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リチウムイオン電池(LiB)のリユース・リパーパス・リサイクルと電池特性解析・劣化診断の必要性

2015年頃から急増し始めたEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)に搭載されているリチウムイオン電池(LiB)が、今後段階的に寿命を迎えます。これに対し、使用済みとなったリチウムイオン電池は適切に廃棄しないと大きな環境問題になります。また、持続可能な社会の実現に向けたリチウムイオン電池に使用されているリチウムやコバルト、ニッケルなどの希少金属の再利用も進めなければなりません。
この問題に対し、リチウムイオン電池のリユースとリパーパス、リサイクルという取り組みが注目されています。ここではこれらの取り組みに欠かせないリチウムイオン電池の特性解析および劣化診断を紹介します。

1. リチウムイオン電池の特性・劣化診断とは

リチウムイオン電池の特性・劣化診断とは、リチウムイオン電池の電池容量や内部抵抗値、自己放電量などを測定し、電池の劣化状態を診断する検査です。
リチウムイオン電池の寿命はスマートフォンなどのモバイル機器用は2-3年、電気自動車(EV)や蓄電池などでは8-10年以上といわれています。しかし保管状態や充放電回数、使用温度などにより寿命は変化します。さらに複数のセルで構成されているリチウムイオン電池では、各セルの劣化状態が一様でないケースも見られます。
これら劣化の状態を充電や放電など日常的な使用時の感覚だけで判断することは困難です。このような場合でも、リチウムイオン電池の特性・劣化診断を行うことで電池の状態を科学的に解析し、劣化の状態を表やグラフといった見える形で把握することができます。特に電池のリユース・リパーパスやリサイクルを行う際には重要な検査であるとされています。

リチウムイオン電池の寿命を見える化するのイメージ画像
リチウムイオン電池の寿命を見える化する

2. リチウムイオン電池のリユース・リパーパス・リサイクル

長期間の保管または使用により使用済みとなったリチウムイオン電池の再利用には、リユースとリパーパス、リサイクルという三つの方法があります。どれも環境保全やサステナビリティにおいて有効な手段ですが、再利用の方法が異なります。ここではこれらの方法の違いについて説明します。

リチウムイオン電池のリユース

リユースとは、新たに物を製造することなく、使用済みの部品や製品をそのまま再利用する方法です。リパーパスが車載用から蓄電池への転用といった使用目的を変えて使い続ける再生法であるのに対し、リユースでは同じ目的で使い続けます。リチウムイオン電池での具体的な例としては、劣化したセルを特定して新しいセルに交換したり、バッテリバランスを補正したりということによりセルやモジュールを長期間にわたって使用することを可能にします。

リユースの例の図
リユースの例

リチウムイオン電池のリパーパス

リパーパスとは、一度製品で使い終えた電池を、目的を変えて別の製品に組み込んで再利用することです。リサイクルが不要となったリチウムイオン電池から原料だけを取り出す再生法であるのに対し、リパーパスでは既存の電池をそのまま可能な限り長く使うことで、エネルギー消費や廃棄物の量を減らすことが可能です。
具体的な例としては、一定の期間を使用し劣化した電気自動車などの車載用高性能電池を残存寿命に応じて工場やデータセンタ向けの定置型蓄電池や家庭用蓄電池など他の目的の電池として利用します。

リパーパスの例の図
リパーパスの例

リチウムイオン電池のリサイクル

リサイクルとは、廃棄物や不用品から再利用できる部分を取り出して、原料やエネルギーとして再利用する方法です。リチウムイオン電池ではセルを分解し真空加熱炉による焼却処理を経て、酸浸出、溶媒抽出、電解という工程を通じ、ニッケルやコバルトなど希少金属などの化学成分を回収します。
リチウムイオン電池は廃棄の際に適切に処理しないと、有害物質による土壌汚染や水質汚染の原因になります。また、ニッケルやコバルトなどの希少金属は入手が困難であるばかりではなく、採掘は環境に大きな負荷を与えます。リチウムイオン電池のリサイクルは、これら環境に与える影響を低減する資源の再利用方法として注目されています。

リサイクルの例の図
リサイクルの例

リユース・リパーパス・リサイクルにおける劣化診断の必要性

リチウムイオン電池をリパーパス・リユースする場合は電池の機能と安全性の保証を、リサイクルする場合は、その電池がもう使えないということを確認しなければなりません。
これらを保証し、確認するためのサービスがリチウムイオン電池の特性および劣化診断です。リチウムイオン電池の特性および劣化診断では経年や充電サイクル、さらに使用温度や保管温度による電池特性の変化や劣化の状態を見える化することができ、電池寿命の判断に役立つデータの取得を可能とします。

