ノイズ対策技術 / 事例紹介(民生)

USB Power Delivery給電機器のノイズ対策-1

1. USB Power Deliveryの普及

USB Power Deliveryとは、USB経由で最大100Wという従来に比べて大きな給電を行うことができる給電規格です。
USB Power Deliveryは従来対応することができなかったPCやディスプレイ等の機器にUSB接続で電源を供給することができます。
その他の特徴として、給電側と充電側を瞬時に切り替えることができ、無駄な発熱がなく充電を可能とすることが挙げられます。
USB Power Deliveryの普及に伴い、大出力のUSBチャージャーが多く登場しています。
PCやディスプレイ以外にもUSB Power Delivery給電によって電源供給を受ける機器が増加しており、今後さらなる広がりが予想されます。

2. USB Power Delivery給電機器から発生するノイズ

USBチャージャーには、給電対象機器に応じて電圧を変えられるようDC-DCコンバータが内蔵されています。
USB Power Delivery対応の大出力チャージャーは供給電流値が大きいため、従来のUSBチャージャーよりもDC-DCコンバータのスイッチングノイズが大きくなる傾向にあります。
このノイズはチャージャーと給電対象機器をつなぐケーブルから放射され、機器の動作や通信を妨害する恐れがあります。

USB Power Delivery給電機器から発生するノイズの図

3. USB Power Delivery給電機器のノイズ問題

USB Power Deliveryの評価基板を用いて、給電時の放射ノイズを調査しました。
評価基板をシールドし、ケーブルからの放射ノイズを測定したところ、以下の図のように500MHz以下で広帯域のノイズが発生していることが分かりました。
100~300MHzで特に強い放射ノイズが確認され、この領域では不要輻射の規格値に対するマージンも小さくなっています。

USB Power Deliveryからの放射ノイズの測定

4. ノイズの発生源と経路

・ノイズの発生源

ケーブルから放射したノイズの発生源を調査するために、ノイズ可視化ツールを利用しました。
給電側の電源ライン(DC-DCコンバータおよびパワーインダクタ)周辺で高いノイズレベルが確認されています。

非給電時、給電時のイメージ画像
USB Power Delivery評価ボード(給電側)のノイズ分布の確認

評価基板のUSB Type-Cコネクタピンに伝導するノイズを測定した結果からは、100~300MHzの領域で電源ラインとGNDラインのノイズレベルが高いことが確認できます。

USB Type-Cコネクタピンに伝導するノイズの測定の図
USB Type-Cコネクタピンに伝導するノイズの測定

・ノイズの経路

DC-DCコンバータで発生したノイズは以下の図のようにケーブルに伝導し、放射されます。

ノイズの経路の図
  • 給電側DC-DCコンバータでスイッチングノイズが発生
  • ノイズが電源ライン、GNDラインを通って、USBコネクタからケーブルへ漏洩
  • ケーブルの電源ラインから放射

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