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DX×Murata:DXによって進化する製造業の未来

ビジネスモデル変革への挑戦から見るDX

ムラタは新たなビジネスモデルの創出を中期方針に掲げ、ソフトウェアやサービスを含む多種多様なソリューションを提供する新領域の開拓に挑んでいます。今回は、ソリューション開発などに携わる堀邉と、データサイエンスの観点から課題解決を支援する樋口が、ワイヤレスセンサネットワーク(WSN)を使った無線センシングソリューションにおける協業事例を軸に、DXを通じたビジネスモデル変革を紹介します。

新たなビジネスモデルを創出し、ビジネス基盤を強化する

――まずは、ムラタが取り組む新たなビジネスモデルの説明をお願いします。

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堀邉「ムラタでは、コンデンサ・インダクタなどのコンポーネントビジネスを1層目、モジュールやセンサなどの用途特化型ビジネスを2層目として位置づけています。そして、新たなビジネスモデルとして、ソフトウェアやサービスを含むソリューションビジネスを3層目と定義しています。
従来の1層目・2層目の市場競争や技術向上が加速する中で、将来を見据えて新たなビジネスモデルを創出し、ビジネス基盤を強化するのが3層目の狙いです。具体的には、2030年までに1,000億円程度の事業規模を目指しています」

IoT事業推進部 堀邉の写真
IoT事業推進部 堀邉

――具体的には、どのようなソリューションを提供していますか?

堀邉「製造業における生産性向上や業務効率化などを実現するソリューションをはじめ、ヘルメット装着型のセンサデバイスで安全を見える化する作業者安全モニタリングシステムや、電気エネルギーで抗菌効果を生み出すマスクなど、ジャンルは多種多様で、従来のB to BからB to C領域にも踏み込んでいます。
3層目ビジネスに共通しているのは、よりエンドユーザーに近いポジションでビジネスを展開し、ニーズの変化をいち早く察知できるという点です。ニーズの変化を1層目・2層目にもフィードバックし、各層の持続的成長につなげる。これは3層目を事業展開していくにあたって非常に重要なポイントだと考えています」

――今後、注力していくジャンルはありますか?

堀邉「現在は無線センシングソリューション(WSN)が好調ですが、ジャンルにとらわれない自由度の高さも3層目の特徴だと思います。ジャンルの共通キーワードを挙げるとしたら、社会課題解決でしょうか。作業者の安全はもちろん、子どもの安全を見守る、高齢化社会に応じて高齢者を支える、あるいはSDGsの観点からCO2削減やフードロス削減に寄与する。こうした社会課題解決に貢献することは3層目のベースになっています」

データサイエンスを活かした課題解決を支援

――3層目のビジネスが推進される中で、情報システム統括部ではどのような取り組みを行っていますか?

樋口「私が所属する情報システム統括部 デジタル推進部では、データ分析の専門部隊として、社内のさまざまな業務部門に対して、データサイエンスを活用したビジネス課題解決を支援しています。具体的には、データ分析に関わるテーマの創発や高度分析の技術支援、データサイエンスの人材育成/啓蒙を行い、全社的なデータサイエンスの活動を推進しています。また、データ分析を行うためのデータ活用基盤の構築・整備を支援しながら、データの品質を担保するデータマネジメントの導入サポートも行っています」

情報システム統括部 デジタル推進部 樋口の写真
情報システム統括部 デジタル推進部 樋口

――社内向けのデータ分析支援と、社外向けのソリューション開発の両軸ということですね。

樋口「そのとおりです。割合で言うと、不良率の改善や品質向上などを目的とした社内向けのデータ分析支援が約8割を占めますが、3層目のような新規事業にも携わっています。新たなビジネスモデルの創出はムラタの長期構想に掲げており、社会課題解決への貢献はムラタのマテリアリティとして設定されているので、3層目への関与をどんどん増やしていきたいと考えています。WSNは堀邉の部署と初めて協業した事例ですが、今後はこうした個々の案件での支援に加え、部門間や社外との共創によって新たな価値を創造する形も追及していきたいと思います」