リチウムイオン二次電池の特性解析・劣化診断のイメージ画像
リチウムイオン二次電池の特性解析・劣化診断

3. リチウムイオン電池の寿命―劣化とは

リチウムイオン電池の最大の特徴は「高いエネルギー密度」と「繰り返し充電が可能である」ということです。しかし、リチウムイオン電池は充電と放電を繰り返すうち徐々に性能が低下し満充電できない、または消耗が早いといった劣化症状が発生し、やがて寿命を迎えます。このとき、リチウムイオン電池の内部ではどのようなことが起こっているのでしょうか。ここではリチウムイオン電池の構造的特徴と劣化という現象、さらにその原因について説明します。

リチウムイオン電池の充放電原理

リチウムイオン電池は、あらかじめリチウムイオンを含ませた金属化合物を正極に、そのリチウムイオンを貯めておく負極に炭素材料やチタン酸リチウムなどを使用し、正極と負極の間にセパレータを配置して電解液に浸した構造となっています。セパレータはリチウムイオンを透過し、かつ正極と負極との接触を防ぐことができる多孔質構造になっています。この構造により、従来の電池のように電極を電解質で溶かすことなく発電することができます。また他の電池と比べて、大きな電気を蓄えられるようになっています。リチウムイオンは、充電時には正極から負極に移動し、放電時には負極から正極に移動します。このため放電してしまっても、充電することで繰り返して使用することができます。

リチウムイオン電池の充放電原理の図
リチウムイオン電池の充放電原理

リチウムイオン電池の劣化とは

充放電により繰り返して使えるというメリットを持つリチウムイオン電池ですが、使っているうちに「満充電できない」「消耗が速い」といった現象が発生し、定格通りの性能を発揮することができなくなります。また、リチウムイオン電池が膨張する場合もあります。これらの現象を「劣化」といい、最悪の場合は発火や爆発の可能性もあります。このように劣化したリチウムイオン電池は使用に支障をおよぼすばかりではなく、危険でもあります。したがってリチウムイオン電池のメリットを活かし、危険を回避して使い続けるためには、劣化の状態を把握することが大変重要となります。

ガスの発生により膨張したリチウムイオン電池のイメージ画像
ガスの発生により膨張したリチウムイオン電池

4. リチウムイオン電池の劣化の原因

一般的に電池は使用により劣化します。そして劣化現象としては大きく「容量の低下」と「抵抗の上昇」に分けることができます。ここではこれら、リチウムイオン電池の劣化のメカニズム(原理)について解説します。

使用による劣化

使用による劣化には、サイクル劣化、フロート劣化、放置劣化などがあります。

  • サイクル劣化:
    充放電を繰り返すことで発生する劣化。急速での充電や低温下での充電では、劣化が加速する傾向にあります。
  • フロート劣化:
    長期間、充電ケーブルを接続した状態で一定の電圧を印加し続けることによる劣化。
  • 放置劣化:
    長期間、放置状態したことによる劣化。特に高温下での保管は劣化が加速します。また、高電圧の印加や極端な過放電状態で放置すると劣化が進行しやすいです。

容量の低下

充放電時、リチウムイオンは正極と負極の間を移動します。電池の容量とは、この移動するリチウムイオンの量に相当します。そして、移動するリチウムイオンの量(活性リチウム)が減少すると電池容量が低下します。
容量の低下はSoH(State of Health)という電池の容量劣化状態をパーセンテージで表します。新品の状態を100%として劣化後(現在)の容量の比の割合を表します。
容量低下時、電池内部では以下のような現象が起こっています。

  • 正極材料劣化:正極結晶構造の崩壊など
  • 負極材料劣化:活物質の割れ・剥離、導電ネットワークの劣化など
  • 副反応劣化:Li析出、電解液の分解、SEI(Solid Electrolyte Interphase:固体電解質界面膜)の形成などでLiが消費されガスが発生。

電池の設計や使われ方によって、どのような劣化現象が発生するかが変わります。また、電池の安全性が低下するような現象が生じている場合もあり、注意が必要です。
たとえば、副反応によってバッテリの素子が膨張し内部構造に歪みが発生しているような場合は、内部でショートなども発生している可能性が考えられます。

抵抗の上昇

電池には内部抵抗というものがあり、内部抵抗とは電流の流れを妨げる電池内部の抵抗のことです。リチウムイオン電池に電流が流れると、内部抵抗によって熱が発生し電圧降下が生じます。この熱発生と電圧降下がリチウムイオン電池の効率と性能に大きな影響を与えます。
リチウムイオン電池の内部抵抗には電極や電解質など電池の導電性材料に起因するオーム抵抗と、充放電サイクル中の電気化学反応に起因する電荷移動抵抗、電解液中をイオンの泳動による分極抵抗があります。

たとえば充放電の際には負極の表面にSEI被膜が生成され、電解液の反応や分解を抑制します。SEI被膜はまた最適な化学構造と厚みであることが理想とされますが、使用によりSEI被膜の化学構造が破壊されたり過剰に厚くなりすぎたりすると、抵抗が上昇する原因となります。

