DLM0NSB120HY2

ノイズ対策技術 / 事例紹介(民生)
INDEX
HDMIはデジタル映像と音声の伝送を目的として設計された差動デジタルインターフェイスであり、AV市場を中心に普及しています。
HDMI2.1は従来のHDMI2.0を拡張したもので、従来の2倍の高速化がはかられています。
HDMI2.1は従来のHDMI2.0と比べて最大データ転送量が約2.7倍で、1レーンあたりの最大信号伝送速度は2倍に高速化されています。
また、HDMI2.0がデータライン3ラインとクロックラインで構成されていたのに対して、HDMI2.1ではクロックラインがなくなり、データラインが4レーンに増やされています。
HDMI2.0(conventional standard) | HDMI2.1(new standard) | |
Maximum data rate | 18 Gbps(6Gbps/lane ×3) | 48 Gbps(12Gbps/lane ×4) |
number of lanes | data 3 lane clock 1 lane |
data 4 lane clock 0 lane |
connector, cable | specified by the conventional standard | new(category 3)upward compatibility |
receiver equalizer | must | must |
このように、HDMI2.1は従来よりも高速な信号を伝送するため、ノイズ対策を行うにあたっては、信号の品位を損なわないように注意する必要があります。
HDMI通信を行ったときのノイズ問題は以下の2通りが考えられます。
放射ノイズ①:HDMI起因のノイズが機器内部でWi-Fiアンテナに干渉し、Wi-Fi通信感度が悪化する(イントラシステムEMC)
放射ノイズ②:HDMI機器またはケーブルからノイズが放射する(エミッション)
ここでは、放射ノイズ①のイントラシステムEMCに着目し、対策方法を検討しました。
通常のノイズフィルタはHDMIのような高速差動信号ラインに使用すると信号品位を劣化させて信号がうまく伝わらないため、コモンモードチョークコイル(CMCC)を使用するのが適しています。HDMIの信号は高速なので、CMCCの中でもより高速信号に適したものを選択します。
CMCCをHDMIのSource側ICの出力ピン付近とSink側のコネクタ付近に設置します。Source側のCMCCにより、Source側のTransmission ICから発生したコモンモードノイズをIC付近に配置したCMCCで抑制でき、Sink側にコモンモードノイズが伝搬することを防ぐことができます。
Sink側のCMCCにより、Sink機器のHDMI信号配線から発生するコモンモードノイズをCMCCで抑制でき、コモンモードノイズがWi-Fiアンテナに結合することを防ぐことができます。
まず、HDMI通信により、Wi-Fiにどれくらい影響が出ているかを確認しました。
HDMI2.1の通信が開始されるとWi-Fiの受信感度が2.4GHz帯、5GHz帯で6-10dB低下していることが確認されました。実際にWi-Fiに侵入しているノイズを確認すると、2.4GHz帯や5GHz帯に重なっていることがわかります。
CMCC(DLM0NSB120HY2)を取り付けることにより、3-4dBの改善が見られました。
次は放射ノイズ対策について調べました。
まず、HDMI2.0とHDMI2.1のノイズスペクトラムにどのような違いがあるかを確認しました。
HDMI2.1のほうがより高い周波数のノイズが発生していることがわかりました。
CMCC(DLM0NSB120HY2)をSource側に取り付けることにより、HDMI2.1のノイズを除去することができました。
なお、CMCC使用後に残っている放射ノイズがありますが、その多くはSource側の機器の基板に別途搭載されたDRAMの放射ノイズでした。
HDMI2.1 アイマスクテストの結果、CMCC使用前後の信号波形は同等であることが確認できました。
ACコモンモードノイズはCMCCを使用することにより47%改善されました。
HDMI2.1の通信時にWi-Fiの受信感度が低下する問題が発生していましたが、CMCCを使用することにより改善しました。
HDMI2.1では1GHzから6GHzにわたって放射ノイズが発生していましたが、CMCCを使用することで改善しました。
CMCCを入れてもアイマスクテストに影響はありませんでした。
CMCCを使うことにより、ACコモンモード電圧が低減されました。