拡販フェーズにあるWSNで生じた課題が契機に

――WSNにおける協業がスタートした経緯を教えてください。

堀邉「WSNはお客様への導入が順調に進み、予知保全のための振動センサや省エネにつなげる電流センサなどの目的別にラインアップを拡充し、拡販フェーズに入っているソリューションです。そうした中で、データの見える化は実現したものの、異常値をどこに設定すべきかの課題や、正常を異常と誤判定してしまうケースなど、新たな課題が生じました。自分たちで機械学習について勉強したものの、スキルやリソースに限界を感じ、情報システム統括部 デジタル推進部にサポートを依頼しました」

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樋口「依頼を受けた時点での困りごとは、振動データでは異常診断の経験はあったが、電流データでそもそも異常診断ができるのかが分からない、事前に異常データを集めることができないため、適切なアルゴリズムを設計できないといったものでした。そこで、堀邉の部署の方々と打ち合わせを重ねながら、3つのステップで進めることにしました」

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――具体的なステップをポイントとともに教えてください。

樋口「まず、電流データから多くの特徴量を作成し、本当に異常診断できるのかを確認し、正常と異常の両方があるオープンデータを使うことで、クイックに技術的な目途付けを行いました。次に、異常を診断するアルゴリズムを構築しました。異常データを事前に得ることができないという難しさがあったため、正常データのみを学習した診断モデルで運用開始し、その後も逐次的に学習することによって徐々に正確性を高めるというアプローチをとりました。技術のみで解決できなくても、運用手順まで踏み込んで議論することで有効な解決策を導き出せた例かと思います。最後のステップは実データを使ったアルゴリズムの検証ですが、まさに今、実設備を使って実証実験を行っています」

データ分析から実証実験までを一気通貫で実現できる強み

――協業を通じて、ムラタならではの強みが活かされた部分はありますか?

樋口「ソフトとハードの協調設計と言うと言い過ぎかもしれませんが、運用まで含めてシステムとしての完成度を高め、お客様に提案できる点はムラタならではの強みだと思います。また、自社工場で実証実験を行い、データを取得できるため、アルゴリズムの精度を高めることができます。データ分析から実証実験までを一気通貫で行い、ナレッジやノウハウを蓄積できることは持続的な競争力の向上につながると考えています」

堀邉「社外に頼んだ場合と比較すると、コミュニケーションがスムーズに取れたため、開発スピードが早く、開発コストも抑えることができたと思います」

樋口「IoT事業推進部のスタッフが主体性を持って課題解決に取り組み、自分たちで理解しよう、やってみようという意志を持っていたことがスムーズだった要因だと思います。DXを推進するにあたって、主体性は重要なポイントです。私たちは社内外問わず多くのデータ分析の案件に関わっていますが、強い想いを持ってDXに取り組んでいる人がいて、その熱意が周囲に伝播することでプロジェクトが加速していく傾向があると思います」

スモールスタートでの成功が周囲を巻き込むきっかけを生む

――DXのポイントをどのように考えていますか?

堀邉「目的、手段、心理状態。この3つのどれかひとつでも欠けているとDXは前進しないと考えています。樋口が言った強い想いや熱意は、当事者意識やチャレンジ精神といった心理状態につながります。そして、世の中のさまざまなソリューションやツールの存在を知ることや、目的を明確にしてからスタートすること、途中で手段が目的化していないかを確認することもポイントです。これら3つを俯瞰的に見る視点が重要だと思います」

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樋口「主体性に加えて、スモールスタートとスモールサクセスも重要なポイントです。いきなり大きな目標を掲げると達成に時間がかかり、疲弊してしまうケースがあります。スモールスタートで小さな成功体験を積み重ねることで自信が生まれ、周囲を巻き込むきっかけにもなりますし、万が一うまくいかなくてもかける時間やコストを最小限に抑えつつ、軌道修正することができます。
また、デジタル領域とはいえ、実行するのは人。人がどう変わっていくか、人をどう育成していくかという視点を大事にしたいですね。そして、自分でやってみよう、変えてみようと、強い想いを持った人が増えるといいなと思っています」

集合写真
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ムラタでは一緒にDXを推進するメンバーを募集しています。

無線センシングソリューションは、無線センサにより工場設備等の状態を収集・可視化することで、「生産性向上」や「業務効率化」などを実現するソリューションです。無線センシングソリューションサイトでは現場改善のヒントや導入事例を掲載しています。製造業DX推進にお悩みの方は是非ご覧ください。

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