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HACCP(ハサップ)が変える食品の流通とIoTの活用

HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化

食品衛生法の改正に基づき、日本では2021年6月から「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理の制度化がスタートしました。HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Point(危害要因分析にもとづく重要管理点)の頭文字を取った造語。食品等事業者自らが、食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至るすべての工程において、これらの危害要因を除去、低減させるために工程を管理する手法を指します。

管理手法は国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (コーデックス)委員会から発表され、各国にその採用を推奨しています。これにより、すべての食品等事業者は、運搬も含めた全工程での衛生管理体制を整備することが義務付けられました。

義務化の背景には、2003年の食品衛生法の改正から15年以上が経過し、食品の安全を取り巻く環境が大きく変化していることがあります。また、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)によって食品流通のグローバル化が進み、食中毒が多く発生していること、東京2020オリンピック・パラリンピック開催などを踏まえ、日本の食品衛生管理の水準を国内外に示す意向も挙げられます。

従来、食品等事業者の衛生管理基準は都道府県条例に沿って管理されてきました。2021年6月からは、全国一律となり、運搬も含めた全工程での衛生管理が必要となりました。

また、医薬品業界でもGDP(Good Distribution Practices =医薬品の適正流通)ガイドラインが公布されるなど、食品業界以外でも衛生管理の重要性が高まっています。

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近距離無線通信などを用いて、食品配送時の状態を管理するIoTの普及が進む

センサとIoTを組み合わせ、食品の状態をデータ管理

HACCPに基づく管理には、衛生管理計画の策定と記録保存が義務付けられています。衛生管理のための手順書を作成し、衛生管理状況の記録・保管、計画の見直しを行うなどの工程の最適化、温湿度の記録・保管などの工程の見える化がポイントです。特に、運搬向けでは冷蔵庫・冷凍庫の温度チェック、配送車の庫内温度記録、荷主から預かったときの状態を示すものなどの記録に加え、倉庫から配送車への積み込み途中の状態、倉庫内の移動時の状態、配送後の状態など、より細かなデータを管理することが必要になってきます。

現場での温度記録は手作業がメインであることから、繁忙期などには正確な記録が取れなくなる恐れがあります。現場の作業負担を減らし、データの精度を高めるためにも、温度、湿度などの記録の自動化が必須となってきており、IoT技術の活用が進んでいます。

食料品の配送車の車両庫内に温度や湿度などのセンサを設置し、データを自動で計測。データは近距離無線通信のNFCやBluetooth、特定小電力無線経由でセンサの親機やスマートフォン、タブレットなどに送信されます。無線通信を行うことで車体への穴あけや配線などの加工が不要になり、手軽に導入することが可能です。また、車外に出て庫内を確認する手間も省け、仕事の効率化、扉の開閉による温度の上昇も防ぐことができます。

HACCPにおいては食品の管理はもちろん、食品を運搬する作業員の健康管理・衛生管理も重要です。そのため、作業員が台車などで食品を運搬する際、作業員と食品の双方にID情報を記録したRFIDを装着し、誰が、どこに、何を移動したかの履歴を保存する技術が進んでいます。また、作業着に個別にRFIDを装着し、クリーニングから一定期間が経過した場合に通知する技術もあり、これまでホテルや病院の制服・シーツなどで使われていた技術が応用されています。

庫内の温度や湿度の変化、作業員や食品の追跡情報などのデータは、クラウドシステムと連携することで総合的な管理もできます。これによって、食品がいつ、どこで、どのような原因で異常を発生したかを究明し、改善策を講じることができます。

生産者から市場へ、加工工場へ、飲食店や小売店へ、そして消費者へ。私たちの想像以上に多くの移動を伴う食品の安全を総合的に管理するには、もはやIoT技術が不可欠だと言えるでしょう。

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