz帯へのアンテナ干渉が改善されます。
  • 一方、CMCCをCPUから離れたUSBコネクタ付近に搭載するとあまり干渉が改善されません。

Wi-Fi 受信感度評価

  • USB3.2の信号伝送時、Wi-Fiの2.4GHz帯の受信感度が劣化しました。
  • CMCCをノイズ源近傍に搭載すると、2.4GHz帯のWi-Fi受信感度が改善されました。
  • 一方、CMCCをノイズ源遠方に搭載すると受信感度が改善されません。

シグナルインテグリティ

  • 適切なCMCCを選べば信号波形品位は問題ありません。

⇒イントラシステムEMC対策においては、CMCCの搭載位置が重要であると言えます。

ムラタが推奨するコモンモードチョークコイル

差動伝送ラインのノイズ対策には以下のCMCCを推奨します。

コモンモードノイズを効果的に除去することができ、信号波形に悪影響を与えません。また、一部ICメーカーの推奨を得ています。

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