内部抵抗が高いと、必要な電力を供給するために電池内部で必要以上にリチウムイオンを移動させなければなりません。この余分な移動が、効率の低下とパフォーマンスの低下につながります。また内部抵抗が高いと電圧降下により負荷にかかる電圧が低下し、機器の動作に悪影響を与えます。

SEI被膜生成の例の図
SEI被膜生成の例

5. リチウムイオン電池の劣化診断―寿命の確認

リチウムイオン電池の劣化状態を診断する方法は多種多様ですが、ここでは「履歴推定法(データ駆動型SoH推定)」「抵抗推定法」「充放電法」「充放電曲線解析法」の四つの手法について説明します。

履歴推定法(データ駆動型SoH推定)

リチウムイオン電池の使用履歴のデータをリアルタイムで取得して、容量低下の状態(SoH)を推定する方法です。大量の運用データやラボでの実験データから、機械学習を用いて劣化パターンを学習するデータ駆動によってSoHを推定します。即時に電池の状態を把握できるというメリットがある一方で、バッテリの劣化と強く相関する特徴を特定するには大規模な前処理が必要であり、使用するデータにより推定の精度が大きく上下するといったデメリットがあります。また、学習データがある電池機種にしか適応できないといった課題もあります。

抵抗推定法

リチウムイオン電池の内部抵抗を測定し、劣化状態を推定する方法です。内部抵抗の値は電池の特性を表す指標として広く利用されており、内部抵抗は小さい方が特性の良い電池であるといえます。抵抗推定法における内部抵抗の測定方法には交流法と直流法があります。

交流法(インピーダンス推定法)

電池に交流信号を印加し、電池の抵抗成分の応答速度の違いを分析します。応答速度の違いにより電子的な抵抗に由来する反応成分なのか、電池の酸化還元反応に由来する成分なのかを切り分けることができます。またデータ駆動型とも組み合わせて、交流応答と容量の劣化のしかたの相関から、抵抗の分析だけでなく電池容量の低下度合いを推測するといった方法も試みられています。短時間で詳細な解析が可能な方法ですが、温度や充電残量によって異なる応答を示すことや周波数特性分析器(FRA)が高額であるなどデメリットもあります。

直流法

電池を一定の電流で放電し、放電電流の値と特定のタイミングでの電圧降下から内部抵抗を算出します。交流法に対し安価な装置で解析することができます。電流を流した状態を解析する方法や電圧印加を停止した後の過電圧緩和を解析する方法などがあり、詳細に解析をすることも可能です。

充放電法

一定の方法で充放電をしてSoHなどを評価する試験です。リチウムイオン電池が長期間使用できるか、またその性能がどのように変化するかを把握することができます。
一般的に充電は初めに定電流で充放電を行い、電池電圧が規定の値(カットオフ電圧)に到達したら定電圧で充放電を行う「CC-CV(Constant Current-Constant Voltage)充電」で行います。充電後は一定電流(Constant Current)で既定の電圧まで放電を行います。

充放電曲線解析法

充放電中の電圧の変化を解析することで、電池容量や内部抵抗などリチウムイオン電池の状態を推定する手法です。充放電中の電圧の変化は「充放電曲線」で表すことができます。充放電曲線からは電池容量や内部抵抗などの電気特性だけでなく、電池内部のリチウムイオンなど活物質の情報を得ることができ、劣化を推定することもできます。たとえば電池容量の減少が同じでも、正極容量や負極容量が減少していたり、正極と負極の充電バランスがずれていたりといったことがあります。さらに抵抗値の上昇などにより電池容量の減少の度合いが異なります。充放電曲線にはこれら電池の内部状態を示す情報が含まれており、これを解析することで電池の状態を正しく把握することができます。

6. リチウムイオン電池の劣化診断がもたらすもの―希少資源の有効活用

現在、リチウムイオン電池に代わる電池技術や、コバルト、ニッケルといった希少金属を使わない電池の開発が進みつつあります。しかしリチウムイオン電池は、今後も長期間にわたり使用され続けられることが予想されます。
一方で希少金属の採取には大きなコストや高い技術が必要であり、リチウムイオン電池の需要に対し供給面における不安材料となっています。また使用済みとなった大量のリチウムイオン電池の廃棄は、その処理を巡って環境問題となりつつあります。リユースやリパーパスそしてリサイクルは、これらの課題を解決するための有効なアプローチとして注目されている技術です。
村田製作所では従来の劣化解析手法の技術面やコスト面の課題を解決するリチウムイオン電池の電池特性・劣化診断技術を開発しており、リユースやリパーパス、リサイクルを行う方々にとって、電池の状態がより使いやすくわかりやすくなるサービスを展開しています。

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